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辻村深月の同名小説を原作に、実の子供を持てず養子を迎えた夫婦と、産んだ子供を育てられなかった女性の関わりを描いた本作。一度は子供を持つことをあきらめた夫婦・栗原佐都子と清和を永作と井浦が演じ、実の子を育てることができなかった少女・片倉ひかりに蒔田、栗原夫妻とひかりを引き合わせる浅見静恵に浅田が扮した。新型コロナウイルスの影響による公開延期を経て、本作を心待ちにしていた観客を前にし、登壇者たちは感謝と喜びに満ちたまなざしを向けた。
河瀬の作品では、カメラに映らない部分でも、役作りのために撮影場所の家で共同生活を送るなど“役積み”を大切にすることが知られる。河瀬は「流行語大賞じゃない?」とジョークを飛ばし、「スクリーンの中で演じることが“映画”だとすると、河瀬組はそこで“生きて”います」と役積みについて説明。本作においても、撮影の2週間ほど前から永作や井浦たちは一緒に生活したという。
永作は「まず『赤ん坊のものをそろえて』と監督に言われて。だいたいそういう(撮影で使用する)ものは美術スタッフさんが現場に持ってきてくれるんです。でも今回に関しては、おくるみ、肌着、よだれ掛け、おむつ、ミルク、それを入れるバッグも全部自分たちで用意して、東京から撮影地の広島まで持って行きました」と明かす。井浦も「あるショッピングモールに2人で買いに行って。カメラは回ってないし、監督もいないところで、自分たちであれこれ選びました」と話し、観客を驚かせた。
すでに高校を卒業している蒔田も「奈良にある河瀬さんの母校の中学校に通いました。家族役の方たちと一緒に住んで、朝起こされて、自転車でキツい坂を登って、授業受けて、部活して、友人と遊んで帰宅して……」と、14歳の少女を演じるための役積みをごく当たり前のことのように振り返る。浅田は養子縁組の説明会のシーンに苦労したと嘆き、「台本がないんですよ。たくさんの資料を読み込んで、自分なりに1時間ぐらいの講演を作り上げて。質問にも答えなきゃいけないし、受験勉強のようでした」と述懐。本番では井浦演じる清和から質問が挙がる場面もあったようで、いかに焦ったかを伝えた。
ハードに思える役積みだが、井浦は「とても幸せな環境。その場で感じたことに監督が重きを置いてくださるのでありがたい」、蒔田も「感情移入の仕方が全然違う」と満足げに語る。永作は「現場では『あなたは今どう考えるか』を毎回突き付けられて。セリフを言えるかどうかじゃなく、自分がどう判断するかを監督が見ていて。それに応えたいと思ってみんな付いていきました」と述べ、充実感に満ちた表情を浮かべた。
「朝が来る」は全国で上映中。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
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