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syrup16g「再発」ツアーで証明した完全復活

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syrup16g「syrup16g Hurt リリース記念ツアー『再発』」なんばHatch公演の様子。(Photo by Yuki Kawamoto)

syrup16g「syrup16g Hurt リリース記念ツアー『再発』」なんばHatch公演の様子。(Photo by Yuki Kawamoto)

syrup16gが再始動後初めてのツアー「syrup16g Hurt リリース記念ツアー『再発』」の最終公演を、9月25日に大阪・なんばHatchにて行った。

2013年5月に東京・NHKホールで実施された五十嵐隆(Vo, G)の単独公演「生還」をきっかけに再始動の話が浮上し、今年の6月に正式に再始動を発表したsyrup16g。8月にはフルアルバム「Hurt」を発表し、復活を待ち焦がれていたファンを喜ばせた。そして今回のツアーは9月19日の愛知・DIAMOND HALLを皮切りに東名阪で展開され、大阪で無事千秋楽を迎えた。

期待と興奮に満ちた会話が飛び交う中、場内がゆっくりと暗転すると、割れんばかりの拍手がメンバーを迎える。ステージには中畑大樹(Dr)とキタダマキ(B)が順番に現れ、五十嵐は最後に小さく拍手をしながら小走りで登場。赤いライトとスモークがステージを覆う中で彼は、中畑とキタダのほうを向き、激しくギターをかき鳴らしライブの始まりを告げた。1曲目を飾ったのは「Hurt」のオープニングナンバー「Share the light」。五十嵐の怒気をはらんだ鋭い歌声と、中畑の叩く激しいリズム、キタダのうねるようなベースが渾然一体となってフロアに轟く。オーディエンスは、手を上げたり、体を揺らしたりしながら、それぞれの形で3人の繰り出す音に身を委ねた。

その後のライブは、ライトのみのシンプルな演出のもとで、「Hurt」の楽曲と過去曲を織り交ぜながら進行。キタダの奏でるメロディアスなベースが印象的な「神のカルマ」で観客を懐かしい気持ちにさせたかと思えば、「Stop brain」などで“現在のsyrup16g”をしっかり提示する。「Stop brain」ではギターのチューニングが合わず五十嵐が「申し訳ない!」とイントロを弾き直す場面も。フロアから「らしい!」という声があがると、五十嵐が「らしいって(笑)。覚えてろよ!」と返すなど、ステージにはどこか余裕が漂っていた。また曲間でときおり静寂が訪れるが、そこに緊張した空気はなく、フロアにはメンバーの一挙一動をうれしそうに見守る観客の姿が見られた。憂いを帯びたミディアムチューン「ゆびきりをしたのは」を経て、五十嵐は「ありがとう。ただいま帰りました。syrup16gです」と帰還を報告。長年待っていたファンにお礼を伝えるように、「君待ち」や「生活」といった懐かしいナンバーを届けた。イントロが奏でられた瞬間に「おおっ!」という歓声が起きた「生活」では、五十嵐が吠えるように歌い、ラストでは「I want to hear me」と絶叫。その声で復活を観客に印象付けていた。不穏な雰囲気が漂うノイジーなロックチューン「哀しき Shoegaze」、軽やかなサウンドの上に五十嵐節とも言えるシニカルな歌詞が乗った「生きているよりマシさ」と新曲を続けて披露したあとは「ex.人間」「ニセモノ」へ。五十嵐の声に力がこもるにつれて、中畑もドラムを渾身の力で叩き、感情を解放するように雄叫びのような声をあげた。

壮絶な空気を断ち切るようにライブの後半では、五十嵐がイスに座り、アコースティックギターでパフォーマンスするコーナーも。「理想的なスピードで」は五十嵐の甘く穏やかな歌声に、徐々にキタダと中畑の音が重なり、柔らかな空気が紡ぎ出された。再び五十嵐がエレキギターを手にしてからは、アッパーな曲の応酬に。「宇宙遊泳」では、清涼感のある歌声とギターのアルペジオが響き、それを後押しするようにアグレッシブなセッションが繰り広げられた。さらになだれ込むように始まった「落堕」は、原曲よりもテンポが速められ、3人のセッションがフロアの熱を引き上げていく。鬼気迫るような五十嵐の歌声に観客も歓声で応え、ほのかな一体感が場内に生み出された。「今日はありがとう」という五十嵐の言葉に続いたのは「リアル」。キタダが落ち着いたプレイをする横で、中畑はドラムを乱打し、五十嵐は感情を爆発させながら歌い上げる。そしてギターのハウリング音が残る中で本編は幕引きとなった。

中畑が笑顔を浮かべながら登場したアンコールだが、リラックスした空気が漂ったのは一瞬のこと。不穏なアンサンブルが紡がれる「イカれた HOLIDAYS」で空気は緊迫したものへと一変し、続く「エビセン」ではアンニュイなムードがフロアに漂う。観客は、彼ららしい独特のテンションを保ったアンコールを存分に楽しんだ。そして五十嵐は「ありがとうございました。ってわけで最後になります。けどさみしいです。今日でたぶん外に出なくなると思うんですけど(笑)」と語り、さらに「『Hurt』というアルバムを作ったから、皆さんと会えたんで」と続け、今後もまた作品を発表していくことを明言。ツアー後は「燃え尽き症候群になりそう」とボヤき、「この曲は好きじゃないと言ってるんですけど、この曲を歌いに来たのかなと思います」と、「Hurt」の最後に収録されている「旅立ちの歌」のイントロをかき鳴らした。観客と再会を約束するような1曲を、3人は明るく照らされたステージでパフォーマンス。曲が終わると、五十嵐は膝をつきながら両手をあわせると足早にステージを去っていった。

しかし観客は熱烈にダブルアンコールを求め、みたび3人をステージに呼び戻す。バンドは、紫の照明が舞台を彩る中で退廃的な「パープルムカデ」を、続けて青白いライトの下で「空をなくす」をプレイ。「空をなくす」では中畑の繰り出す高速の四つ打ちのビートにあわせて照明が明滅し、さらに五十嵐が咆哮してフロアの熱狂を引き上げていった。本来はこれでライブは終了するはずだったが、五十嵐が一旦置いたギターを再び抱え、フロアに近付いていく。中畑はスティックを、キタダは再びベースを手にすると、五十嵐のストロークにあわせて阿吽の呼吸で「真空」を演奏し始めた。お互いの音をぶつけ合うように3人はセッションを繰り広げ、五十嵐の激しい歌声に呼応するように、中畑もドラムを叩きながらシャウト。アウトロが鳴り止むと、この日一番の拍手が場内に響きわたった。

五十嵐は「ありがとう。最高です」という言葉を残し、キタダと中畑も万感の表情を浮かべてステージを去っていく。わずか3公演のツアーだったが、syrup16gの「再発」を印象付けるには十分な内容だったことは、観客の大きな拍手が物語っていた。

syrup16g「syrup16g Hurt リリース記念ツアー『再発』」
2014年9月25日 なんばHatch セットリスト

01. Share the light
02. 神のカルマ
03. Stop brain
04. ゆびきりをしたのは
05. 君待ち
06. 生活
07. 哀しき Shoegaze
08. 生きているよりマシさ
09. ex.人間
10. ニセモノ
11. ハピネス
12. 理想的なスピードで
13. 宇宙遊泳
14. 落堕
15. リアル
<アンコール>
16. イカれた HOLIDAYS
17. エビセン
18. 旅立ちの歌
<ダブルアンコール>
19. パープルムカデ
20. 空をなくす
21. 真空

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