映画と働く 第8回 [バックナンバー]
照明技師:平山達弥「いい表情の役者に、いい光を当てた達成感」
「新聞記者」「ヤクザと家族 The Family」──芝居の深みはライティングで増していく
2021年2月17日 19:30 6
「ヤクザと家族 The Family」が今のベスト
──独立してから数々の作品に参加されますが、中でも印象的な作品は?
「
──主演の綾野さんも本作が「今現在の自分の集大成」だとおっしゃっていました。平山さんはどのあたりに手応えを感じていますか?
作品が3章に分かれているので、カメラマンの
──照明について役者から褒められたり、何か感想をもらうことはあるんですか?
そんなにないんですけど、「ヤクザと家族」の現場では綾野さんが毎回モニタで映像を観て感想を言ってくださいました。自分の芝居だけじゃなくて各部署のことも常に見ていて、そういう部分もリスペクトできる人でした。一度、僕と今村さん、録音部の根本飛鳥さんの3人を焼肉に連れて行ってくださったことがあって。綾野さんがひたすら肉を焼いてくださいました。
藤井道人や今村圭佑との出会い
──「ヤクザと家族」からご自身のフィルモグラフィーを振り返り、照明技師としての歩みの中でターニングポイントだったと思う出来事を挙げるとしたら?
今村さんとの出会いはそう言えるかもしれません。僕が助手をしていた頃から、今村さんも助手として現場に来ていたので、お互いのことは知っていて。同い歳ということもあって現場で話したりもしていました。それから僕が独り立ちして初めて参加した「
──今村さんも平山さんも「
藤井さんと今村さんは学生時代から一緒にやっているので、映像面に関しては藤井さんが圧倒的に今村さんを信頼しているんです。僕は今村さんから声を掛けてもらって参加させてもらっています。照明に関しても藤井さんから直接何か言われるというよりは、基本的に今村さんが色やトーンの方向性を決めるので、それに沿って考えていきます。
──照明部と撮影部の連携が映像のイメージを左右するのですね。平山さんのお話を聞いていると、今村さんへの圧倒的な信頼がうかがえます。
そうですね。やっぱり映像と言うとカメラマンと話し合うことが多いので。今村さんは作品への集中力がとてつもなくて。特に今村さんが長編初監督をした「
──平山さんもそんな藤井組の一員として毎回参加されているわけですが。何か共鳴するものがあって毎回組まれるのでしょうか?
「俺たちが!」とかそんな熱い感じではなくて。でも藤井組だからこその雰囲気はあって、そこは居心地がいいなと感じます。歳が近い分、距離感も近くて、言いたいことを言い合えたりもするので。
ライティング次第で芝居の深みも変わる
──照明技師として「楽しい」と感じるのはどんな瞬間ですか?
台本を読んで、どんな照明にしようかと考えているときが一番楽しいです。もちろん実際にライトを当てた様子をモニタで観るときも充実感がありますけど、その前の仕込み図を書いたりしている段階がわくわくします。体力的にキツい部分も多々ありますけど。最初に現場入りして仕込みを始めて、撮影後は撤収して最後に帰るので。
──なかなかハードな仕事でもありますね。これから映像関係の照明をやってみたいと考えている人たちに、平山さんからアドバイスをいただけますか?
専門学校時代から振り返ってみると、理想の高い人は辞めてしまった人が多い気がします。僕も映画がめちゃくちゃ好きでこの業界に入ったわけではないんですけど、考えすぎないで始めてみるほうがいいのかな。心のゆとりがあったほうが、イレギュラーに強くなるのかもしれません。厳しいことがたくさんある世界なので。仕事が楽しいと思えるように、柔軟な気持ちを持ち続けるのが大切だと思います。
──映像に関わるようになって気付いた、映像の照明ならではの楽しさはどんなところですか?
芝居に合わせたライティングが楽しいと感じるようになりました。ライティング次第で芝居の深みも変わってくると自負しているので、いい表情をしている役者さんには、いい光を当てた達成感があります。
──履歴書の「照明とは?」という質問には「生活の一部」とお答えいただきましたね。
照明がないと生きていけないとか、そんなたいそうなものではなく。暮らしの中の一部になっていて、意識することもなく自然と存在しているものだと思いました。照明技師だからと言って、部屋の照明にこだわったりとかも特にないです。ただ子供の写真を撮るときは、無意識に太陽の位置を計算しながら撮影していることがあります(笑)。
平山達弥(ヒラヤマタツヤ)
1988年4月7日生まれ、長崎県出身。2009年に東放学園の照明クリエイティブ科を卒業後、CRANK(現・照明機材会社ライトワーク)に入社する。2010年から太田康裕に師事し、
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