ウィーン国立歌劇場の来日は、約9年ぶり。演目はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト「フィガロの結婚」とリヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」の2作品で、公演は10月に東京・東京文化会館で行われる。記者会見には中谷のほか、日本舞台芸術振興会(NBS)の高橋典夫専務理事が出席した。
オーストリアと東京を拠点に活動し、夫ティロ・フェヒナーがウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴィオラ奏者である中谷は、「クラシック音楽は子供の頃から大好きでした。ですがピアノは5年ほどで投げ出し、楽譜もシャープやフラットが2つ以上つくとお手上げです」とおちゃめに述べつつ「そんな私でもウィーンでオペラを楽しむと、私たち人間の心情や本質をありありと描き出す様に思わずハッとさせられ、自らを顧みる機会を与えられ、涙することも多くあります」とオペラ愛を語る。
今回日本で上演される「フィガロの結婚」は、2023年に初演されたバリー・コスキー演出によるプロダクション。中谷は、友人であるアルマヴィーヴァ伯爵夫人役のハンナ=エリザベット・ミュラーに誘われ、3月29日にウィーンで同プロダクションを鑑賞したことを明かし、「『フィガロの結婚』は250年近く前にモーツァルトが作曲したオペラであるにもかかわらず、なぜか今の時代が反映されている」「女性が男装をして男役を演じる途中で女装をする、という本作の不思議な特徴が、今回はより官能的に描かれています」と魅力をアピールした。
また「ばらの騎士」は、ウィーンでもたびたび上演されているオットー・シェンクの演出版。同作終盤の、元帥夫人、若きオクタヴィアン、令嬢ゾフィーの三重唱について、中谷は「互いに失った恋人の幸せを願う素晴らしい歌であると同時に、時代が移り変わることへの諦め、受容も感じられます。皮肉なことにオペラもまた、もしかしたら時代遅れなのかもしれないという思いも込められた作品なのではないでしょうか」と述べ、「いつか失われていくものかもしれませんが、人間の極限の声が響き合うオペラは“勝敗のないオリンピック”のようなもの。ぜひ生で味わっていただきたいと思っております」と力強くメッセージを送った。
なお会場の東京文化会館は2026年5月から大規模改修に伴い休館するため、本公演が休館前最後の大型オペラ公演となる。NBSの高橋専務理事は、同会館のほかにも東京都内で劇場の改修工事が相次いでいることから「少なくとも3年間は、こうした海外からの“引っ越し公演”は物理的にできなくなると思います」と今回の公演の貴重さを強調した。
ウィーン国立歌劇場2025年日本公演
2025年10月5日(日)〜12日(日)
東京都 東京文化会館
スタッフ
「フィガロの結婚」全4幕
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
演出:バリー・コスキー
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
「ばらの騎士」
作曲:リヒャルト・シュトラウス
演出:オットー・シェンク
指揮:フィリップ・ジョルダン
出演
「フィガロの結婚」全4幕
アンドレ・シュエン / ハンナ=エリザベット・ミュラー / イン・ファン / リッカルド・ファッシ
「ばらの騎士」
カミラ・ニールンド / ピーター・ローズ / サマンサ・ハンキー / カタリナ・コンラディ
パスカル @fivesatins
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