日仏合作アニメーション映画「
この日、久野の母校である多摩美術大学の学生たちへ向けた上映会が行われた。久野の恩師でもあるグラフィックデザイン学科の教授・野村辰寿から、制作のきっかけを尋ねられた山下は「この企画はシンエイ動画の近藤慶一プロデューサーによるもので、彼は昔、僕の作品の助監督で、ほかにも久野監督がロトスコープディレクターを務めた『花とアリス殺人事件』でも助監督をしていました。そんな彼がシンエイ動画に入って最初に立ち上げた企画が『化け猫あんずちゃん』でした。彼が久野さんと僕を引き合わせたっていうのが始まりです」と振り返る。
実際に森山が演じた実写の映像とアニメの比較動画を上映すると、山下は「動きとかタイミングとかは実写のタイミングなのですが、やっぱりあんずちゃんはフォルムも変わってますし、久野さんのほうでもう一度演出をやり直してくれました」と述懐。久野は「あんずちゃんのようなデフォルメの強いキャラクターをどのように表現するかというのをかなり探った気がします。パイロット版のときはもうちょっとリアルな感じで、あんずちゃんの動きももう少し細かくしていたのですが、細かすぎると絵の奥にある実写を意識させすぎてしまう、映画では潔く止めるところを作ったりしました。動きの緩急は最後まで探っていたところでもあります」と、そのこだわりを解説した。
8年前にスタートしていた「化け猫あんずちゃん」の企画。久野は「私は映画にすごく憧れがあったので、まずそれが作れたのがうれしいです。ひょんなことから日仏合作となったあんずちゃんも日本のアニメの作り方を踏襲しているのですが、自分なりの表現方法を入れて、少し新しく見慣れないものが作れたのかなと思います」と述べつつ、「山下さんと組んだおかげで、生のお芝居の大切さに気付きました。アニメーションは基本的に頭の中で描くものですが、そこだけになってしまうと視野が狭くなってしまうときがあります。すごく広がりのある作品にできました」と手応えを明かした。
最後には、2人からアーティストの卵である学生たちへメッセージ。久野は「あんずちゃんは作るのに時間がかかった作品です。皆さんも作品をなかなか世に出せなくて焦る気持ちもあると思うのですが、時間をかけて見せたい人たちに伝わるように作るということも大切だと思うので、自分の表現を突き詰めて自分がやりたいことを本当に見せられるようになってくれたらいいなと思います」、山下は「まず学生時代はとにかく自分の恥ずかしいものを含んだ大きな名刺を1つ作ってほしいなと思います。そうしていくと、どんどん面白い人に出会えるようになって、そうやって僕も久野さんと出会って、まさか自分がアニメを作るようになるとは思いませんでした。過去に作ってきたものが今につながったり、この先につながったりするので、1つひとつ手を抜かずにやっていくと面白い人に出会えるので、がんばっていってほしいなと思います」とエールを送った。
「化け猫あんずちゃん」は7月19日より全国ロードショー。
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「化け猫あんずちゃん」久野遥子と山下敦弘が美大生にエール「自分の表現を突き詰めて」: 日仏合作アニメーション映画「化け猫あんずちゃん」のスペシャルトークイベントが6月29日に東京・多摩美術大学で行われ、共同監督を務めた久野遥子と山下敦弘が登壇した。 https://t.co/40HyAxVGIt