高畑充希と清水美依紗が愛たっぷりに語る、映画「ウィキッド ふたりの魔女」で繊細に描かれた魔女たちの“友情”

シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデが共演した映画「ウィキッド ふたりの魔女」が3月7日に全国で公開される。ミュージカル劇「ウィキッド」を原作にした本作では、魔法と幻想の国“オズ”にあるシズ大学で出会った、のちの“悪い魔女”エルファバとのちの“善い魔女”グリンダの秘話が描かれる。エリヴォがエルファバ、グランデがグリンダを演じた。

「クレイジー・リッチ!」のジョン・M・チュウが監督を務めた「ウィキッド ふたりの魔女」は、第97回アカデミー賞®で作品賞をはじめとする10部門にノミネート。そして衣装デザイン賞と美術賞の栄光に輝き、さらに大きな注目を浴びている。

このたび映画ナタリーでは、日本語吹替版でエルファバとグリンダに声を当てた高畑充希と清水美依紗にインタビューを実施。「オーディションを受けられただけで満足」と語るほど作品愛あふれるふたりに、エルファバとグリンダの魅力や、歌唱収録時のエピソードを聞いた。

取材・文 / 渡邉ひかる撮影 / 平岩享

映画「ウィキッド ふたりの魔女」吹替版本予告 公開中

オーディションで歌えただけで大満足(高畑)

──お二人とも、役を得るにあたってオーディションを受けられたそうですね。

高畑充希 そうなんです。私はもう、オーディションを受けられたこと自体がうれしくて。きっと(吹替版キャストは)決まっちゃっているんだろうな……と思っていたんですが、オーディションがあると聞いて「受けてみたいです!」と手を挙げました。

高畑充希

高畑充希

清水美依紗 私もまさかオーディションを受けられるとは思っていませんでした。なので、オーディションがあると聞いたときは私もすぐに飛び付いちゃいましたね。これはチャンスだ!という気持ちで臨みました。

──オーディションではどんなことをなさったのでしょう?

高畑 セリフと歌唱の審査がありました。エルファバがグリンダと出会うシーンのセリフを言って、「ディファイング・グラヴィティ」を歌って。「ディファイング・グラヴィティ」は作品を代表する1曲でもありますから、胸がいっぱいになってしまいましたね。なかなかない機会をいただけてすごくうれしかったですし、歌えただけで大満足(笑)。それに、オーディションと言っても立ち会っていらした方々が審査するのではなく、収録したものを本国に送る形式だったんです。おかげでオーディションの緊張が薄かったのかもしれませんし、正直なところ手応えもよくわかりませんでした。

──それにしても、いきなり「ディファイング・グラヴィティ」なんですね(笑)。

高畑 一番ハードな曲で(笑)。それを歌えないことには……ということだと思います。

清水 グリンダの審査曲は「ノー・ワン・モーンズ・ザ・ウィキッド」だったんですよ。

高畑 そっちだったの!?

清水 そうなんです(笑)。グリンダと言えば、有名なのは「ポピュラー」じゃないですか。なので、てっきり「ポピュラー」だと思い込んでいたら、まさかの「ノー・ワン・モーンズ・ザ・ウィキッド」で。シャボン玉の中にいるグリンダが空から舞い降りてくる初登場シーンの曲で、すごく高音のメロディなんですが、こういったオペラっぽい曲も歌いこなせる声を求められているんだろうなと感じました。どうやって歌うのがいいんだろう?とすごく考えましたね。吹替のオーディション自体は過去にもいくつか受けてきたので、今回もダメかなあ、なんてちょっとネガティブになったりもして。それこそ高畑さんと一緒で、受けられたことに満足していましたし。

高畑 そうなるよね(笑)。

清水 はい(笑)。なので、受けられたことがすごいんだ!と自分に言い聞かせつつ、期待しすぎず、結果を待っていました。

清水美依紗

清水美依紗

グリンダは弱さをちゃんと受け入れられる強さを持っている(清水)

──おふたりとも合格してよかったです! 演じられたエルファバとグリンダに対しては、どんな印象を持ちましたか?

高畑 これまでに何度も舞台版を拝見してきましたが、エルファバに対してはパワフルなイメージが強かったです。彼女が歌う曲もパワフルなものが多く、とにかく力強い印象。でも、この映画はそんなエルファバの心の揺れを、寄りのアングルも交えながら繊細に追っているんですよね。なので、今まで思っていたエルファバとは違い、すごくかわいらしくて弱さもある。より身近に感じましたし、可憐な印象を受けました。私にとっては、それがちょっと意外なことでもありましたね。

シンシア・エリヴォ演じるエルファバ

シンシア・エリヴォ演じるエルファバ

清水 私もブロードウェイで観劇したときは、力強いエルファバとキャピキャピしたグリンダという印象でした。でも、今回のグリンダは信念を強く持っている。複雑な性格なんです。外から見たらすごく愛らしくて、思ったことをポンポン言っちゃうから気付かないうちに人を傷付けちゃうけど、それらは彼女なりに信じた末に出た言葉でもあって。だから、私が今まで抱いていたイメージとは違い、優しくて強い。自分の弱さをちゃんと受け入れられる強さを持っている人だなと感じました。

アリアナ・グランデ演じるグリンダ

アリアナ・グランデ演じるグリンダ

──そんなエルファバとグリンダの関係性が面白いですね。小説「オズの魔法使い」からもわかるように、ふたりは“悪い魔女”“善い魔女”としていずれ正反対の道を進むことになりますが、この映画で描かれる彼女たちの間には友情が存在し始めます。

高畑 “友情”と認めすぎると離れるのがしんどいから、“友情未満”と言い聞かせているふたり……という印象でした。お互いのことしか見えていないような盲目的な友情ではなく、彼女たちはそれぞれが進むべき道を理解している。この映画ではふたりがなぜ別の運命をたどることになったのかが明かされていきますが、最初は仲が悪かったところから仲がちょっと良くなって、でもそれぞれ別れてやっていきます!といった記号的な描かれ方ではないんですよね。エルファバとグリンダの関係が、すごく繊細に描かれているなと思いました。

「ウィキッド ふたりの魔女」場面写真

「ウィキッド ふたりの魔女」場面写真

清水 繊細に描かれているからこそ、エルファバ目線とグリンダ目線で見方が変わるなとも思いました。グリンダからすると、今までは自分の発言に対してみんなが「イエス!」と答えていたのに、エルファバからは「ノー!」と言われる。グリンダにとっては、それが初めての経験だったと思うんです。だからこそ、エルファバの人柄に触れた瞬間、グリンダの感情がどんどんどんどん動いていく。それを“友情”と呼ぶこともできるけど、もしかしたら友情以上のものもある気がしました。