ラッパーの
2017年に本格的に活動を開始すると、同年出演したオーディション番組「ラップスタア誕生!」での決勝進出などを経て、すぐに頭角を現したTohji。フッド(地元)を持たない彼は、gummyboyらと結成したクルー
昨年5月に国内最大規模のヒップホップフェス「POP YOURS」でヘッドライナーを務めたTohjiは、ここで今回のアリーナ公演の開催を発表。新たなモードを示した楽曲「Tenkasu」を同年末にリリースし、年明けの1月には「暗黒舞踏会」と題したリスニングパーティで新曲たちを披露する。さらに開催日が迫る中、Tohjiはアリーナ公演の客演陣を発表し、活動初期の楽曲も披露すると宣言。参加者の期待を最大まで高めた状態でライブ当日を迎えた。この記事ではTohji初のアリーナ公演で何が起こったかを詳細にレポートする。
本人不在の異様な祭り
当日の会場にはTohjiの熱烈な支持者たちがこれまでにない規模で集結。アリーナは血気盛んな若者で埋め尽くされ、開演時刻の18:00が近付くとTohjiコールが巻き起こる。その声量は場内アナウンスをかき消すほどで、気押された影アナが、しどろもどろになった挙げ句、完全に沈黙してしまうという前代未聞の場面も。18:00を過ぎても、Tohjiはなかなか現れないが、若いファンたちは、BGMの音量が少しでも下がれば、声を振り絞って彼を求め続ける。
そんな本人不在の異様な祭りが30分ほど続いたあと、センターステージに鎮座していた十字架のような「t」の形のオブジェクトがじわじわと上昇。アリーナが大歓声に包まれる中、Tohjiの独白が流れ始める。漠然と大きな会場を目指していたという彼は、その意義について「ただ人数が集まればいいと思っている人も多い。違うと思う。オレはそこに漂う空気を大事にしたい。そこで何が起きるかを大事にしたい。明日からの世界が、少し違っていることを大事にしたい」と主張。Tohjiの呼びかけに応じたファンたちがその言葉を復唱する中、最新曲「Tenkasu」が始まると、ステージの地下から浮上する形で彼が姿を見せた。
神々しい世界観でアリーナを圧倒
白煙が渦巻き、何本も光の柱が立つセンターステージで、気迫みなぎるパフォーマンスを展開した真っ白な衣装のTohji。その横に彼と同じく白ずくめの
Lootaと別れ、メインステージに移動したTohjiは、自身を突然変異の怪獣になぞらえたデビュー曲「I'm a godzilla duh」を神々しい光の中で歌い、荒々しい初期曲「sugAA」を続けて披露。サンプリングしたギターのループの上で「ゲイレズバイなんでも来い みんな同じ囚われない 括りとかは関係ない」という彼のマインドを示したラインが光る。
バイブスあふれるキラーチューン連発
そこから再びセンターステージに戻ったTohjiは、トランスやアンビエントを取り入れた近年の楽曲を次々に披露。レーザーが飛び交い、スモークが噴き出す中、「ULTRA RARE」「Super Ocean Man」と爽快なレイヴチューンを連発し、観客が秘めるエネルギーを解放させた。
その後「Mall Boyz」のロゴがスクリーンに表示されると、Tohjiは相棒のgummyboyとともにクルーの軽快なナンバーを畳みかけ、gummyboyに代わって
暴れたい人は自由に暴れられるように、日本武道館などではなく、ぴあアリーナMMを初のアリーナ公演の会場に選んだと語っていたTohji。そんな彼の意図通り、アリーナ席の観客たちは、ブロックごとに競うように沸き上がってみせた。
「適当なフェスと一緒にすんなよ」
幕間映像を経て、黒衣に身を包んで再登場したTohjiは、炎が灯る祭壇のようなステージで荘厳な新曲「Sapphire Timberlake」を歌い、「聖闘士星矢」と題したダークな新曲でセンターステージへ向かう。ここで彼が披露したのは、この日2回目の「Tenkasu」だ。
