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「稲穂くんは偽カノジョのはずなのに」変化球に見えても実は王道?女装男子とのラブコメの魅力を紐解く
2025年5月16日 13:00 PRとこのま「稲穂くんは偽カノジョのはずなのに」
この春から高校生になった森親太郎には、彼女と過ごすキラキラとした青春への憧れがあった。そんな親太郎に、ひょんなことから学校一の美少女・沢渡稲穂と付き合っているという噂が流れる。デマを否定しようとする親太郎だったが、沢渡さんは「本当に付き合ってるってことにしちゃう?」と意外な提案。気になっていた女の子と恋人同士になれたことに浮かれる親太郎だったが、実は沢渡さんは「可愛すぎる男子」で……。「稲穂くんは偽カノジョのはずなのに」は、コミック アース・スターで連載されており、単行本2巻まで発売中だ。
文
「女装男子」と王道ラブコメ
ニッチと思われることが多いが、「女装男子もの」というジャンルは意外と王道のエッセンスでできている。コミック アース・スターで連載中の「稲穂くんは偽カノジョのはずなのに」も、女装男子の系譜であると同時に、青春ラブコメの王道にもなっている。
「稲穂くんは偽カノジョのはずなのに」は、2つの嘘を軸にした物語だ。恋に憧れる主人公・森親太郎は、ふとしたきっかけで学校一の美少女として人気を集める沢渡稲穂と偽りの恋人となる。ところが、女の子として学校に通う稲穂は、実は男子だったのだ。
偽りの関係に偽りの性別。二重の意味でニセの恋愛関係なのだが、その関係を通じて親太郎は改めて稲穂くんのかわいさや、人間的魅力に気づいていくことになる。ここには3つの王道エッセンスが詰まっている。
王道ポイント1:戸惑いと障壁
稲穂くんは学校ではクールでかわいい女の子として振る舞っているが、素の稲穂くんは普通の男子であり、親太郎と2人のときは男同士という感じになる。それがわかっているのに親太郎も読者も稲穂くんのかわいさにドキッとしてしまう。その戸惑うような感覚が本作の大きな魅力になっている。
この戸惑いが最初のポイントだ。
恋愛物語に必要なものは何か。楽しむポイントはいろいろあるが、最も必要なのは絆の証明だと言っていい。相手が誰だっていいような恋愛に物語としての輝きはない。始まり方はともかく、お互いにかけがえのない特別な関係だと思えるところに恋愛ドラマの肝がある。
障壁はそんな特別さを可視化し、担保してくれる。「こんなに阻むものがあるのに、それでもこの人が好きなのだ」という事実が、キャラクターにも読者にも恋心が本物であることを認識させるのだ。
「女の子が好き」と思っている親太郎が、稲穂くんに惹かれるときの戸惑い、そんなはずないという気持ちは、そういう障壁の演出にもなっている。女の子じゃなくても、やっぱり気になる、好きなんだという自覚や関係作りのプロセスに相手の特別さが宿る。
王道ポイント2:秘密の共有
周囲に恋人であることをアピールするために、稲穂くんは積極的に親太郎と腕を組むなど、ラブラブぶりを演出してくる。その姿のかわいさには思わずドキドキしてしまうが、2人は偽りの恋人だ。
ここで重要なのは、2人がその秘密を共有している点だ。
「2人だけの秘密」は関係を否応なく特別なものにする。親太郎と稲穂くんの場合は、偽りの恋人関係と稲穂くんの本当の性別という二重の嘘が、そのまま二重の秘密の共有になっている。この秘密の関係を通して、親太郎は稲穂くんの本当の素顔や心の奥にある寂しさにも少しずつ触れていくことになる。秘密が秘密を呼び、2人を本当の意味で親密な関係にしていく。まさに王道の青春ラブコメだ。
王道ポイント3:ヒロイン(?)としての魅力
稲穂くんが女装した男子であるというのは、元々女の子と恋愛するつもりだった親太郎にとっては障壁であり欠点と言える。その一方で女の子のヒロインよりも強い魅力になっている部分もある。
その1つが親太郎に対する無防備さだ。稲穂くんは、自分が男性であることを親太郎が知っているのだから、本気で自分にドキドキしたり、好きになったりはしないと思っている。もちろん自分自身も親太郎を恋愛的に意識するはずもないと考えている。だからこそ、稲穂くんはある意味では気軽に親太郎とイチャイチャするフリができるし、目の前で着替えるのも気にしないラフさがある。
友達同士から、恋愛対象として意識するようになる時期の淡いドキドキのような感覚がそこにはある。これも青春ラブコメの王道要素と言える。
一見変化球に見える女装男子とのラブコメだが、女装男子だからこそより恋愛物語の王道部分が際立つ内容になっている。「女装男子もの」というジャンルに馴染みのない人も、親太郎と一緒に一度稲穂くんのかわいさに戸惑ってみてはいかがだろうか。
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