河瀬直美の新作「たしかにあった幻」が来年公開、小児臓器移植施設で紡ぐ愛の物語

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河瀬直美の監督作「たしかにあった幻」が、第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナルコンペティション部門クロージング作品に決定。スイス現地時間8月15日にワールドプレミア上映される。国内では、ハピネットファントム・スタジオの配給により2026年2月に全国で公開される。

左からヴィッキー・クリープス、寛一郎

左からヴィッキー・クリープス、寛一郎

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河瀬直美 ©Leslie Kee

河瀬直美 ©Leslie Kee[拡大]

ロカルノ国際映画祭と河瀬の関係は長きにわたり、2000年の長編第2作「火垂」で国際批評家連盟賞を受賞。2001年には「きゃからばあ」がコンペティション部門に出品された。2012年には河瀬の過去のパーソナルドキュメンタリー5作品が上映され、さらに河瀬がプロデュースしたドキュメンタリー映画「祈 -Inori」が新鋭監督部門グランプリを受賞している。

「たしかにあった幻」場面写真

「たしかにあった幻」場面写真[拡大]

河瀬が脚本も手がけた「たしかにあった幻」は、小児臓器移植実施施設を舞台にした愛の物語。フランスからやって来たレシピエント移植コーディネーターのコリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女と関わりながら、命の尊さと向き合う。同時に、失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望が描かれる。これまで「あん」でハンセン病を抱える女性、「光」で視力を失っていく男性、「朝が来る」で特別養子縁組の夫婦を取り上げた河瀬が、本作でも人間ドラマを通じて命と愛の意味を問いかける。

主人公・コリーを演じたのは、ポール・トーマス・アンダーソン監督作「ファントム・スレッド」などで知られるヴィッキー・クリープス。コリーの恋人であり、突然失踪する迅には寛一郎が扮した。小児臓器移植に携わる実際の医療関係者たちによるディスカッションや、移植手術などのシーンはドキュメントとして撮影され、ドラマの中に盛り込まれている。

河瀬はロカルノ国際映画祭に戻って来られたことに感謝の意を表しながら、「新作に寄せたロカルノ映画祭のアーティスティックディレクターのGiona A.Nazzaroさんからのメッセージを以下に記します。『水のように、音を立てずに深く掘り下げ 沈黙を恐れず、耳を傾ける映画を作ってくれてありがとう』」とつづった。河瀬、クリープス、寛一郎によるコメント全文は以下に掲載した。

河瀬直美 コメント

この度、映画を本当に愛してやまないロカルノ国際映画祭の選考委員の皆様に
本年度のコンペ部門のクロージングフィルムに選んでいただきましたことを大変光栄に思います。
思い返せば、2000年公開の「火垂」がロカルノで受賞したことは
私にとってとても美しい忘れられない想い出です。
25年の月日を経て、またロカルノに戻って来れたことに感謝しています。

新作に寄せた
ロカルノ映画祭のアーティスティックディレクターの
Giona A.Nazzaroさんからのメッセージを以下に記します。

「水のように、音を立てずに深く掘り下げ
沈黙を恐れず、耳を傾ける映画を作ってくれてありがとう」

※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記

ヴィッキー・クリープス コメント

When I make a movie, I follow an invisible thread - one woven into the larger tapestry of dreams. This particular thread led me deep into the ancient forests of Yakushima and back into the gentle heart of childhood. I walked the delicate line between ghosts and reality, drawn by the mystery of love.

映画を作るとき、私は目に見えない1本の糸をたどります──夢という大きな織物に織り込まれていく糸です。
今回、糸は、私を屋久島の太古の森の奥深くへと導き、そして幼い頃の優しい心へと連れ戻してくれました。
幽霊と現実の間の繊細な境界線を歩きながら、私は愛という謎に引き寄せられていきました。

寛一郎 コメント

諸行無常。
何かこの作品に込められたテーマのような気がしています。
この作品は自分にとって挑戦でした。
言語、さまざまな自然での撮影、新たな人との出会いで、沢山の学びと、この現場でしか体験できない経験をさせてもらいました。
そんな作品がこうしてロカルノ国際映画祭に招待していただいた事を光栄に思います。
関わった沢山の人たちの努力が報われる気がします。
そしてこの作品が世界の人に見て頂けることに喜びを感じています。

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