映画「
同作は、カラックスがこれまでの作品への言及を多く交えながら、自身とその世界について語るもの。彼の展覧会を企画した仏パリの現代美術館ポンピドゥー・センターが「レオス・カラックス、いま君はどこにいる?(Où en êtes vous, Leos Carax?)」と問いかけたことをきっかけに生まれた。展覧会は実現しなかったが、美術館がこの質問への回答を映像で求めると、カラックスは2022年9月に死去したジャン=リュック・ゴダールにオマージュを捧げる42分の中編を制作した。
カラックスは温かい拍手に包まれながらステージに上がった。「ゴダールの死とウクライナの戦争が、作品制作の大きな動機になったのでしょうか?」と質問され、彼は「そうではないんです。この映画を作り始めたのは、そういったことが起こる前でした」と前置きをしながら、「もちろんそういったことは、この映画にも大きな影響を与えています」と語る。そして「ポンピドゥー・センターから最初に言われたのは『10分くらいの自画像的なショートフィルムを作ってくれ』でした。家で犬や娘に囲まれながら作業をしていました」と振り返った。
作中にはこれまでカラックスが手がけてきた作品のシーンがちりばめられている。「懐かしさ、もしくは発見があったか?」と編集時の心境を尋ねられると、彼は「最初は過去の作品に立ち戻るのは好きじゃないだろうなと感じていたんです。でも実際にやり始めたら、自分の映画を振り返るのが好きだと気付きました。それに私は家で映画を作るのがすごく好きだし、みんなもやったほうがいいと思う。写真、絵、音楽など表現方法はなんでもいいのですが、数年ごとに振り返って自分自身を見る、あるいは自分を取り囲む世界を見るのはすごくいいことです」と思いを伝える。
今作には、盟友
さらに「一番惹かれるのは音楽。音楽のある人生は美しいと思います。ピアノを弾いたり作曲したり、歌ったり踊ったりするのが私の夢見た人生でしたが、それはできない。けれども、映画を作ることが自分にとっての作曲のような感覚があるんです」とコメント。「願わくば、エディティング(編集)をすることで音楽を作れたらいいな。25歳の頃からずっと同じ編集者を使っていて、編集をしているときはいつもそばにいたのですが、時に自分が作曲をしているような気分になれました。もし私が映画を作れなくなったら、編集者になってもいいかな」とやわらかな表情で語った。
「IT'S NOT ME イッツ・ノット・ミー」は、4月26日より東京・ユーロスペースほか全国でロードショー。
INOUE Haruo Filmmaker @HUGMACH
日本人はカラックスに甘く関わりすぎ、もっと孤独にしないとこの偉人の傑作は生まれない。 https://t.co/0C9QnpGYV6