映画「
同作では、ニューヨークで仕事や育児、介護に追われて余裕のない日々を過ごすアジア人夫婦の関係が、息子の誘拐事件を発端に破綻していく様子が描かれる。日本人の夫・賢治を演じた西島は「初日を迎えて本当にうれしいです。この前、この劇場で映画を観たので不思議な気持ちです」と喜ぶ。台湾系アメリカ人の妻ジェーンに扮したグイ・ルンメイは「学校の宿題を提出したような気持ちです。皆さんがどんな感想を持ったか気になります。気に入ってくれたら周りの人にシェアしてほしいです」と笑みをこぼした。
言語の壁が1つのテーマである本作では、肉体的ではない暴力も描かれる。真利子は「大事にしたのは賢治とジェーンの関係性でした。思い合っているんだけれどすれ違ってしまう、そういった部分を大切に作りました」と回想。西島は脚本を受け取った際のことを振り返り「本能的なものや、哲学的なものを感じて、シナリオの段階から真利子さんにしか撮れない映画だと思いました」と述べ、グイ・ルンメイは「初めて読んだときからこの物語が気に入りました。2人の関係が崩壊していくのを、廃墟などのモチーフが暗示している。そういった隠喩的な表現が面白いと思ったんです。お互い愛し合っているけれど、言語の壁があってコミュニケーションが取れない中、どうやって関係を維持していくかというのが大きなテーマだと思います」と伝えた。
全編、実際にニューヨークで撮影された本作。西島は「英語の発音に意識が向きがちではあったんですが、きれいに発音することは求めていなくて、監督はうまく言えないことを喜んでいました」と思い返し、「ルンメイさんは素晴らしい俳優さん! リアルな感情を表現してくださるので、それに引っ張られて、自分の内面が充実しました」と感謝する。これを受けてグイ・ルンメイは「西島さんは私にすごく大きなエネルギーを与えてくれました。それによって演技に対する考え方も大きく変わったんです。西島さんは大きな木のような存在。私はその下で、転ぶのも恐れず遊んでいた子供のような感じでした」とほほえんだ。
本作のタイトルが、「親愛なる他人」といった意味を持つことに話が及ぶと、西島は「一番愛情を持っている人だからこそ見えなくなったり、また自分の愛情を見失ったり、身近だからこそわからない存在という意味だと僕は捉えました」と語る。グイ・ルンメイは「親子にしろ友人にしろ、心の中に秘密があると思います。どんなに仲がよくても他人であって、その距離は打ち破れない。こんなふうに言うと悲観的に聞こえますが、愛の力で両者の関係をつなぎ止めることができるのも事実。『親愛なる他人=Dear Stranger』というタイトルは、親愛にして、でもわからないという両面性を捉えていると思います」と口にした。
イベント終盤には、撮影がオフの日はどう過ごしていたか?という質問が飛ぶ場面も。西島は「かなり甘いものを食べました。ニューヨークのチーズケーキとか。Instagramにいっぱい載っています」と笑い、会場を和ませる。これを横で聞いていたグイ・ルンメイは「うらやましいです! 私は人形劇に関するすごく重要なシーンがあったので、人形劇の練習をしているか、英語の練習をしていました。ただ、この作品がきっかけで人形劇にハマったんです。ニューヨークで行われていた公演を観に行ったり、新たな扉を開いてくれました」とうれしそうに報告。続く真利子が「オフの日はなかったです。映画の準備をしていました……」と苦笑すると、西島とグイ・ルンメイはそろって頭を下げ、会場の笑いを誘った。
また本作の物語にちなみ、今まで言ってこなかった秘密はあるか?と尋ねられると、西島は「実はけん玉にハマってます」と明かす。グイ・ルンメイは「私は西島さんの秘密を披露します!」と宣言し、「西島さんは甘いものが好きなんですが、現場でもたくさん食べるんです! 机にいっぱいお菓子が置いてありましたし、引き出しの中にもお菓子を隠していたんです! なんで太らないのか不思議です」とうらやましがった。
最後にグイ・ルンメイは「この映画は、私に素晴らしい思い出と経験を与えてくれました。観客の皆さんに、この映画が素晴らしい反応を引き起こしてくれることを期待しています」と言葉に力を込める。西島は「誰かに愛情を持てば持つほど、必ずその愛情が試される瞬間が訪れると思います。試練を受けている皆さんに観ていただいて、希望というか光を感じていただけたらうれしいです」と呼びかけ、イベントの幕を引いた。
「Dear Stranger/ディア・ストレンジャー」は、全国で公開中。
LE91SR @oucali
大阪は2カ所しか上映がないし、上映回数も少ない😢 https://t.co/Xm99nrqYqF