「PERFECT DAYS」再上映、アオイヤマダらが語るヴィム・ヴェンダースとの思い出

映画「PERFECT DAYS」が12月22日に東京・TOHOシネマズ シャンテにて1回限定で再上映され、トークショーにキャストのアオイヤマダ、企画・プロデュースを手掛けた柳井康治、共同脚本・プロデュースを担った高崎卓馬が登壇した。

ヴィム・ヴェンダースが監督を務めた本作では、東京・渋谷でトイレ清掃員として働く男・平山の日々が描かれる。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で平山役の役所広司が男優賞に輝き、第96回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされた。柄本時生、中野有紗、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和らもキャストに名を連ねる。2023年12月22日に公開された。

ガールズバーで働くアヤ役で出演したヤマダ。ヴェンダースとの撮影について彼女は「『何を考えているかわからない人だな』というのが第一印象でした。でも人や自然をすごく観察していて、私が休憩中にしたしぐさをそのまま使ってくれたこともありました」と振り返る。柳井は「映画の神様がいるとしたら、こういう雰囲気なんだろうなと感じました。最初にリモートでお会いしたとき、奥様のドナータ（・ヴェンダース）さんもいらっしゃったのですが、ドナータさんは元気いっぱいで、ヴェンダースさんは静かな雰囲気でしたね」と明かした。

ヤマダは「『脚本の中の役を演じなさい』という監督もいると思うのですが、『PERFECT DAYS』はアヤについて脚本にあまり書かれていなかったんです。彼女の背景を細かく（ヴェンダースに）聞いても教えてくれなくて。私の頭の中にしかアヤのストーリーはないんだけど、余白をくれて自分自身で演じることができ、よかったです」と言及。高崎は「普通に生きている人同士って、お互いが会っていない間に何をしているか知らない。（ヴェンダースは）知らない時間がたくさんあることを尊重しようとしていますよね。“あるもの”を尊重する方だと思います」と述べる。

柳井は「驚いたのは、カンヌ国際映画祭でレッドカーペットを歩く順番や車に乗る順番までヴェンダースさんが決めたこと。最良の選択を指示してくださって、とっても細やかな繊細な方なんだなと思いました」と述懐。この言葉を受け高崎は「映画を撮るときは（役者に）任せるし流れを待つのに、コントロールする部分もあって不思議ですよね」とほほえむ。また柳井は「映画がいつ完成するのか気になって（ヴェンダースに）メールをしたら、かわいらしい感じで『うるさい』と返事がきて（笑）。『映画は壊れやすいものだから、親鳥が卵を孵化させるかのごとく大事に見守って、それでできあがるものだ』と詩的な言葉を送ってくださり、かっこいいなと思いました」とエピソードを披露した。

さらに柳井はヴェンダースを怒らせてしまったことがあったと切り出し「焼き鳥屋さんで平山の背景について聞いたら珍しく怒ってしまって。『そういうことを説明できるなら映画は撮らない。言葉で説明できるなら小説を書く』とおっしゃっていました。でもそうやって感情をあらわにする姿を見ることができ、うれしかったです。ヴェンダースに映画の話でキレられるなんて人に自慢できるなと」とジョークを飛ばす。高崎は「そのあと（ヴェンダースは）平山の背景について詩を書いてきたんです。もしかしたら、（質問に）答えられないことが悔しかったのかもしれません」と思い返した。

ヤマダは共演した役所について「“役者”と自分の人生が近い方なのかなと思うのですが、そういうところがすごく魅力的でした。自分の人生を役に近づけると言いますか」とコメント。本日のイベントに際し、役所からメッセージを受け取ったという柳井は「『来てくださった皆さんにくれぐれもお礼を伝えてください』とのことでした」と観客に共有する。ヤマダは「私もこの作品の一環でトイレ掃除を体験しました。『PERFECT DAYS』は“公共物を使う”という観点でも勉強になるし、自分の日常のルーティンを肯定してくれる作品だと思います。役所さんが演じる平山が実在する人のようで、いいですよね」と言葉を紡いだ。

高崎が「街を歩いていると、平山がいそうな気がする」と発言すると、ヤマダは「（トイレの近くだと）平山さんの気配を感じますよね。役所さん、ではなく」とうなずく。また柳井は「劇中に出てくるトイレに少しでも興味が湧いたら、実際に見に来ていただきたいです」と呼びかけイベントを締めた。「PERFECT DAYS」はBlu-ray・DVDが販売中。Prime Video（プライムビデオ）では見放題配信中だ。

映画「PERFECT DAYS」予告編