シス・カンパニー公演「ヘッダ・ガブラー」が、明日4月7日に東京・Bunkamura シアターコクーンで開幕する。これに先駆け本日6日に、同劇場で囲み取材とゲネプロが行われた。
1890年に発表された本作は、
出演者には寺島のほか、ヘッダの夫であるイェルゲン・テスマン役の
ゲネプロ前に行われた囲み取材には、寺島、小日向、池田、水野、段田が出席。ヘッダについて寺島は、逸脱することを許されない教育を受けてきた女性であると語り、「その中でひずみや渇望が変な形で煮えたぎってしまう」と彼女の人物像を解説。本作の内容については「自分は嫌な思いをしたくないけど、人がぐちゃぐちゃになるのを見て楽しむことでしか思いを発散できない、悲しい女の話」と話し、「そういう生き方しかできないヘッダを、ある意味でかわいそうだと思う」と印象を語った。さらに、「自分の家もなんとなく似て非なるというか、環境はヘッダのような感じでした(笑)。それも組み込んで演じられたら」と抱負を述べると共に、「内容は普遍的でわかりやすくなっています。共演者の皆様の技の応酬ですので、そこを楽しみに観ていただければ」と本作の魅力をアピールした。
「なかなかセリフが覚えられなくて……久々に緊張する初日になりそう」と心中を語るのは小日向。「栗山さんが噛み砕いて、イプセンや作品の面白さを示してくれたので、僕らはそれに向かって安心して進んでいけました」と稽古を振り返った。また自身の演じるイェルゲン・テスマンについては「いわゆる色男ではない。ヘッダには相手にされていなくて、飽きられている。そういうのは僕ねえ、身近に感じますね! 僕も大体、捨てられる人生を送ってきたので(笑)」と冗談交じりに話し、会場を笑いで包む。続けて小日向は「人間って悲しいなあとか、愛すべき存在だなあと思いながら、楽しんでやっています」と笑顔で語った。
池田は「繊細で、シーンとして怖い、というような芝居なんですが、時折小日向さんが素敵な“言いまつがい”をしてくれるので、ほんわかした稽古場でした」と笑顔で振り返る。また北欧のバイキングを題材にした海外ドラマを観ていると言う池田は「ドラマを観ていると、女性がとても強い。その状態から封建的な社会になって女性が抑圧され、『人形の家』のような作品に至る。北欧には古くから女性が強い、解放的な社会があって、それを一瞬抑圧したことでこういう作品が生まれた可能性があると思うと興味深い」と本作を分析。現代日本とは異なる舞台設定であることについては「『ノルウェーじゃないじゃん』と言われたら、『お前知ってんのかよ!』と言い返すくらいのつもりでやってます(笑)」と意気込んだ。
水野はエルヴステード夫人を「ヘッダ・ガブラーにいじめられてもすがりついていく役」と紹介。「(ヘッダからの)いじめられ度合いが、日々増していて。台本のト書きにはなかったんですが、髪を引っ張られたりつねられたり、暴力が加わっています」と苦笑いで明かす。さらに水野は、池田演じるエイレルトに恋して家を出るエルヴステード夫人について、「1番弱いように見えて、ヘッダよりよほど大胆な決断がしてしまえる」と考察し、「周りが見えなくなるくらい人を好きになることや、我慢して我慢して耐えられなくてぷちんと切れてしまうあたりは、普遍的なところがあって想像しやすい」と役作りの過程を語った。
段田は初めて台本を読んだ際の印象を「どこが面白いのか、と思ったのが正直なところですが(笑)、ほかの方が出ているところを観て、いいんじゃないの?と思った」と感触を明かす。また自身の演じるブラック判事がヘッダに恋することに言及し、「私も綺麗な女性が好きなもので、共通するところがいっぱいある」と茶目っ気たっぷりにコメント。さらに舞台設定が約150年前のノルウェーであることにも触れ、「今の日本で生きていても『わかるなあ、この感覚』というところがあるので、それを頼りにやっています」と役へのアプローチを語った。
会見後のゲネプロでは、二村周作が手がける、シックで豪奢な邸宅の居間を中心に物語が展開した。すべてが用意された理想的な新婚生活にもかかわらず、ヘッダは自分の閉塞的な状況に不満と苛立ちを隠せない。そんな彼女にエイレルト、エルヴステード夫人、ブラック判事は振り回されていき……。
寺島はスタイリッシュなデザインのドレスから覗く細い腕を、艶めかしく、白蛇のように光らせながら、男たちを翻弄していく。将軍の娘らしい気高さと強さを、寺島はクールな口舌で表現。また、素朴で温和な人柄を愛嬌を交えて演じた小日向、才能と情熱を言動ににじませる池田、慎ましさと大胆さを内包した女性像を丁寧に描き出す水野、渡世術に長けた男の強さと孤独をシャープに演じる段田、それぞれがドラマを練り上げた。公演は4月30日まで。
シス・カンパニー公演「ヘッダ・ガブラー」
2018年4月7日(土)~30日(月・振休)
東京都 Bunkamura シアターコクーン
作:
翻訳:徐賀世子
演出:
出演:
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