映画「
神戸を舞台とする本作では、1995年に起きた阪神・淡路大震災の翌月に長田区で生まれた在日コリアンの女性・金子灯の成長が描かれる。双極性障害を抱えながらも自分の心と向き合い、希望を見出していく灯を富田が演じ、灯の父・一雄に甲本、母・栄美子に麻生、姉・美悠に伊藤、弟・滉一に青木が扮した。
富田は「私は(1月17日の公開)初日を神戸で迎えたんですけど、この作品のスピード感で優しくゆっくりと歩き出したなとほっとしています」と心境を述べる。金子家を演じた5人のキャストが集まるのは撮影以来とのことで、安達は「お父ちゃんは(役の設定で)いつも孤独だったと思うので、5人が今この場で皆さんの前に立てていて感無量です」とほほえんだ。
父の一雄は、震災で仕事を失ったことをきっかけに、家族とたびたび衝突するようになる。甲本は「脚本を読んだとき『ひどいな、大丈夫かな』と思うぐらい、リアルすぎたんです。ただ、僕たちのやるべきことは“映画の中のリアル”。『子供たちのことを誰よりも愛している男を演じよう』という1点だけ念頭に置いていました」と述懐。これに対して富田は「伝わってたよ」と感極まりながら、「(先に撮影を終えた甲本と)会ってお別れするべきか悩んでいたんですけど、一言『お父さん、ありがとう』と言いに行ったら、甲本さんが『映画作りを楽しめよ』と言って東京に帰っていかれた。その姿が今も心に残っています」と感謝を伝えた。
結婚を見据え、率先して帰化の手続きを進めようとする姉・美悠については、伊藤が「自立心が高くて、やりたいことがはっきりしている。ただどこかで孤独も感じていて、灯の感情を吐き出せる性格との対比が生々しかった」と思いをめぐらせる。「自分も末っ子だった」と自身の役柄との共通点を口にした青木は、「心の中で思っていることはあっても、とりあえず話を聞くことこそが、今回の映画で自分がやるべきことだと思っていました」と振り返った。
印象的なシーンを問われた伊藤は、家族でのリビングのシーンを挙げ「演じるというより『そこにいる』という感覚になったのは初めてでした」と感慨深げに語る。富田は「リアルな神戸っ子だなと感じたのは、姉との待ち合わせのシーン。(職場や学校から)帰られる方も多い時間帯に、撮影していることは言わず、バレることなく過ぎていった時間でした。しかも青木柚さん、その撮影のときに私服姿で横を通ってたみたい」と裏話も披露。麻生は「一番最初に撮った、灯と一緒にケーキを買いに行くシーン。それはそれは(富田が)かわいくて、輝いていて、自慢の娘でした」と笑顔で話した。
最後に安達は「富田さん、お礼を言わせてください。本当に素晴らしかったです。最高でした。途中でしんどいシーンもいっぱいありましたが、くじけることなく灯として生きてくださったので、あなたなしではこの作品はあり得ませんでした」と真摯に言葉を紡ぐ。富田は「この作品が心のよりどころになる方がきっとこの世界にはぽつりぽつりといらっしゃるんじゃないかなと思います。そういう方が今日も生きているということを心の片隅に置いていただけたら、優しい世界になるのではないかと願っております」と涙ながらに伝え、イベントの幕を引いた。
「港に灯がともる」は全国で順次公開中。
映画「港に灯がともる」予告編
関連記事
富田望生の映画作品
リンク
三輪記子 @bi_miwa
【イベントレポート】「港に灯がともる」監督の言葉に富田望生が涙「あなたなしではあり得ませんでした」(写真18枚) https://t.co/gPb8lu8EXq