「バングラデシュ映画に新『風』が吹く」と題されたシンポジウムが本日3月12日に第18回大阪アジアン映画祭内で開催。大阪・中之島美術館で行われたライブビューイングに「風」の監督メジバウル・ラフマン・シュモンがオンラインで参加した。
「風」は、バングラデシュ南東部のコックスバザールから出港する漁船を舞台にした物語。女人禁制の船に突如として現れた、美しくも反抗的な女性が漁師たちを翻弄するさまが描かれる。
メジバウル・ラフマン・シュモンは「この映画の背景から説明するとバングラデシュは1947年にイギリスの植民地であった当時のインドから分離し、その後1971年まで東パキスタンでした。そして1971年に東パキスタンから独立し、現在まで約50年歩んできたんです。『風』はバングラデシュ映画でありながら、南アジアの影響を受けているという特徴があります。ベースとなっているのは、南アジアで広く知られるようなおとぎ話です」と説明する。また南アジアの女性は低い地位に見られがちであることに触れつつ「映画のテーマの1つは女性です。恋愛的な側面が映画の中心にならないよう、女性の強さをどのように描くかを工夫しました」と言い、「伝統的なものと現代的なものを織り混ぜつつ、そこに女性の力、自然の力が入り混じった構成にしています」と続けた。そして「主人公の1人である女性は、定住をしない移住民です。船で移住生活をするコミュニティはかつて世界中にあり、珍しい存在ではありませんでした。しかし、今はどこの社会からもいなくなりつつあります。『風』の原題には“風”という意味と“失われていくもの”という意味があります。時代の中で、存在を忘れられていくものに目を向けてほしいというメッセージも込めているんです」と語る。
本作は予告編とテーマソングが公開前から注目を集め、バングラデシュだけでなく、北米やヨーロッパでもヒットした。メジバウル・ラフマン・シュモンは「『風』はバングラデシュの映画として初めてインド全国で公開された映画です。またアメリカの劇場100館で上映されました。これもバングラデシュの映画として初めてのことです。この映画を作るにあたって、恋愛映画や南アジアでよく見られるようなわかりやすい商業映画ではなく、今までにない作品を作りたいという願いがありました。海、漁師といったバングラデシュでは誰もが親近感を覚えるものを素材にしつつ、新しい物語を生み出したところが魅力です。社会派でもなく、単なる恋愛映画でもない、バングラデシュで観たことがない作品だというところが観客に受けたのではないかと思っているんです」と分析した。
最後にメジバウル・ラフマン・シュモンは「『風』を映画祭で上映していただきありがとうございます。バングラデシュから日本に映画を届けることができてうれしいです。アートは言葉や国の壁を超える力を持っていると思います」と伝え、イベントの幕を引いた。
第18回大阪アジアン映画祭は3月19日まで、大阪・ABCホール、シネ・リーブル梅田、梅田ブルク7、大阪中之島美術館、国立国際美術館で開催中。
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