楽曲の世界観を表した禍々しいVJ演出の中、観客は声を上げて盛り上がるが、「俺の音楽好きな人ってそんなもんだっけ?」と問いかけたTohjiは、すぐさま「Tenkasu」を再演。それでも「レベル1くらいかな」と不満げなTohjiは「レベル100出しに来たんじゃないの? 適当なフェスと一緒にすんなよ」と檄を飛ばし、4回目の「Tenkasu」になだれ込む。するとTohjiの足場がリフトアップし、メインステージでは爆炎が噴出。そびえ立った鉄塔の上から集団を鼓舞するTohjiの姿は、秘密結社の首領と呼ぶにふさわしく、彼を信奉するものたちを一層心酔させた。
そんな凶暴なパフォーマンスから一転して「Phenomeno」ではファンタジックな世界観を提示し、高速道路での大事故後に制作した楽曲「カモメ」ではセンチメンタルな詩情をにじませるTohji。「今日来ているパパとママに送ります」という言葉から「M78(ma FD)」を繊細に歌うと、「oh boy」「on my own way」とエモーショナルなナンバーを続けていった。
かつての仲間たちが次々に集結
ライブ終盤、ラフな赤いパーカーに着替えたTohjiは、活動初期の仲間たちを次々にアリーナに呼び込む。まずは事前に予告されていた通りwho28と
さらにTohjiが両腕を横に広げると、不穏なビートが聞こえてくる。
「結局じゃあ誰が回すの?」
「Black Hole」の余韻が残る中、口を開いたTohjiは、自分たちの居場所を作るために活動を始めたことを回想し、今回のアリーナ公演も仲間たちと一緒に作れたことが何よりうれしいと語る。活動を続ける中で「自分たちが担う」という自覚が芽生えたという彼は、自分よりも年下の世代が今後増えてくることを見据えつつ、「結局じゃあ誰が回すの? いや、俺らじゃん?」と覚悟を示し、オーディエンスの喝采を浴びる。
そして彼がgummyboyを迎えて最後に歌ったのは、自身の名を世に知らしめたMall Boyzのヒット曲「Higher」だ。「誰も見たことのない景色だけを見る 俺は子供の頃からずっと天才でいる 1人空高く上空の上で生きる 成し遂げて死ぬ 成し遂げて死ぬ」という代名詞的なフックをTohjiとファンは熱唱。無数の紙吹雪が舞う中、Tohjiは花道を歩いて去っていった。
Tohji退場後、スクリーンには本公演の映画化を伝えるテロップが映し出され、夏にはZeppツアーが開催されることも発表された。シーンを背負う覚悟を語ったTohjiは、これからどんな景色にたどり着くのか。音楽ナタリーでは今後も彼の活動を追っていく。
セットリスト
「Tohji Arena Show at Yokohama Arena Pia MM」2025年2月5日 ぴあアリーナMM
01. Tenkasu
02. Yodaka
03. Iron D**k
04. Oni
05. I'm a godzilla duh
06. sugAA
07. mAntle fuck
08. Twilight Zone
09. Oreo
10. Aglio e olio
11. ULTRA RARE
12. Super Ocean Man
13. My Life
14. mango run
15. mallin'
16. Do u remember me
17. TEENAGE VIBE
18. GOKU VIBES
19. Sapphire Timberlake
20. 聖闘士星矢
21. Tenkasu
22. Tenkasu
23. Tenkasu
24. Phenomeno
25. カモメ
26. M78(ma FD)
27. oh boy
28. on my own way
29. Cool running
30. nap
31. flu
32. Tenkasu remix
33. Black Hole
34. Higher
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】Tohjiは初のアリーナ公演で何を語り、何を成し遂げたのか?前代未聞の熱狂の中で示した“担う覚悟”(写真45枚)
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