ドキュメンタリー「
東京大学特別教授の有機化学者・
監督を務めたのは「谷川さん、詩をひとつ作ってください。」の
なお10月17日にはポレポレ東中野に映画監督の
杉本信昭 コメント
中村さんと渡邊さんは、自分で決めたことに迷わず情熱を傾けていく。それはもう純情と言っていい。
二人ともごく普通の人だが、自分の決定に従ったが故に、中村さんは実験の爆発で失明の危機に遭遇し、渡邊さんはチェンバロ弾きを目指していきなりオランダに渡るという無謀をおかすことになった。
でも彼らは全く後悔していない。苦しみも喜びも全てが自分。答えのない世界を歩き続け、試行錯誤を繰り返し、それでもきっと楽しいと思っている。
二人の話は確かに面白かった。しかし私を本当に捕らえたのは、結構大胆な道のりを当たり前のように語る二人の態度だった。それは、自分と正直に向き合ってきた人間の態度だ。静かに、頑固に、誰にも責任転嫁せずに、自分の事として、自らの決定に従う。二人は紛れもない個人だった。
今のこの国で個人として生きるのは難しい。自分を貫こうとするとたちまちバッシングが起こる。
多くの人の気持ちが委縮している。「多様性」という言葉がこれほど軽々しく語られる国はあるだろうか。
誰かに責められるのを恐れて、誰かが決めた多数意見の側に付く。
しかしそこにはもう個人はいない。
自分で決めるのは怖いことだ。躊躇もする。自信を持てないときもある。ようやく実行しても失敗は起こる。痛みが周囲の人たちに及ぶこともある。決めるとはそういうことであり、個人であり続けるには自分で決めなければならない。
何も声高になる必要はない。
淡々と決心して、大らかに実行し続ける。それを示してくれたのが中村さんと渡邊さんだった。
谷川俊太郎 コメント
観終わった満足感のあと、何故か自分にキャッチフレーズのような言葉が浮かびました、まとも、しあわせ、たたずまい…文章にすると、私が感じた明るい存在感が薄れて決まり文句的な意味が生じてしまいそうです。意味以前の存在、バッハの音楽のように言葉では置き換えられないリアリティ、お二人の生き方にもこの映画そのものにも、たたずまいとしか呼べない在り方を感じます。
「分子の音色 A scientist and a musician」イベント情報
東京都 ポレポレ東中野
10月16日(土)13:20回上映後 初日舞台挨拶&トークショー
<登壇者>
杉本信昭 / 渡邊順生(出演者、古楽器奏者)
10月17日(日)13:20回上映後 舞台挨拶&トークショー
<登壇者>
杉本信昭
<ゲスト>
森達也(映画監督、作家)
10月23日(土)13:30回上映後 舞台挨拶&トークショー
<登壇者>
杉本信昭 / 中村栄一(出演者、東京大学特別教授・名誉教授)
10月24日(日)13:30回上映後 舞台挨拶&トークショー
<登壇者>
杉本信昭
<ゲスト>
未定
映画ナタリー @eiga_natalie
バッハを演奏する科学者と音楽家を結ぶものとは、ドキュメンタリー「分子の音色」公開(コメントあり / 動画あり)
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