「マザー」と題されたこの映画は、監督自らが脚本を担当したホラー。編集者・さくらは楳図の自伝を作るべく過去を取材するうち、氏の創作に亡き母・イチエが大きく影響していることを知る。やがてさくらはイチエの怨念が巻き起こす、怪奇現象に見舞われていく。イチエ役は真行寺君枝が務めた。
楳図は監督業について「年齢はハンデだとは全く感じておらず、逆に年を重ねるに従い創作の引き出しは増えていっていると思う」とコメント。内容については「ホラーという形をとりながらも、誰もが共感できる、せつない胸に迫るテーマをこの作品で伝えたいと思いました」とコンセプトを語った。映画の全国公開は2014年9月27日を予定している。
楳図かずおコメント
映画は昔から好きで、アルフレッド・ヒッチコック監督が亡くなった時くらいから、自分も映画監督をやってみたいと思っていました。
年齢はハンデだとは全く感じておらず、逆に年を重ねるに従い創作の引き出しは増えていっていると思っている。(プロデューサーから映画監督をやってみないかと)お話を頂いた時がチャンスだと思い挑戦しました。
「見る夢が現実化してしまう」という以前から温めていたアイディアに、誰もが共感できる普遍的な存在、お母さん をプラスしたのが今回の映画です。
ビジュアルはホラーという形をとりながらも、誰もが共感できる、せつない胸に迫るテーマをこの作品で伝えたいと思いました。
現場でも「お話し主義」とスタッフに言っておりましたが、ストーリーが面白くないと駄目だと思って脚本作りをしました。人の人生を嘘で曲げることはできないので、僕自身を主人公にし、母も含めて僕の人生の話になっています。何が本当で何が嘘か、観ている方が「本当に楳図かずおってこんな人生なのかな」と思ってもらえれば嬉しいです。
ホラーというありえない世界と、日常の生活をどのようにつなげていくかが、この作品の見どころであり、作り手として工夫のしどころです。
愛之助さんのほんわかした、のほほーんとした雰囲気が役にぴったりしていると思って、この役をお願いしました。僕は体重が40kgしかなく、やせすぎなのですが、撮影に入る前、愛之助さんは「僕は先生に似ていない。太っている」と気にされていました。しかし、最後に並んで記念写真を撮ったら、なんか同じ人に見えてくるというか、似てきた気がしました。仕事にのめり込んで、夢中になってやっているところも共通点だと感じました。舞台をやっていらっしゃるので、声がはっきりしていてメリハリのあるお芝居が素晴らしかった。愛之助さんにお願いして本当に良かった。
「マザー」っていうだけに、公開までマザーマザー(まだまだ)終わってませんので、これから世の中、マザー(まずは)見ろという作品になればいいなと思ってます。
片岡愛之助コメント
最初にお話を頂いた際に、楳図かずお先生役と聞きまして、全然似てないのに大丈夫か、と心配になりました。僕らの世代は「まことちゃん」などずっと読んでいましたし、先生は近づきがたい、憧れの人で、まさかご本人にお会いできるとは思ってもいませんでした。
実際にお会いすると楳図先生はとても繊細で優しい方。ですが、物腰は柔らかなんですけど、目の奥が何かを見据えていらっしゃるんですよね。
台本は本当に面白く、楳図ワールドといいますか、先生独特の世界観や描写がたくさんあって嬉しくなりました。
撮影はオールロケで、考えられないような早いスピードで進みました。とにかく1日の撮影シーンが多い。合間に舞台も務めておりましたので、休憩している間もなく、常に出ずっぱりという感じで撮影し、中抜けして舞台を務めて、また撮影現場に帰ってくるという毎日。非常に濃密な時間を過ごしました。
この作品には男女、親子、友情と様々な愛の形と、その裏返しが描かれており、時空を飛び越えてどうなってしまうんだろうという展開があったり、ただのホラー映画ではなく、色々な要素が含まれていると思います。僕も出来上がりを見るのが楽しみにしております。
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