アニメスタジオクロニクル No.16 [バックナンバー]
スタジオコロリド 金苗将宏(代表取締役 / プロデューサー)
多様な価値観のクリエイティブが集まってチャレンジできるスタジオに
2024年7月29日 15:00 17
多様な作品ながらにじみ出る“コロリドらしさ”
長編映画をメインとするスタジオコロリドだが、「薄明の翼」のようなWebアニメやCMを現在に至るまで作り続けている。同社にとってそれらの仕事はどんな存在なのだろうか。
「うちは映像作家気質のあるクリエイターさんが多くて、みんなチャレンジしたがっているんです。ただいきなり長編映画で監督とかキャラクターデザインのデビューというのはさすがにハードルが高い。だからCMや短尺のアニメの仕事ではそうした、才能はあるけどまだディレクション側の仕事ができていない人にチャレンジしてもらうことが多いです。それに映像表現も短尺のほうが挑戦しやすいので、そこで得られた手応えを長編にフィードバックさせられるというメリットもあります
パズドラTVCM「転校生」篇(30秒)webオリジナル版
例えば
尺、ジャンル、媒体。種々様々な作品を作っているスタジオコロリドだが、アニメファンならそれらにどこか似た雰囲気を感じているのではないだろうか。
「“コロリドらしさ”はめちゃくちゃ意識しています。主に映像トンマナの話で物語性やキャラクター性とはまた違うんですけど、例えば色味なんかは制作内でその“らしさ”をちゃんと言語化しています。そうしたコロリドらしさを生み出すための要素を資料化してスタッフと共有しているので、どの作品からもなんとなく“らしさ”を感じられる映像に仕上がっているのではないかと。
あとコロリドは映像や画に対して意識が高いスタッフが多いので、作品ごとにメインスタッフは異なるものの同じ資料を参考にしたりして意図せず映像のビジョンが似てくるところもあります。それで作品に幅はありながらも、結果的に共通している部分が生まれているのかもしれません」
より“色彩豊か”なオリジナル作品を生み出していきたい
連綿と受け継がれてきたスタジオコロリドらしさが凝縮されたのが、2024年5月24日に劇場やNetflixで公開された「
「今回、コロリドの得意とする王道のボーイミーツガール作品に、ファンタジー要素を加えた真骨頂とも言える作品に正面から取り組みました。監督は『
今は『薄明の翼』の山下監督や『
新たな扉が開かれるというスタジオコロリド。同社の現状と今後について改めて聞くと、金苗氏の言葉からは「今後もオリジナル作品を作るスタジオでありたい」という言葉に続いて「うちはまだまだ1年生」という意外な言葉が飛び出た。
「スタジオとして10年以上経験を積んで、制作進行もクリエイターも個々人のスキルアップはもちろん、各セクションに有能でプロフェッショナルなスタッフが多く、生産力も年々着実に向上しているのは実感としてあります。ただオリジナル企画で勝負することを大方針として掲げているスタジオとしての経験値は、まだまだ全然1年生というか。0から1を生み出すという作業はとてつもなく難易度が高く、特異な創造性を要するため毎回完成に至るまでさまざまな壁にぶつかっています(笑)。毎度課題が生まれて、そういう意味で制作スタジオとして知見や知識がまだ体系化されていないのも事実です。それに歴史に残るような大ヒット作の実績をもつ監督やスタジオがあって、経験豊富なレジェンドクラスの方々と同じ土俵で勝負するわけですから、越えるべきハードルは山ほどあります。それを乗り越えて、より多くのお客さんに喜んでいただき後世に残るような作品を、毎回確信を持って世に送り出せるようになりたいですね。
そのために、築き上げたコロリドのトーンやマナーを継承しつつ、新たな表現への挑戦をしたいという段階に入っています。自分の癖として極端な偏りを避けたいという思いがあって、どこかでバランスをとりたくなる。多様なクリエイティブの価値観があっていいし、先人たちに敬意を払いつつ、ときに創造的破壊というか固定観念や慣例にとらわれすぎずに、いろんな方々と組んで作品制作してみたいという欲求があります。社内でともに成長してきたスタッフが監督を務める未来も想像していますし、同時にこれから出会う新たな才能とともにコロリドでチャレンジしたい方がいたら一緒に仕事していきたいです。
そもそも『コロリド』というのはポルトガル語で“色彩豊か”という意味で。当初は映像に対する思いを込めて付けられた社名だと思いますけど、今はいろんな価値観のクリエイターや制作人がコロリドに集まって、チャレンジできる場所でありたいと思っています。会社として安定した経営を行うためビジネスとしても成功させたいというのは前提としてありますけど。そしてディズニーやピクサーではないですが、『スタジコロリドの作品だったら観たい』と言ってくれるようなスタジオのファンを増やしたいです」
金苗将宏(カンナエマサヒロ)
1982年1月28日生まれ、東京都出身。スタジオコロリド代表取締役。2003年にアニメーション業界に入り、タツノコプロでの制作経験を経て2015年スタジオコロリドに入社。「台風のノルダ」「
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ジブリまみれ @ghiblimamire
《アニメスタジオクロニクル No.16》
スタジオコロリド 金苗将宏(代表取締役 / プロデューサー)
コロリドの歴史から、「ペンギン・ハイウェイ」と「薄明の翼」で迎えた転機、そしてスタジオが掲げる未来図まで語ってもらった
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