小池健が監督を務める「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」が本日6月27日に公開された。同作は2014年に「次元大介の墓標」から始まった「LUPIN THE IIIRD」シリーズの新作で、「ルパン三世」としては約30年ぶりとなる劇場版2Dアニメーション。劇中でルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部は、世界地図に載っていない謎の島で“不死身”の強敵ムオムと死闘を繰り広げる。
“小池ルパン”サーガの完結編でもある本作について、映画ナタリーではルパン三世役の栗田貫一、次元大介役の大塚明夫にインタビューを実施。作品の見どころはもちろん、50年以上にわたって愛され続けるルパンワールドの魅力の秘密を大いに語ってもらった。
ナタリーでは映画「不死身の血族」と配信作「LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン」を中心に、「ルパン三世」の情報を届ける特設サイト「ルパンナタリー」を展開中。「ルパン三世」の最新ニュースや、キャスト・著名人へのインタビュー、作品をより楽しめるコラムを掲載しているので、あわせて楽しんでほしい。
取材・文 / 内田正樹撮影 / ヨシダヤスシ
「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」あらすじ
ルパン三世たちは世界地図に存在しない“謎の島”を目指し、バミューダ海域へ向かう。その目的は、これまで刺客を送り続けてきた黒幕の正体、そして隠された莫大な財宝のありかを暴くこと。しかし乗っていた飛行機を狙撃され、一行は島に不時着する。彼らを待っていたのは兵器として使われ今は捨て置かれた“ゴミ人間”、そして島中に充満した“24時間以内に死をもたらす毒”。不老不死を掲げる島の支配者・ムオムと出会ったルパンは知略をめぐらせ、“死なない敵”に挑む。
大塚明夫も次元になっちゃったんだな、すっげえカッケエなあ(栗田)
──若きルパン三世たち1人ひとりに焦点を当ててきた「LUPIN THE IIIRD」シリーズもいよいよこの劇場版「LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族」で堂々完結です。
栗田貫一 「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標」の頃、小池(健)監督に、「いずれルパンの家(作品)も建つんですか?」と聞いたら「いつか作りたい」と答えていた。それから12年。次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部の家を建てた小池監督が、最後に建ててくれたルパンの家がこの映画だった。僕自身、とても楽しみにしていました。台本を読むと、「いったいこいつはどんな敵なのか?」がわからないまま相対していくし、次元も五ェ門も不二子もルパンのそばにはいなくて、むしろ銭形と一緒に行動したりする。一緒に力を合わせて戦っているわけでもないんだけど、どういうわけかどこかで5人がつながっている感じがする。見どころも満載だし、なんとも不思議で、素敵な作品だなあと感じましたね。
大塚明夫 このシリーズ中に初代次元役の小林清志さん(※2022年没)がお亡くなりになられたことで、初代メンバーは全員いなくなってしまいました。僕が入ったことで、全員、跡を継いだメンバーになって。
──大塚さんは2021年のテレビシリーズ「ルパン三世 PART6」から次元としてメンバー入り。この「LUPIN THE IIIRD」シリーズには、映画の前日譚にあたる配信作「LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン」から参加されました。
大塚 よく栗田さんがインタビューの場で、最初にルパンの世界に入った頃を思い出して「とにかく先代の大人の皆さんに、一生懸命くっ付いていこうとしていた」というお話をされるんですが、僕自身、この映画でようやく“くっ付いていく”“引っ張ってもらう”ではなく“力を合わせる”ことを初めて体験できたような気がした。そんな、ある種の“目には見えない力”のようなものも帯びている作品ではないかと感じています。
栗田 その通りだね。まさに新メンバー全員で演じ上げた映画です。僕は「次元大介の墓標」のとき、あの清志さんの素晴らしい次元と一緒に芝居をして、ようやく初めて清志さんとしっかりとお芝居ができたような気がしたの。もちろん、それまで何年も次元としゃべってきたのに、次元ではなく、「小林清志さんとお芝居ができた」という感覚だった……幸せでしたね……その感覚と同じように、栗田ルパンと大塚次元で、初めてがっつりとした二人芝居を演じられたような手応えを感じたのが、「銭形と2人のルパン」だった。走っている列車の上で銭形とやり合う、あの決死のシーンでね(笑)。なんと言うか、「ずっと昔からルパンと次元だったような芝居ができたな」って感じたんですよ。
大塚 栗田さんにそう感じてもらえるような次元になれたのなら、よかった。
栗田 うん。「ああ、大塚明夫も次元になっちゃったんだな。すっげえカッケエなあ」って思ったもん。誰が聞いても清志さんの次元に寄せてくれていて、それでいて、明夫さんだからこその巧さとかっこよさがある。「ああ、この人と一緒に演じられて、幸せだなあ」って。おまけに明夫さんはとにかくいつもかっこいい。スタジオでもいつも黒い服でキメてるし、今日(※取材時の服装)も、ほとんどリアル次元じゃん?
