UAが30年の活動を凝縮したステージを展開、福岡の音楽ファンに愛を届けた「CIRCLE」2日目
2025年5月24日 23:01
1 音楽ナタリー編集部
5月17日、18日に福岡・海の中道海浜公園 野外劇場で野外音楽フェス「CIRCLE '25」が開催された。この記事では2日目の模様をレポートする。
目次
君島大空トリオ
2日目のトップバッターを任されたのは、バンド編成では「CIRCLE」初登場となる君島大空 (Vo, G)率いる君島大空トリオ。君島は1曲目に「光暈」をセレクトすると、淡く儚げな歌声を朝のCIRCLE STAGEにゆっくりと溶かしていく。エフェクトをかけたボーカルが印象的な「˖嵐₊˚ˑ༄」でギアを上げると、次曲「WEYK」では藤本ひかり(B)と角崎夏彦(Dr)の演奏もより肉体的なものとなり、その鬼気迫るステージングに観客が体を激しく揺らして応えていた。「『CIRCLE』めっちゃ好きで、バンドで来ることができて本当にうれしいです」と語った君島は、2023年発表の1stアルバム「映帶する煙」から「19°C」「都合」「No heavenly」などを演奏。ギタリストとしての手腕を発揮するかのように、多彩なメロディを軽やかに紡いでみせた。君島大空トリオは改めてオーディエンスに感謝を伝えると、バラード曲「Lover」をエモーショナルに奏でてパフォーマンスを終えた。
Chappo
「Chappo です」と声を合わせた福原音(G, etc.)と細野悠太(B, etc.)は、サポートに海老原颯(Dr)を迎えて「ATOH」でライブをスタート。さまざまなエフェクターを駆使しながらオーディエンスの体を揺らせたのち、「ふきだし」からは小山田米呂(G)と清水直哉(Key)が加わり、より厚みの増したサウンドを届けていく。福原が「我々人数を増やす設定を取っていまして、もう1人増やそうと思います」と言うと、所属レーベル・カクバリズムの代表を務める角張渉が登場。角張は、小説家の柚木麻子の代役として「めし」に出てくる淑女を演じ切って拍手喝采を浴びる。その後、ChappoはThe Venturesのカバーで有名なThe Chantays「Pipeline」とYellow Magic Orchestra「Absolute Ego Dance」のカバーで自分たちのルーツを示し、「スタンダード」で“CIRCLEデビュー”を締めくくった。
やのとあがつま(矢野顕子&上妻宏光)
続いてCIRCLE STAGEに登場したのは、矢野顕子 (Vo, Key)と上妻宏光(Vo, 三味線)によるユニット・やのとあがつま。まずは歌詞の一部を英語詞にアレンジした熊本県民謡「おてもやん」、遠方に住む大切な人への思いを歌ったオリジナル曲「会いにゆく」を披露し、民謡とポップスを融合させた独自のスタイルを提示した。やのとあがつまはその後、矢野が1981年に発表したアルバム「ただいま。」の収録曲で、のちにコラボアルバム「ふたりぼっちで行こう」で上妻を迎えてセルフカバーすることになる「Rose Garden」を披露。ユニットの原点とも言えるこの曲で、オーディエンスの体をゆったりと揺らした。息の合ったコミカルなやり取りで客席の笑いを誘った2人は、最後に5月6日に発売されたばかりの新作EP「恋の季節」から、エレクトロ色の強い「OHARA-BUSHI」で会場を一体にしてステージをあとにした。
mei ehara
2018年以来7年ぶりの「CIRCLE」出演となったmei ehara はバンド編成で参加。持ち前の儚くも芯のあるウイスパーボイスで、KOAGARI STAGEに集まった観客を魅了していく。ゆったりとしたテンポの「まだ早い果物」「蓋なしの彼」でチルな空気を醸成していった彼女は、MCを挟まずライブを進行。観客も思い思いにその音に身を委ねていた。その後も淡々と「ゲームオーバー」「不確か」などを奏で、8曲が終わったところで彼女は「どうもありがとうございます」と口を開く。もともと雨予報だったこの日の天気について触れ、「ある時期まで私は雨女で、前回出演したときも雨が降っていたんですけど、今日は天気が持って『やったー』って感じです」と喜びを表現。ラストの「昼間から夜」まで彼女らしく平熱を保ったままのパフォーマンスを届けた。
EGO-WRAPPIN'
強烈な歓声と手拍子で迎えられたのは、昨年の「CIRCLE」で大トリを務めたEGO-WRAPPIN' 。分厚い雲が福岡の空を覆う中、EGO-WRAPPIN'はそんなことはお構いなしと言わんばかりに「Paranoia」「Neon Sign Stomp」を情熱的にパフォーマンスして序盤から観客のテンションをヒートアップさせる。MCで中納良恵 (Vo)が「今日はダンスチューンを取り揃えてまいりました。風と一緒に踊り狂ってください」と呼びかけると、EGO-WRAPPIN'はその言葉の通り「love scene」「サイコアナルシス」「裸足の果実」など表情の異なるダンスナンバーを次々とプレイ。腕利きの楽器隊によるテクニカルな演奏と、中納のパワフルな歌声でCIRCLE STAGEをパッと明るいムードで包み込んだ。そしてキラーチューン「くちばしにチェリー」の曲中にはバンドと観客の熱量が天まで届いたのか、雲の切れ間から太陽が顔を覗かせる。EGO-WRAPPIN'は最後に「GO ACTION」をセレクトすると、約束通り最後までオーディエンスを踊らせ続けた。
YOGEE NEW WAVES
