「早春」「イレブン・ミニッツ」で知られる
ロベール・ブレッソンが1匹のロバと少女の数奇な運命を描いた1966年の「バルタザールどこへ行く」に着想を得て制作された本作。心優しい女性カサンドラとともにサーカスで幸せに暮らしていたロバのEOが、サーカスを離れることを余儀なくされ、ポーランドからイタリアへと旅に出るさまがつづられる。
「何よりも感情に訴える映画を作りたいと思っていました。これまで撮ったどの作品よりも感情にもとづいた物語を撮りたかったのです」と、本作に込めた思いを語るスコリモフスキ。EOは予期せぬ放浪の旅の最中で、善人にも悪人にも出会い、さまざまな形で運命を翻弄されていく。
それでもEOが無邪気さ、純粋さを失わない点について、スコリモフスキは「シニカルで世知辛い私たちの世界では、純粋さは世間知らずの証と受け止められ、弱さであると見なされることもあります。しかし私は今でも、自分の中に残った純粋さを育むよう努めています」と述懐。さらに「人間と自然、人間と動物の関係性を考え直す必要があるというメッセージも込められています。動物に対しては毛皮や消費のための産業的な飼育ではなく、愛をもってポジティブな関係を育むのが真っ当だと考えていますし、そうなればと願っています」と続ける。
スコリモフスキはEO役のロバを探すにあたり、イタリアのサルディーニャ種に惹かれ、目の周りに白い斑点のある灰色の個体をキャスティングしたいと考えていたそう。そして実際の出会いを「ワルシャワ近郊の厩舎に行き、写真の中でもっとも魅了されたロバに会いに行きました。彼の名前はタコでした。会った瞬間、彼が私の映画の主役になると確信したのです」と振り返る。
撮影現場におけるタコとのコミュニケーションおよび演出については「この作品の場合、説得のための唯一の方法は優しさを示すことでした。つまり彼の耳に言葉をささやき友好的に愛撫することです。そしてロバは“演技”が何であるかを知りません。彼らは何かのフリをすることができず、純粋に彼ら自身であり続けます。そして決してナルシシズムを見せません。自分の役柄に想定された意図に従って仕事をし、監督のビジョンに口を挟みません。彼らはとても優れた俳優なのです」と話した。
第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞と作曲賞を受賞した「EO イーオー」は、5月5日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。
イエジー・スコリモフスキの映画作品
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タニさん @t_bomber79
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