「季節はずれの雪」が、12月7日から17日まで東京・シアター風姿花伝で上演される。
「季節はずれの雪」は、スティーブン・メトカルフが、ベトナム戦争から帰還した兵士たちの心の傷を描いた戯曲。作中では、兄と妹、そして兄の戦友で、妹と愛し合うようになる男の3人芝居が展開する。今回は、
稲葉、一川、牧島、天野、大石のコメントは以下の通り。
稲葉賀恵コメント
この戯曲を選んだ当時は
こんなにオンゴーイングな戦争が世界で繰り広げられると思っていなかった。
と言ったそばからその自分の軽率な言葉にめまいがします。
今の戦争の前にだってその前にだって、いつでも地球上のどこかで諍いは起きていて、
それらはどこまでいっても私にとっては対岸の火事であると感じている自分にめまいがするのです。
翻訳劇と向き合えば向き合うほど、この当事者性から一層離れていっているのではないかと煩悶していた頃にこの戯曲を選びました。
数々の戯曲を読み漁り、共にこの戯曲を選んだ牧島さん、いつかご一緒したいと思っていた天野さん、四回目の創作になる大石さん、そして信頼する気の知れたスタッフの方々に集まって頂きました。
戦争を経験したことのない私たちが、あり得るかもしれない人生として想像を巡らせることに価値があると信じています。
どうか劇場で共に想像を巡らせて頂けますよう。ご期待ください。
一川華コメント
「戦争を知らない人間は、半分は子供である」
戦争を扱う戯曲に取り組むたび、大岡昇平の「野火」の一節が胸に突き刺さる。
わたしは、前線に赴いたこともなければ、銃の重みも知らない。
戦争を実体験で知る人間からすれば、戦争を演劇で立ち上げるなど、ままごと遊びに過ぎない。そう思うと、どうしても心は苦しくなる。
それでも、考え、問いかけ、話し合う行為を、一瞬たりとも止めたくない。
この気持ちは、今自分たちは戦争とはほど遠い場所にいる、という虚構の余裕から来るものであることも分かっている。
だからこそ、この“余裕”のあるうちに。
たとえ子供であったとしても、精一杯の想像力を使って、思考の種を蒔きたいと思うのだ。
牧島輝コメント
昨年3月に「サロメ奇譚」で稲葉さんとご一緒させていただいてから、また一緒に作品を作りたいという思いで今回の企画が始まりました。どの演目にするか相談を重ね、数ある候補の中から「季節はずれの雪」を選ばせていただきました。今この作品を上演する意味を僕は強く感じています。シアター風姿花伝での三人芝居。すごく特別な時間になると思います。皆様と劇場でお会いできること楽しみにしております。
天野はなコメント
私にとって初挑戦となる3人芝居です。少しの緊張と共に未知の世界に飛び込むような気持ちでいますが、稲葉さん、牧島さん、大石さん、そして頼もしいスタッフの方々と共にこの作品に向き合えることを嬉しく思っております。初めて原作を読ませて頂いた時、登場人物達のあまりの繊細さ、危うさに胸がドキドキしました。触れたら壊れてしまいそうなこの物語を、風姿花伝という親密な空間でお届けできる日をとても楽しみにしています。12月の寒さの中、ささやかに寄り添える時間になるよう稽古に励みます。
大石将弘コメント
稲葉賀恵さんの演出作品からは、空間を満たす美しさと、人間の力強さを感じます。稲葉さんと何度かご一緒させていただきましたが、戯曲や他者を尊重し全力で誠実に向き合うエネルギーにいつも圧倒されます。今回、念願の翻訳劇、しかも出演者3人の濃密な会話劇に参加出来るのがとても嬉しいです。あちこちで大活躍しまくっている俳優おふたりと、素晴らしいスタッフの皆様に囲まれて、本当に自分に務まるのかという不安と格闘しつつ頑張ります。今この戯曲を、どう響かせることができるのか。とても楽しみです。
稲葉 賀恵 / Kae Inaba @kae_peony
【私的年末最大の催し物情報解禁】
12月『季節はずれの雪』を公演します。
久々に企画を。
昨年『サロメ奇譚』でご一緒した
牧島輝さんと沢山戯曲を読み漁った日々が懐かしい。
こんな素敵なキャスト、スタッフが集結しました。
真摯に、誠実に作りたいです。
観に来てください。 https://t.co/BaaDx0D2jJ