土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.4 前編 [バックナンバー]
アイドルからヒップホップまで、オカモトレイジが選んだ10曲(前編)
鍵を握るのは“電圧”?ハマらずにいられないK-POPの魅力
2020年10月23日 17:00 46
日本だったらここまで振り切れない
土岐 次はEVERGLOWの「LA DI DA」。去年デビューしたばかりの6人組ガールズグループだったっけ。
レイジ 快進撃ですよ。それまで出してた「DUN DUN」「Adios」とかはゴリゴリのEDMでアゲアゲな曲だったんだけど、この「LA DI DA」は突然80'sレトロフューチャーな感じで来て、ここまでガッツリ振り幅出せるのはすごいなって。デュア・リパの「Future Nostalgia」みたいな80年代風の流れって、今来てるには来てるけど、日本の音楽業界だったらここまで振り切る勇気が出ないと思うんです。曲もめっちゃよくて、感動しました。デビュー盤に入ってる「Bon Bon Chocolat」もだけど、EVERGLOWは曲が本当にいいです。
土岐 私も聴いてみたんだけど、もっといろいろ聴いてみたいなと思わせられるグループでした。
レイジ 「Adios」は聴きました? サビ前のドロップの小節数の長さがエグくて衝撃だったんですよ。「……いや、長すぎだろ! ひと言でいいだろ」って思いました(笑)。
土岐 (試聴して)……本当だ!(笑) このドロップのところって1人の人が歌ってるの?
レイジ たぶんそうだと思いますよ。
土岐 めっちゃ見せ場だね。
レイジ こういう、メルボルンバウンスみたいなEDM調の曲がいくらでもある中で、アレンジを過剰にしたりしてどうにか工夫しようっていう感じが面白いんですよね。
今のヒップホップシーンはみんな仲がいい
土岐 次はオメガ・サピエンの「Ah!Ego」です。この方はラッパーかな?
レイジ そうっすね。Balming Tigerっていうグループのラッパーです。このオメガ・サピエンとかが今の韓国のシーンの最先端を走ってる子だと思いますね。日本でもトランスが流行ってるけど、この感じが今一番フレッシュなんじゃないかな。
土岐 韓国のヒップホップシーンって、メジャーとアンダーグラウンドにざっくり分かれてるんだよね?
レイジ それなんだけど、3年前にフィメールラッパーのジャッキー・ワイと対談したときに、「アンダーグラウンドは韓国にない」って断言してたんですよ。今は全部つながってるって。「SHOW ME THE MONEY」(韓国のラップバトル番組)が流行った時点で、アンダーグラウンドはなくなったって言ってました。
土岐 そうなんだ。派閥みたいなものはあるのかな?
レイジ あると思います。でもすぐに会社作っちゃおうっていうマインドなんで、みんなだいたいレーベルを自分でやってたりしますよ。スウィンスっていうラッパーはJust Musicってレーベルをやりつつ自分もそこに所属してるんですけど、それと別にIndigo Music、Wedaplugg Recordsっていうレーベルを持ってたりとか。とにかく自分でバンバン会社やっちゃうんです。超無名だった人が超お金持ちになったりするんですよ。
土岐 ヒップホップのシーンって、日本だと90年代にリトル・バード・ネイションみたいな明るい感じの人たちがいる一方で硬派な人たちもいるっていう分かれ方をしていたけど、韓国でもそういう棲み分けみたいなものはあるのかな。
レイジ 俺が知る限りは、今のシーンはみんな仲いいですね。なんならヒップホップシーンがちゃんとできあがってから10年も経ってないんですよ。オリジネーターはいるかもしれないけど、そもそもヒップホップを韓国で最初にやり始めたのがアイドルなんで。意外と90年代は、韓国音楽界の中で日本に対する憧れが強かったのかもしれないです。90年代からやってるDrunken Tigerっていうグループはしょっちゅう日本に来てたし、ダンサーもみんな日本にダンスを習いに来てたってZeebraさんに教えてもらいました。J.Y.Parkも桑田佳祐の「スキップ・ビート」を聴いて「アジア人でもこんなファンキーな曲ができるんだ」って感動したらしいですしね。
オマージュというか……
土岐 続いては3YEの「OOMM(Out of My Mind) 」。
レイジ 3YEで「サード・アイ」って読みます。このグループに関しては自分も知識はないんですけど、もう、とにかく聴いてください。完全に「bad guy」(ビリー・アイリッシュ)のパクリなんですよ。
土岐 ……ああ、特にサビの前が、これはもう(笑)。
レイジ このパクり方、すごくないですか? ただそれだけで入れたんですけど(笑)。パクり方が面白いっていうのは、K-POPを楽しむ1つの要素ではあると思うんですよ。
土岐 それでいくと次の、
レイジ ジュエルズ・サンタナ「There It Go (The Whistle Song)」のね。タイトルもですけど、リズムの感じも口笛のフレーズも、全部まんま。
土岐 「BLACKPINKでこの曲が一番好き」ってレイジくんにLINEしたら、「元ネタ知ってます?」って教えてくれて。ジュエルズ・サンタナのほうを聴いてみたら「え、ここから持ってくるの?」ってびっくり(笑)。これをBLACKPINKにやらせようと思うことがすごいよね。これ、「オマージュです」って公言してるのかな?
レイジ いや、してない。俺はもともとジュエルズ・サンタナが好きだったから普通に気付いただけなんです。でもちゃんといい曲にアップデートできていて、ダサくないんですよね。電圧高いから。
土岐 電圧のおかげ?(笑) でも、リスペクトを感じる昇華になってるよね。
レイジ (パク・)テディ(BLACKPINKのプロデューサー)は絶対に2000年代ヒップホップが好きですからね。リスペクトがある。テディはYGから1TYMっていうグループでデビューしたんですけど、自分でラップもして曲も作ってたんですよね。それから2NE1、BIGBANG、そしてBLACKPINKをプロデュースしてきて。
土岐 テディが作る曲ばっかり聴いてるような、“テディ沼”に入っちゃってる人もいるよね。
レイジ 曲が本当にいいんですもん。レーベルや事務所とかの垣根なく提供してますよね。ソンミの「Gashina」とかもそう。あれも最強の曲なんだよなあ。ジェニー(BLACKPINK)に歌わせてほしい。
土岐 (笑)。ブルピン(BLACKPINK)はもうすぐカムバだから、すごい楽しみ!(取材は9月下旬)カーディ・Bが参加してるって、すごいよね。
※全曲のプレイリストは、近日更新の後編で公開。
※記事初出時、内容に事実誤認があり本文を一部修正しました。お詫びして訂正いたします。
土岐麻子
1976年東京生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~
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オカモトレイジ(OKAMOTO'S)
1991年東京生まれ。中学校からの同級生4人で結成されたロックバンド・
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