映画「
本作は、カラックスの展覧会を企画した仏パリの現代美術館ポンピドゥー・センターが「レオス・カラックス、いま君はどこにいる?(Où en êtes vous, Leos Carax?)」と問いかけたことをきっかけに生まれたもの。展覧会は実現せず、美術館がこの質問への回答を映像で求めると、カラックスは2022年9月に死去したジャン=リュック・ゴダールにオマージュを捧げる42分の中編を作り上げた。
これまでの作品への言及を多く交えながら、カラックスが自分自身とその世界について語る同作。まず観客から「日本人についての印象を100%正直に教えていただきたいです」と聞かれたカラックスは「世界一奇妙な人々ですね。エキゾチックで、わかりづらい国です」と率直な思いを口にする。またオムニバス映画「TOKYO!」の1編を撮影した際を振り返り「招かれて撮影したのですが、東京で撮影することが全然許されませんでした。プロデューサーはいつも警察に呼ばれて説明をしていて、非常に難しい経験でした」とも語った。
編集にまつわる質問には「今回、初めて自分1人だけで編集を行いました。基本的にこれはホームムービーだと思っています。夜にアイデアやイメージが浮かび、朝に編集や録音を行いました」と答え「編集を行っている最中に、ゴダールが死を決意しました。私を含め多くの人にとって重要な存在でしたから、この映画にも非常に大きな影響を与えました」と述懐。また昨日、小津安二郎の墓参りをしてタバコを供えたエピソードも伝えた。
「TOKYO!」の1編で演じた怪人メルド役で今作に登場するドニ・ラヴァンにも触れ、「ドニも私もメルドが大好き。ドニは隣近所に住んでいて、ばったり会うこともあります。先ほど言った通りホームムービーなので、お隣さんも招いて犬も一緒に撮ったんです」と説明する。
また「監督が目を閉じて考え事をするとき、これまで観てきた映像、自身の体験、あるいは想像、どれが一番頭に浮かぶでしょうか?」という質問も。カラックスは「私は不眠症なのであまり目を閉じません」と冗談を交えつつ「ある夢を見たことがあって、それをよく覚えています。だからこの映画を作ったようなものなんです。もともと美術館から『10分くらいのセルフポートレイトのようなものを作ってくれ』と言われて、企画は始まりました。画家は鏡を見ながら自画像を描きますよね。私は夢の中で、鏡の前に立っていたんです。でも目を閉じている。なのに自分が見えるのはなぜだかわからないと思った。それで目を閉じて、自分を後ろから見た自画像のようなものを撮ろうと考えたんです。ただ、過去を振り返るノスタルジックなものではなく、私が怒っているということを出したかった。昔のことを考えるより、育って成長していくものを見るほうが私は好きですね」と事の始まりを明かした。
「IT'S NOT ME イッツ・ノット・ミー」は、4月26日より東京・ユーロスペースほか全国でロードショー。「横浜フランス映画祭2025」は神奈川・みなとみらい21地区を中心に明日3月23日まで開催される。
玉置泰紀 エリアLOVE Walker総編集長 @tamatama2
【イベントレポート】レオス・カラックスが来日、「IT'S NOT ME」はある夢を発端にしたセルフポートレイト https://t.co/V9Ek2TMenn