フランスの映画監督
本作は、両親の事故によって再会した不仲な姉弟を描く物語。有名な舞台女優で演出家の夫との間に息子がいる姉アリスをマリオン・コティヤール、詩人であり山中で妻と暮らす弟ルイを
これまでも映画を通して、ひと筋縄ではいかない家族の在り方を描いてきたデプレシャン。本作の日本公開にあたり、「映画は人生を修復する」とコメントを寄せていた。その言葉についてデプレシャンは「確かに人生では修復できないこともあります。ただ、フィクションの力で修復できることはあります」と意図に触れ、「実生活での私たちは不器用ですが、映画を観ることが一部分を修復する助けになると信じています。それはイリュージョンかもしれないし、失敗を繰り返す人生が続くかもしれない。でも1つ言えるのは、映画は突破口のようなものを提示してくれるということ。私の好きな哲学者スタンリー・カヴェルが『映画は私たち人間をよりよくしてくれる』と言っていましたが、私もそう思います。映画は人生を修復する力を持っているのです」と真摯に語った。
また「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」と2010年公開作「クリスマス・ストーリー」に出てくる家族構成の類似性について質問が挙がると、デプレシャンはストーリーテリングの変化をこう語る。「振り返ると『クリスマス・ストーリー」は、脱線とエピソードの積み重ねによるストーリー展開でした。今回は1つのテーマに集中して、姉から弟に対する憎しみ、怒り、恐怖だけを扱おうと考えました。1つのゴールに向けて物語が進んでいく構成になっています」。脚本に関しては「非常に綿密」だと述べ、その理由を「そのほうが俳優たちがより演じやすく、より自由になれるのでは」と説明する。また自身のメソッドとして、脚本の読み合わせは俳優と1対1で行うと明かし、「メルヴィルは脚本に書かれたものをコンマ1秒までリスペクトするタイプ。長いセリフであってもまったく変えません。マリオンは少し違って、『どうしてアリスは弟を憎んでいるのか?』という問いかけから始まり、演じる人物の心を探究する作業を行います」とメインキャスト2人のスタイルを比較した。
デプレシャンが来日したのは2015年の「あの頃エッフェル塔の下で」公開以来、実に8年ぶり。1992年に長編デビュー作「魂を救え!」がぴあフィルムフェスティバルで上映されたことをきっかけに、日本にはたびたび訪れており、来日時の思い出の1つとして
会見の最後には、サプライズでプポーからのビデオメッセージが上映された。「実は僕とアルノーが友情を結んだのは日本だったのです」と明かし、2人で飲んだエピソードを懐古するプポーに、デプレシャンは「昨日のことのように思い出せます。あんなに酔っ払った人間を見たのは初めて」と笑みを浮かべた。
「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」は本日9月15日より東京のBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次公開。東京・日仏学院ではデプレシャンのレトロスペクティブが行われている。
なお9月15日には、東京・国立映画アーカイブで実施中の第45回ぴあフィルムフェスティバルにて、特別プログラムとしてデプレシャンと梶芽衣子によるトークイベント「イカすぜ!70~80年代 アルノー・デプレシャン監督『女囚701号・さそり』を語る」が開催される。鑑賞券はチケットぴあで販売中だ。
磯田勉 @isopie_
アルノー・デプレシャン、8年ぶり来日で青山真治をしのぶ「常に驚かされた」
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