2010年代のブラジルで起きた社会運動を追ったドキュメンタリー「
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019のインターナショナル・コンペティションで優秀賞を受賞した「これは君の闘争だ」。2015年10月、ブラジル・サンパウロの高校生たちは、公立学校の予算削減案に抗議するため、自らの学校を占拠した。これは翌月、ブラジル全土で200以上の学校が占拠される学生運動に発展していく。本作には当事者として運動に参加した3人の高校生が出演し、当時を振り返りながら、それぞれの意見をヒップホップの音楽に乗せラップバトルのようにぶつけ合う。ブラジルのドキュメンタリー作家
「シスターフッド」などで知られる
「これは君の闘争だ」は東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。
REINO(ラッパー)コメント
この映画を見て頭を抱えた。成功だけを描いた作品ではなく、闘争ゆえに失ったものや、訪れてしまったものも生々しく映し出す。自分自身は? 間違っていないだろうか? だが、 足は止めない。彼らのように。
森元斎(長崎大学教員、哲学・思想史研究)コメント
眼前の敵には負けても、実は考え方を変えれば、勝ってしまっていることがある。政治家どもがいかなる奴らなのかを世界に知らしめ、高校生の課題が何なのかを知らしめることができる。闘争は決して負けないのだ。
新谷和輝(ラテンアメリカ映画研究者)コメント
遊撃的に繰り出される3つの声のナレーションに一瞬でひきこまれ、変幻自在の映像にひたすら「かっけえ……」とつぶやく。「チリの闘い」の「同志たち」に勝るとも劣らない魅力的な人々。しかし、運動への幻滅やトラウマをにじませながらそれでも路上に立つ彼らの情動をカメラがミクロに捉えるとき、単なる羨望ではない、私のなかのなにかが共振する。人々の身体と言葉がつくりだす「特別な場」を記憶に刻む、歴史的な傑作だ。
西原孝至(映画監督)コメント
三人の若者が、自分たちの社会運動を振り返り、語る。政治に絶望し、嘆くだけで終わらせない。私たちは生きていかなければならない。声を上げれば社会は変わる、声は波紋となり社会を震わせる、その希望に賭けよう。さあ、自分の言葉で語ろう。これは私の闘争だ。
DARTHREIDER(ラッパー)コメント
ビート! ビート! ビート!
この作品にはビートが溢れている。最初から最後までリズムが鳴り響く。
「誰もが唇と身体を触れ合わせたくてドキドキ。夜通し踊ってイケイケ」、これこそがビートによってもたらされる到達地点だ。学生たちはビートによって社会の外側まで躍り出て、異性も同性も年齢も国籍も関係なく混ざり合い、愛し合う。この感覚をお互いに確かに感じあってから彼らは社会に戻っていくのだ。
高島鈴(ライター、アナーカ・フェミニスト)コメント
燃えるような音楽・実践・アジテーション、マジで全部他人ごとじゃなかった。何も手元になくたって、魂と肉体を持っているならできることがある。
われわれ、やるしかなくない?
charo(映画イラストレーター)コメント
ドキュメンタリー映像とラップ音楽の不思議なコンビーションが癖になる。エネルギッシュな彼らのムーブメント、もう大人には止められない! 同じ学生という立場から、パワーをもらい日常を見つめ直すきっかけとなった。
鈴木みのり(ライター)コメント
冒頭、映画の制作会社のロゴが続くお馴染みの映像に重ねられた声に、惹きつけられる。ブラジルでの公立学校への予算削減に反対する運動を主導した、かつての学生たちの声だ。生活の活気と生々しい闘争の痛みまで、過去を冷静に見定めた希望と不安の声。それは、未来につながるラップのマイクリレーみたいで、沈鬱に対抗するかのよう。
たかはしほのか(リーガルリリー)コメント
日本から見ると地球儀の反対側にある国ブラジルの高校生たち。
人々は言葉を音に乗せて、戦列歩兵で進んで行きます。
その足音は若くて美しく残酷な命の歌と共に確かに刻まれていきました。
陸と空は、繋がっています。いま、ここにも届きました。
カツセマサヒコ(小説家)コメント
疾走感あふれる彼女たちの声は、理不尽にまみれた毎日を黙認せず、立ち上がる勇気を与えてくれる。
学校を占拠し、自分たちの描く「自由」を実践して暮らすその様子は未来への希望そのものに思えた。
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映画ナタリー @eiga_natalie
ラップで紡ぐドキュメント「これは君の闘争だ」に西原孝至、DARTHREIDERらコメント(動画あり)
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