東出昌大が涙「信念を焼き付けた」、「Winny」金子勇さんの実姉が手紙寄せる

「Winny」の先行上映会舞台挨拶が本日2月14日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、キャストの東出昌大、三浦貴大、渡辺いっけい、吹越満、監督の松本優作が登壇した。

ファイル共有ソフト・Winnyにまつわる実話をもとにした本作。ソフトの開発者であり、著作権法違反幇助の容疑で逮捕された金子勇を東出、サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光を三浦、金子逮捕の陣頭指揮を執る北村文哉を渡辺、壇らの熱い思いに共鳴して手助けする敏腕弁護士・秋田真志を吹越が演じた。

東出は「自分の無知を恥じるのですが、Winny事件と金子勇さんのことをオファーを受けるまで知らなかったんです」と明かす。MCから役作りについて問われると、「事件の詳細はもちろん、金子勇さんについての取材を通して役作りをしていきました。こんな天才がいたのかと。純真無垢でプログラム愛にあふれていた人が、7年の裁判の中に埋もれてしまったのかと。それを再発掘し、金子勇さんを知ってもらいたい一心でお芝居をしました」と述懐した。

三浦は、リアリティを追求した法廷のシーンに触れる。撮影は“模擬裁判”を経て行われたようで、三浦は「実際の裁判記録に沿って、壇先生たちが目の前で再現してくださった。それを丸々コピーしてやろうという気持ちで撮影に臨みましたね」と振り返る。松本は「本物の裁判を見ていただきたいと思っていた。それを了承してくださった壇さんをはじめとする弁護士の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。ものすごく作品に生かすことができました」とコメントした。

自身の役どころを「ヒール」と表現した渡辺は、東出との共演について「あのときの東出くんは憑依というか、役に入り込んでいた。家宅捜索に行くシーンの東出くん演じる金子さんの無防備さを見て、演じながら心の中でいたたまれない気持ちになりました。すべてのシーンが忘れられないですね」と述べる。吹越は「秋田先生の著書である『実践！刑事証人尋問技術 part2』という本を壇先生が推薦してくれた。なんでパート2なんだろうと思いながら（笑）、役作りのために勉強させていただきました」と言及した。

イベントでは、本作のモデルとなった金子勇さんの実姉より、キャスト陣へサプライズで直筆メッセージが送られた。東出は「あとで直接お礼を伝えたいと思います」と涙し、「この裁判で弁護をなさった先生方が『この裁判には勝者はいなかった』とおっしゃっていました。ただ、皆さんはその7年を不毛だと思っていない。未来のために戦っていたんだと。僕たちはその7年の熱量、信念をこの映画に焼き付けています」とつづった。金子勇さんの実姉が寄せた手紙全文は以下の通りだ。

「Winny」は3月10日より全国ロードショー。

金子勇さんの実姉が寄せた手紙全文

本日は「Winny」映画完成披露上映会という貴重な機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

弟は2013年7月6日に亡くなりました。今年の7月で弟が亡くなってから10年になります。そして、2004年5月に逮捕された日から約20年近くの月日が流れようとしています。
弟は大変穏やかな性格で、小さい頃から兄弟喧嘩はほとんどなく、仲良く過ごしてきました。私が弟と最後に話をしたのは、弟の42歳の誕生日でした。その日は、私は海外駐在のフライトのため成田空港近くのホテルにいました。
電話で、弟に「いってきます。次はブラジルで待っているね」と会話をしたのを覚えています。しかし、次に会えたのは、病院で変わり果てた姿の弟でした。

東出昌大へ

弟とブラジルで再会することはできませんでしたが、映画の中の東出さんは弟が生き返ったようで、思わず涙が出てしまいました。そして、お墓詣りをしてくださり、お墓をぴかぴかに綺麗に掃除してくださったこと、一生忘れません。本当にありがとうございました。

三浦貴大へ

壇先生の役を三浦さんがされると聞いた時は、イケメンすぎるのでは？、、と思っていました。「あ、壇先生、ごめんなさい。。」でも、映画の中の三浦さんは、すっかり雰囲気が壇先生でした。すごい演技力だと思いました。

吹越満へ

裁判で一番の分岐点となった法廷の重要なシーンを目の前で拝見させていただき、セリフの抑揚や目線での表現が素晴らしく、身震いがするほど感動しました。

渡辺いっけいへ

吹越さんとの法廷でのシーンで、するどい眼光や声の抑揚の変化だけで感情の揺れを表現されていて、本当に素晴らしい演技でした。あの名シーンを拝見できたこと、本当に嬉しく思いました。

松本優作へ

松本監督は、丁寧に取材を重ねて映画を作りあげ、絶妙なバランス感覚と包容力で、若い監督さんではありますが、お兄さんのような存在でした。色々と甘えさせていただき、本当にありがとうございました。

映画製作関係者へ

この映画はたくさんのスタッフさんのおかげで製作されています。私の役の吉田羊さんと東出さんとのスナップ写真が、1秒くらい映っていますが、その1秒のための準備、かなり大変だったと思います。10着以上の衣装を用意して頂き、その中から1着を選び、猛暑の中、分厚いコートの衣装で撮影しています。役者さん始め、衣装さん、メークさん、小道具さん、音声さん、カメラマンさん、広報さん、他にもたくさんのスタッフさんのおかげで映画ができています。本当にありがとうございました。

最後にはなりますが、弟にはもう会えませんが、弟を少しでも思い出してくださり、語り継がれていくことで、皆さまの心の中に弟はまだ「生きている」と感じております。
弟の生きざまが、「ものづくり」をする方、IT技術者や研究者、新しいことへ挑戦する人たちへ、少しでも勇気となっていただければと願っております。本日は、このような機会をいただき本当にありがとうございました。