「テロではなく個人的決起」山上容疑者モデルの「REVOLUTION+1」監督が会見

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安倍晋三元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者をモデルにした映画「REVOLUTION+1」の記者会見が12月13日に東京・日本外国特派員協会で開催。監督の足立正生、プロデューサーの藤原恵美子、主演を務めたタモト清嵐が出席した。

足立正生

足立正生

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かつて若松孝二の独立プロダクションに加わり、性と革命を主題にした前衛的なピンク映画の脚本を量産した足立。1971年にはパレスチナ解放人民戦線のゲリラ隊と共闘しつつ、彼らの日常に迫ったドキュメンタリー「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」を発表した。1974年には日本赤軍に合流し、国際指名手配。レバノンで逮捕抑留されたのち、2000年に刑期満了のうえ、身柄を日本へ強制送還された経歴を持つ。日本では35年ぶりの監督作として「幽閉者(テロリスト)」を2007年に公開。2016年には復帰後第2作となる「断食芸人」を発表した。

「REVOLUTION+1」メインビジュアル

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「REVOLUTION+1」では山上容疑者をモデルにした主人公・川上が手製の銃で凶行に至るまでの人生を獄中からの回想形式で描く。足立は7月8日の銃撃事件直後から井上淳一とともに3日で脚本を書き上げ、8月末に撮影を開始。8日間の撮影を経て編集作業に入り、9月27日には東京・日本武道館で行われた安倍元首相の国葬に合わせ、制作途中である50分尺の緊急特別版の上映を行った。このたび75分となった完成版が、12月24日より神奈川のシネマ・ジャック&ベティ、大阪・第七藝術劇場、愛知・シネマスコーレで先行上映される。

「REVOLUTION+1」

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まず「本作を作るべきと思った理由、なぜ今必要なのか」と制作の動機を問われた足立は第一声で「作りたいから作った」と明言。続けて「映画作りはぜいたくを言ったらきりがない。最低限の製作規模で、最低限のスタッフ、俳優さんがいれば絶対に作ろうと思っていた。その動機が重くて、みんなには大変な思いをさせたとは思っています」と話す。事前の取材や調査過程について質問が飛ぶと「非常に事件性が高いから、それに関わるニュースを集めながら勉強はしました。しかし私は、事件を起こした彼にまつわることを、いわゆるドキュメンタリーで撮るんではなくて、むしろ事件の第一報を聞いてからの私の思い、彼に対する評価そのものを映画にしたかった」と説明。山上容疑者の生い立ちや犯行動機に関する数々の報道、本人と思われるSNSの投稿などは認識していたそうだが「彼自身による予告や一般的なニュースなどから深入りして推察するのではなく、彼が『やりたいことをやった』ということだけを軸に作ろうと思った。改めて特別なリサーチはしていません」と話す。

統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信した母親の多額の献金による一家崩壊を背景に、山上容疑者は安倍元首相が同団体と近しい関係にあるとして犯行に至った。結果的に銃撃事件が契機となり、実際に統一協会と政界のつながりがさまざまな形で明るみになっている現状については「彼は自分が起こした行動の結果、その先のことは考えたこともないと言ってるんですね。僕自身は山上に密着した側から日本の社会、政治状況、統一教会の問題を捉えた。あまり驚きはないものの、なるほど、なるようになっているなと思います」と認識を明かす。

「REVOLUTION+1」

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また安倍元首相やアメリカのドナルド・トランプ元大統領の名前に触れ「政治が辻褄を合わせる時代は終わって、昔で言う陰謀や陰での策動がある残念な時代ではあるけれど、この2人がある意味いろんな真実の姿をあぶり出すだろうぐらいに期待していた。実際には僕らが想像した以上に、政治の底が抜けてしまっている。統一教会と自民党の癒着が岸信介の時代から始まっていたことをほっかむりして現在まで至っていた」と説きつつ、山上容疑者の行動について「僕は決起と呼んでいる。テロではなく個人的決起。この決起が招いたものは、今、十分に社会に反映されて進行しているのではないか。世の中の底が抜けた無様な荒廃した姿をどんどん明らかにしていっているのではないか、と評価しています」と話した。

「REVOLUTION+1」記者会見の様子。左から藤原恵美子、足立正生、タモト清嵐。

「REVOLUTION+1」記者会見の様子。左から藤原恵美子、足立正生、タモト清嵐。[拡大]

会見の最後には実験的なアナーキスト、自主映画制作者、革命家、政治犯などの中から「墓石に刻むなら」と自身にふさわしい肩書を問われる場面も。足立は「その質問は狂ってる」と率直に述べつつ「私はもともと50年以上前から、映画をやることは革命だと思っています。映画を作ることも、カメラを持つことも、鉄砲を持つことも、革命をすることも同じであると考えて実行してきた。その時々の目立つ呼び方はあるかもしれません。一貫して自分は単なる1人のシュールレアリストでしかない。だから、その設問には反対。順番は付けず、すべて私です」と表明した。

2月に行われるベルリン国際映画祭の批評家週間に正式招待が決まったことも明らかに。現在のところ東京都内での上映は決まっておらず、藤原は「それをきっかけに東京での興行もしていきたい」とコメントした。なお京都・出町座では近日に上映される予定。

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(c)REVOLUTION +1 Film partners

読者の反応

出町座 @demachiza

足立正生監督『REVOLUTION+1』
完成版上映決定。
当方での時期は2月頃になるかと。

9/27限定で上映された国葬ver.から完成版となり、再びスクリーンへ。来年2月のベルリン映画祭正式出品も決まり、その作品の真価が世界に問われる。現実とフィクションの拮抗を目撃ください。
https://t.co/RpOY19daGP https://t.co/ZlvqSctLmj

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