「あの花」は僕たちの転換点、長井龍雪監督と田中将賀が10年前に思い馳せる

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アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の放送10周年を記念した上映イベントが、「東京アニメアワードフェスティバル2021(TAAF2021)」の一環として、本日3月13日に東京・池袋HUMAXシネマズで開催された。

長井龍雪監督

長井龍雪監督

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「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」キービジュアル (c)ANOHANA PROJECT

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イベントには監督の長井龍雪、キャラクターデザイン・総作画監督を務めた田中将賀、MCとしてアニメーションやエンタテインメントビジネス分野におけるジャーナリスト・数土直志氏が登壇。長井監督が選んだ3エピソードである、第1話「超平和バスターズ」、第5話「トンネル」、最終話「あの夏に咲く花」の上映後、約50分間にわたりトークが展開された。

田中将賀

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2008年から2009年に放送された「とらドラ!」でタッグを組んだ長井監督と田中、そして脚本家の岡田麿里が再集結して制作した「あの花」。長井監督は「監督してきちんと認めてもらったのが『あの花』なんじゃないかなと。確実に、僕の転換点になってると思います」と、田中も「アニメーターやキャラクターデザイナーって名前が大きく出る役職ではないんですけど、『あの花』では監督や脚本と同列に扱っていただいて、その後の仕事の振り幅も広がったので、自分にとってすごく大きな存在の作品です。オリジナル作品を手がけることが増えたのは『あの花』の実績があってこそだと思います」と話す。

普段は過去の作品をほとんど観返さないという2人だが、田中は本日のイベントにあたってTVシリーズと劇場版を視聴してきたそう。久しぶりに「あの花」を観た感想を「いやあ、若いなと。セリフとかの癖は変わってないですけど、感情移入するポイントが変わりました。もう、お母さん……っていう感じですね」と、我が子を思ってめんまとある約束をしたじんたんの母親に思いを馳せたと話す。また「(長井監督や岡田と制作した)最新作の『空の青さを知る人よ』も大人の目線を強くした作品だったので、やっぱり今はそういう感覚になったということですね」とも語った。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」第1話より。 (c)ANOHANA PROJECT

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当時、長井監督は「あの花」を地味な作品だと捉えていたそうで、田中は「打ち合わせのとき、最初に『地味です!』って言ってきたよね(笑)」と回想。第1話の反響の大きさも2人には意外だったとのことで、長井監督は「引きこもりの感情がよく表現されてたって言われてて、そっか……と。シナリオがよかったんでしょうけど、当時はよく理解してませんでした」と話す。田中は「何年か経った後に岡田さんと話したときに、こんな業の深い話だったんだってわかったんですよね。当時はそこまで考えが至らず、知らず知らずのうちに岡田さんの片棒をかつがされていた(笑)。そんな、自分が見えていなかった部分がきっと皆さんに響いていたんではないかなと思います」と述べた。

また話題は「あの花」をはじめ、「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」の舞台となった埼玉県の秩父におよぶ。長井監督は「『ここさけ』では別の場所を舞台にしようっていろんなところにロケハン行かせていただいたんですが、なかなかピンとくるものがなくって。その頃よく『あの花』のイベントで秩父に呼んでいただいてたんですが、そのときに撮った写真がよくって、じゃあもう1回秩父を舞台にしようと。2回続けちゃったんで、キリのよいところっていうので3回目も秩父になりました」と話す。また秩父は日帰りで取材に行けるのが利点だとも続けた。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」最終話より。 (c)ANOHANA PROJECT

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最終回の話になると、田中は「粘り強くみんなで答えを探したよね。キャラクターたちの気持ちをどう消化させようか、みんなで意見を出し合って。結果、荒いけどちゃんとまとまっていて、こういう作品をオリジナル作品として最初に作れたことはすごく幸運なんだろうなと思います」とコメント。最後にめんまがじんたん以外にも一瞬見えるという結末を選んだことについて、長井監督は「それこそ試行錯誤を重ねましたね。煮詰まって煮詰まって、もうこれしかないよねっていうまで話し合いました」と語る。田中は「かくれんぼをするって流れも最初は『ええ!?』って思いましたけど、それがまさか劇場版で回収されるとは。『きれいな終わり方してんな、あの花さんは』って改めて観返して思いました(笑)」と述べた。

「10年経った現在の状態で『あの花』を作ることになったとしたら、今あるものと同じものになるのか、それとも違うものになるのか』というMCからの質問には、2人とも「大きく変わらない」と回答。最後に田中は「今日は長井さんと面と向かって『あの花』についてしゃべるという恥ずかしいことをさせてもらって大変貴重な時間でした。実は『あの花』10周年の準備をいろいろとしているので待っていてください」と、長井監督は「10年前、インタビューで『10年後もみんなに覚えててもらえる作品になったらいいな」って話してたけど、今日皆さんがこうやって集まってくださって本当に幸せです。また田中さんと岡田さんと3人で一緒にやりたいなと話をしているので、期待していてください」と観客に伝えた。

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