大塚 いや、今日は用意してもらった衣装ですよ?(笑)
栗田 背だって高いしさ。何cmだっけ?
大塚 182cmだけど、最近はどうかな? もう前期高齢者ですからね(笑)。
栗田 山ちゃん(銭形役の山寺宏一)もそろそろだっけ?
大塚 来年かな?(笑)
古風なようで、実はかなり現代的な説得力がある(大塚)
──シリーズ中、物語の冒頭からルパン一味が全員そろっていたのは今作が初めてでしたね。
栗田 そこが小池監督の洒落っ気だよね。「銭形と2人のルパン」も、「あれ? 五ェ門、出てこないの?」と思っていると、物語の最後でひょっこり出てくるし(笑)。そういうところがいちいち洒落ている。しかも、時にはその洒落っ気で、このシリーズと過去のルパン作品をつなげていたりもするし。
──お二人それぞれが感じていらっしゃる本作の見どころとは?
栗田 見どころ満載すぎて、とても話しきれないよ(笑)。
大塚 まずは飛行機での空中戦をはじめ、アクションがすごい。舞台の島ではマグマがブワッとあふれたりと、スケール感も壮大で。
栗田 しかも、さっきも話したけど、今回は見えない敵と戦っているような感じ。(島の支配者である)ムオムは何をやっても死なないし、あんなやつ、むちゃくちゃだよね(苦笑)。
大塚 普段は国家や組織と戦って、なんだかんだあっても最後には「ざまあみろ!」という感じになるのがルパンの定石ですが、今回の敵は、国家すら超越している得体の知れない化け物。これまでの物語で宿敵だったキャラクターたちも出てくるし、特に次元にとっては「次元大介の墓標」で因縁を持ったヤエル奥崎との対決が……。観に来てくれたお客さんを裏切らないと思います。
栗田 「糠に釘」という言葉があるけれど、ムオムには何をやっても効き目がない。「これ、どうすりゃいいの?」という不死身の敵。そんなムオムを片岡愛之助さんがさすがのお芝居で見事に演じてくださって。
大塚 愛之助さん、本当にお見事でしたね。
栗田 ムオムに仕えるサリファ役の森川葵さんも、ゴミ人間役を演じた空気階段のお二人もがんばってくれて。宣伝活動もすごく協力してくれてたしね(笑)。ルパンは持ち前の頭脳で状況を打破しようと必死になるし、ほかのキャラクターもなんとか戦っていく。後半、ルパンはずっとヨレヨレボロボロ。あそこまで全編ヨレヨレボロボロのルパンというのも、かなり珍しいね。そんな孤軍奮闘するルパンを、次元も五ェ門も不二子も、どこかで信じてくれている。それが集約されたようなラストシーンに、僕はかなりグッときましたね。
大塚 この映画のルパン一味は「俺たちは仲間だぜ?」ではなく、「お前がどうなったって知らないけどさ」と言いながらも、互いの利害の一致で力を合わせていく。古風なようで、実はかなり現実的で現代的な説得力で、そこもまたかっこよくて。
栗田 確かに現代的だよね。不二子のキャラクターも、テレビシリーズ「PART2」の頃のちょっとマリリン・モンロー風な紅一点ではなく、かなり現代的なクールさで描かれているし、そこはどのキャラクターにも言えるかもしれないね。
──劇中ではルパンと次元の“相棒”という関係が、少ない言葉とタバコという小道具を通して語られます。個人的には「次元大介の墓標」でも登場したタバコが、ルパンと次元、小林清志さんと大塚さんをつなぐバトンのようにも感じられました。
大塚 そう。本当に脚本が巧い。
栗田 そういうところも小池ルパンの“粋”。特に「銭形と2人のルパン」がそうだけど、アニメよりも、実写の映画を観ているような体感があるのも小池ルパンの魅力だよね。
大塚 複雑で重層的な構造の物語で、立体感のある大人っぽいルパンたちが楽しめるというところも今回の映画の大きな魅力ですね。あと、音もすごくいい。
栗田 そう。小池ルパンはどの物語も細かい効果音や音楽が半端じゃない。今回の映画はもちろん、どの作品もすべて劇場で観てほしいくらいですよ。