雲の隙間から日が差し始めた夕刻、YOGEE NEW WAVES が登場。代表曲「Ride on Wave」の演奏を始めると、さっそくオーディエンスは音の波に乗りながらクラップしたり拳を上げたりしてライブを楽しむ様子を見せる。「A.Y.A」では竹村郁哉(G)がステージ前方で気持ちよさそうにギターを弾く一方で、角舘健悟(Vo, G)がコール&レスポンスを繰り広げて会場の一体感を作り上げる。彼らは「未知との遭遇」と歌う「Summer of Love」で“So Good”なメロディを紡いだのち、メロウかつドリーミーな「Climax Night」「HOW DO YOU FEEL?」といった楽曲で観客を白昼夢へといざなう。そして「最後にダンスナンバーをやって終わります」と角舘が曲紹介をしてから「Like Sixteen Candles」で出番を終えた。
ハナレグミ
ハナレグミ はサポートメンバーに石井マサユキ(G)、YOSSY(Key)、鈴木正人(B / LITTLE CREATURES )、伊藤大地(Dr)を迎えて登場すると、昨年発表の最新アルバム「GOOD DAY」から「Blue Daisy」を1曲目にチョイス。真船勝博(B)と武嶋聡(Sax)も加わった次曲「レター」では、芳醇なアンサンブルを奏でてチルなムードを演出した。ハナレグミは「『CIRCLE』に帰ってこれてうれしいです」と笑顔で挨拶したのち、盟友・池田貴史(レキシ)との共作曲「フリーダムライダー」や、ハナレグミ名義でのデビュー曲「家族の風景」、歌詞を詩人・御徒町凧と共作した「ビッグスマイルズ」といったナンバーをじっくりと披露。会場に漂う余韻を断ち切るようにダンスナンバー「雨上がりのGood Day」でグルーヴの波を起こしたかと思うと、「太陽の月」「独自のLIFE」を続けて観客を踊らせた。サポートメンバーを見送り、1人きりでスタージに残ったハナレグミ。彼は「次の岸田くんにつなげるように弾き語りを」とつぶやくと「光と影」を情感たっぷりに歌い上げ、KOAGARI STAGEで出番を待つ岸田繁 にバトンを渡した。
岸田繁(くるり)
ステージ上でのサウンドチェックを終え、そのままCreedence Clearwater Revival「Have You Ever Seen the Rain?」のカバーで本番を開始したのは岸田繁。若干しわがれた声で思いがけない洋楽のカバーに虚を突かれた観客の心を見透かしたように、岸田は「くるり じゃない曲をやるとガッカリされる方もいらっしゃると思いますけど」と軽口を叩きつつ、目下制作中だというくるりの新曲を披露するサービス精神を見せる。「Oh My Baby」と歌うミドルバラードと、ファルセットが美しい新曲の2曲だ。感傷的なムードを引き継ぐように「言葉はさんかく こころは四角」「男の子と女の子」が披露され、「ばらの花」はテンポを落としてバラード色が強いアレンジに。そのまま「ブレーメン BREMEN」を弾き語り、終わってみれば“(1曲除いて)くるり一色”の贅沢な内容となった。
UA
「CIRCLE'25」を締めくくるヘッドライナーは、今年でデビュー30周年を迎えるUA 。「ウーアナイト♡」と題したこの日のステージでは、UAの名をシーンに知らしめた初期の楽曲から近年の代表曲まで、彼女が築き上げた30年の歴史の一片を追体験できるようなロングセットのライブが繰り広げられた。温かな歓声を浴びて登場したUAは「また会えてうれしいよ! バリ好いとーよ!」と呼びかけ、1995年6月発表のデビュー作「HORIZON」でパフォーマンスを開始。円熟味を増した圧倒的なボーカルで一気にCIRCLE STAGEの空気を支配すると、「お茶」「リズム」「数え足りない夜の足音」など新旧のダンストラックを並べてオーディエンスの体を激しく揺さぶった。「みんなの笑顔がたまらない。さて、ここで新曲を福岡初公開したいと思います」と宣言したUAは、「MOOD」「Happy」「ALUKU」とタイプの異なる新曲を続けてプレイ。今もなお進化を続ける表現者としての現在地を見せつけた。
マヒトゥ・ザ・ピーポー提供の「微熱」を経て、UAが「情熱」を歌い始めるとオーディエンスから大きなどよめきが上がる。楽曲がクライマックスに向かうにつれてUAの歌声と腕聴きのバンドメンバーが奏でる重厚なバンドサウンドの結び付きは深度を増していき、演奏が終わるや否や会場には拍手喝采が響き渡った。ライブ終盤、UAは30年の活動を振り返り「『歌を辞めよう』とは一度も思いませんでした。みんなのおかげです」「どうかこの世界がいつまでも、みんなが自由に歌を歌っていられますように。そんな祈りを込めてこの曲を歌いたいと思います。ありがとう『CIRCLE』」と呼びかけると、「プライベート サーファー」をじっくりと歌い上げてライブ本編を終えた。鳴り止まないアンコールを受けてステージに登場したUAは、ここまでライブを見守ってきたファンとのコミュニケーションを楽しんだのち福岡での再会を約束。最後は「ミルクティー」を届け、大盛況の中で「CIRCLE」のエンディングを飾った。
(撮影:ハラエリ・勝村祐紀・chiyori)
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】UAが30年の活動を凝縮したステージを展開、福岡の音楽ファンに愛を届けた「CIRCLE」2日目(写真45枚)
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