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物語の詳細は伏せられており、本国フランスでは「家出をした女性の物語、のようだ」という紹介だけで封切られた「彼女のいない部屋」。主人公のクラリスを「ファントム・スレッド」「オールド」の
「彼女のいない部屋」を監督したアマルリックは「2年前、カンヌで濱口監督に会ったときはまだ彼の映画を観られていなかったんだけど、その後パリの映画館で濱口監督のいくつかの映画を観て、とりわけ『ドライブ・マイ・カー』が本当に大好き(大文字のLOVE)だった!」と述べ、「『彼女のいない部屋』と『ドライブ・マイ・カー』を観た観客の中には、一種の秘密の共鳴を感じる人がいるのではないかと思っている」と期待を込める。
互いに尊敬の念を抱いているというアマルリックと濱口。オンライン対談は8月27日夜の回の「彼女のいない部屋」上映後に行われる。詳細はBunkamura ル・シネマの公式サイト、映画公式SNSなどで確認を。またアマルリックが“影響を受けた監督”として名前を挙げている
「彼女のいない部屋」は8月26日より東京・Bunkamura ル・シネマほか全国にて順次ロードショー。
黒沢清(映画監督)コメント
ひとりの女性がふと家を出て車で走り出す。あれよあれよと言う間に、生と死と、過去と未来とをめぐる無限の物語が構築されていく。驚くべき映画の冒険!
永瀬正敏(俳優)コメント
先行する、追いかける、音と映像の融合と、切なすぎる感情が見事にマッチしている稀有な作品。
新しい映画表現の、まだ見ぬ未来への希望を感じた。
森永泰弘(サウンドデザイナー)コメント
一体これほどまでに、ぼくたちの耳を刺激する映画がかつて存在しただろうか?
強烈なモンタージュが、映画の時空間を無尽に伸縮させて、多元的な視聴覚の層をこの映画は惜しむことなく創造し盛り込んでいるといっても過言ではないだろう。
河村尚子(ピアニスト)コメント
同人物とは思えない程、喜怒哀楽のありとあらゆる感情と精神を見事に表現しきる女優ヴィッキー・クリープスの名演に心を打たれました。物語のキーとなるFの音を是非お聴き逃しなく!
霧島れいか(女優)コメント
ヴィッキー・クリープスは雪のように繊細に見える。幼さを残した声、美しく細やかな表情と滑らかな指の動きは、景色を操ることも光を奪うこともできてしまいそう。
その唯一無二な佇まいに魅了され、私は彼女が大好きです。
三宅唱(映画監督)コメント
彼女が街中でふと足を止める。まるで時間も止まるようだ。いや、時間はまっすぐに流れて二度と戻らないものか。
となると、この映画は彼女とともに、なんとかその流れに抗おうとしているのかもしれない。流れに逆らう彼女の顔がかすかに震える。その震えから目が離せない。そして、彼女が再び流れに身を委ねるときに袖を通すある服が、とても似合っていて、いい。
高山なおみ(料理家 / 文筆家)コメント
自分がいなくなることで、いなくなった人を生き返らせる。彼女にしか見えない頭の中の景色、実としての景色。過去と未来。その境があまりに曖昧なので、私はひたすらに感じ、考える。彼女の悲しみが体に移ってくる。
二度と会えない彼らにまた会いたい。見終わってすぐなのに、何度も見たくなってしまう映画です。
金子稚子(終活ジャーナリスト / ライフ・ターミナル・ネットワーク代表)コメント
すべてが終わった時、冒頭のセリフが鮮明によみがえり、激しく心が震えた。
この重さ、この覚悟を私は受け止めることができるのだろうか。
小森はるか(映像作家)コメント
交わらない2つの時間が鏡のように進んでゆく
反復し合う日常に、現在を見失う
「待つ」ことに終わりの来ない苦しみとは、
こういうものなのかもしれない、と想像し胸が締めつけられる
けれど声は、交わらないはずの時空間を越えていく力を持っている、
と教えてくれた映画でもあった
声が届くとき、どちらの現在にも、穏やかな時間が流れていた
松井周(劇作家 / 演出家 / 小説家)コメント
人間は「物語」で出来ているんだと思った。ある体験が主人公から過去も未来も奪ったとしても、慣れ親しんだ音や手の感触から「物語」を紡ぎ始めることができる。時々間違ったとしても力強い「物語」に人間は、なる。
佐藤慧(認定NPO法人Dialogue for People代表 / フォトジャーナリスト / 「ファインダー越しの3.11」著者)コメント
物語を組み立て直す──それは過去を破り捨てることではなく、おぼろな「あの日」に耳を澄ますこと。その場所へと続く道は、あまりに孤独で果てしない。確かに「あの日」に触れているのだと、気付くまで。
SYO(物書き)コメント
何も言えないし、何も言いたくない。
この物語の真相と感慨は、心の内で抱きしめていたい。
オープンシェアの時代に逆行する、密やかで驚くべき秀作。
安田登(能楽師 / 下掛宝生流)コメント
これは能のような映画だ。能は「思い出」の芸能だ。思い出とは、思い出すことではない。身に残った“思い”が溢れ“出て”しまうことをいう。そして、溢れ出た思い出も「わたし」の一部なのである。
甫木元空(映画監督 / ミュージシャン)コメント
喪失・断絶をいざ経験すると、自分自身わけもわからず部屋をぐるぐる回っていた事がある。
走り始めた車は本当に進んでいるのか? ピアノの旋律が記憶と記録を縫い合わせ、記憶の色彩が現実を染めて記録の中へ溶けていく。
記録と記憶の隙間に存在する果てのない断絶という谷底を光の絵筆で描き、争う事のできない運命との距離を測り直す。
滞留し沈澱していく行き場のない思いを、視線の旋律へ映画は変えて走り出す。
杉田協士(映画監督)コメント
何も聞かずにクラリスの望みに応える人たちがいる。マチュー・アマルリック監督もまた、ないはずのカフェオレボウルを何とか探し出してくるように、この映画を作った。クラリスが望むなら、物語だって形にする。これ以上ないほどの美しい光と音で。
マチュー・アマルリックの映画作品
リンク
杉田協士 @kyoshisugita
マチュー・アマルリック監督最新作『彼女のいない部屋』が8/26(金)に渋谷のBunkamura ル・シネマ他で公開されます。
とてもおすすめの映画です。ぜひ。私もコメントを寄せています。
8/27(土)には濱口竜介さんとマチューさんによるオンライン対談もあるようです。
https://t.co/vdTERyPn9g