「SHIROBAKO」製作陣らが語る“万策尽きかけた”経験、3DCG時代への危機感も

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P.A.WORKSのスタッフらが登壇するトークショー「『SHIROBAKO』から見るP.A.WORKSの想い」が、本日3月14日に東京・サンシャインシティ噴水広場で行われた。

「『SHIROBAKO』から見るP.A.WORKSの想い」第3部の様子。左からP.A.WORKSの堀川憲司、相馬紹二、山本輝、橋本真英。

「『SHIROBAKO』から見るP.A.WORKSの想い」第3部の様子。左からP.A.WORKSの堀川憲司、相馬紹二、山本輝、橋本真英。

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アニメ「SHIROBAKO」キービジュアル (c)「SHIROBAKO」製作委員会

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「東京アニメアワードフェスティバル2021(TAAF2021)」の一環として行われたこのトークショーでは、アニメ業界の裏側について描いたP.A.WORKS制作の「SHIROBAKO」の話題を交えつつ、3部にわたってアニメ制作の裏話や今後の展望が語られた。アニメの印象的なフレーズに絡め「なぜ、僕らはこんなに万策尽きそうになるのか。」と題した第1部では、P.A.WORKSからプロデューサーの相馬紹二、ラインプロデューサーの山本輝と橋本真英、インフィニットの永谷敬之が登壇。「SHIROBAKO」の“万策尽きそう”な場面集をスクリーンにかけたあと、「ダビング前差し替え当日の朝に制作進行がいなくなってしまった」など、実際に“万策尽きそう”になった経験談を赤裸々に語っていった。「実際は万策尽きていなくて、経験値の浅さでどうしていいかわからなくなるんですよね」と橋本。製作側である永谷は、「SHIROBAKO」ではそういう経験はないと前置きしつつ、オンエアに間に合わずに急遽総集編を用意するケースなどを紹介した。

P.A.WORKSの山本輝。

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インフィニットの永谷敬之。

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数々の“万策尽きそう”な経験を経ても、この仕事続けられている原動力は何か?という問いに、山本は「作ってる最中はつらいときもありますが、作品が終わるたびにしんどかったことを忘れるんです。『やってよかったな』って、そう思える作品に出会ってこられた」とやりがいを口にする。永谷は「『SHIROBAKO』のTVシリーズでプロデューサーを辞めようと思ってた」と明かし、「自分が形にしたいと思ったものや、やってみたいジャンルにひと通り触れてしまって、携わった作品が大好きだったがゆえに満たされてしまったんです。でも『SHIROBAKO』を通してアニメ業界をより知ってもらう機会が生まれて、自分に発信できることがまだあるんだなって」と、「SHIROBAKO」が自身に新たな目標をもたらしてくれたと語った。また永谷は、劇場版「SHIROBAKO」の公開が現在も続くコロナ禍の始まりの時期と重なったことに触れ、「現場が一生懸命作ってくれたものが、満足な形で世に出せたのかということも含めて、劇場版『SHIROBAKO』をどうやってもう1ステージ上げられるか考えていかなきゃいけない」と意気込む。そして相馬が「我々は万策尽きてはいませんし、これからも尽きる予定はございません」と宣言し、第1部を締めくくった。

第2部「作画と3Dアニメーションの過去と今」では、P.A.WORKSの代表取締役である堀川憲司が司会を務め、アニメーターの井上俊之、サイクロングラフィックスのCGディレクター・設楽友久が登壇した。この部では井上と設楽が携わった「さよならの朝に約束の花をかざろう」の映像も見せつつ、「SHIROBAKO」の中でも扱われた手描きアニメーションと3DCGアニメーションの共存についてトークが展開された。

「『SHIROBAKO』から見るP.A.WORKSの想い」第2部の様子。左からP.A.WORKSの堀川憲司、アニメーターの井上俊之、CGディレクターの設楽友久。

「『SHIROBAKO』から見るP.A.WORKSの想い」第2部の様子。左からP.A.WORKSの堀川憲司、アニメーターの井上俊之、CGディレクターの設楽友久。[拡大]

井上は「『レミーのおいしいレストラン』や『ヒックとドラゴン』あたりから、総合的に手描きでは太刀打ちできないクオリティになってきて、3Dに駆逐されてしまうんじゃないかという危機感を持っていた」と振り返りつつ、「世界では駆逐されたに等しい状況だったのが、近年やや手描きアニメーション、パペットアニメーションなどが復権してきている」「日本国内は手描きは手描き、3Dは3Dでうまく共存できていて、世界とは状況が全然違う」と現状について述べた。設楽は「メカのような硬いものは得意で、苦手なのは髪の毛とか服とかやわらかいもの。実写っぽいリアルな表現はかなり実現できるようになりました」と3D技術について紹介しつつ、日本独自の進化を遂げたリミテッドアニメーションにおいては、個々人の努力によって手描きになじませている部分が大きいと語った。

話題はその後も国内外のアニメ制作の違いについて発展。井上は「これほどアニメーションを作っている国は日本以外にないので、新しい勉強をしなくても、安いながらも仕事はある。そういう日本の特殊な状況が、手描きアニメーションの進化も、3DCGの進化も妨げていて、それに不満がある人は海外に出ていってしまっているんじゃないか」と私見を述べる。さらに「我々の時代は失敗も含めてそのまま画面になって、恥をかきながら覚えていったけど、今はある程度クオリティの管理が厳しくなって、失敗は描き直されてしまう。トライアンドエラーもままならない」と、アニメーターのスキルアップの難しさについて触れた。そして海外作品を例に挙げつつ「ピクサーのような立体的なルックだけではなく、イラストのような仕上がりを3Dで生み出すようになっている」とも語り、「リードしていたかに見える日本のアニメーションが置いてきぼりを食いかねない状況が、急速に始まるんじゃないか。進化していかなきゃいけない時期が来ているので、まだまだ僕もがんばりたい」と意欲を見せた。

P.A.WORKSの堀川憲司。

P.A.WORKSの堀川憲司。[拡大]

第3部「P.A.WORKSはもがいてるんだ!」では、これまで登壇した堀川、相馬、山本、橋本が勢揃いし、P.A.WORKSが企業や業界の問題解決に向けて行っている取組みについてトークを披露した。ここでもやはり話題は人材不足や育成面の課題におよぶ。橋本は「作品数が増えていて、お願いできる作画さんの数が足りないんです。そこで今までご縁がなかった作画さんとゆるくでもつながれる方法はないかなと、最近制作部のTwitterを始めました」と紹介。またP.A.WORKSが運営する養成所で新たに演出育成コースを設けたことについて、堀川は「作品数が多くなりすぎて、真っ当な作り方が崩れている。演出はそのキーになる存在。作品をトータルで見て、ちゃんと完成させるために、自分が何をしなければいけないのか。それを教えてくれる場がなかなかない」と問題意識を語った。一方で堀川はアニメの作品数が増えていることに批判的というわけではなく、「作品がなくなったら描ける人は減っちゃいますから。今は徐々に昔より予算も上がっていっているので、人を育てるのには非常にいい環境だと思っています」ともコメントしていた。

なお「東京アニメアワードフェスティバル2021」は明日3月15日まで開催中。明日はコンペティション部門のグランプリ作品上映や、「アニメ功労部門」「アニメ オブ ザ イヤー部門」の授賞式が行われる。

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