しんゆり映画祭が上映中止問題の経緯を説明、今年は白石和彌ら招く検証企画を実施

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第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020の開催記者発表会が本日10月6日に神奈川・新百合トウェンティワンホールで開催され、映画プロデューサーで映画祭実行委員長の安岡卓治が出席した。

第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020開催記者発表会に出席した安岡卓治。

第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020開催記者発表会に出席した安岡卓治。

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「主戦場」ポスタービジュアル (c)NO MAN PRODUCTIONS LLC

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NPO法人のKAWASAKIアーツが主催し、川崎市が共催に名を連ねるしんゆり映画祭。ボランティアを含む市民スタッフが、プログラム選定などの企画や運営の中心を担っている。安岡はまず、昨年の同映画祭で慰安婦問題をテーマにしたドキュメンタリー「主戦場」が上映取り止めから再上映に至った経緯と、その後の運営体制の再編について説明。2019年6月8日に「主戦場」が上映候補作品として選出されてから、2020年7月3日に一連の事態の意見交換会を開催し、経過資料を収集する「再生プロジェクトチーム」が発足されるまでの事実関係を中間報告資料とともに発表した。

上映取り止めの背景には、映画祭代表や副代表を含む5名からなる運営委員会を支配した“恐怖”があったと言う安岡。「主戦場」の出演者グループが上映差し止めを訴える訴訟を起こしたことにより、2019年7月15日、映画祭は川崎市の市民文化局市民文化振興室へ同作の上映を予定していることや訴訟の状況を電話で伝えている。この前後、運営委員会のメールの中で「市に作品のリスク等を説明すること自体が『こちらから検閲してください』と言っているようなもの。多くのスタッフが上映を希望している以上、その意向を最大限尊重すべき」「事務局に対応処理が集中すると我々の規模の団体は機能麻痺する恐れがある」といった話が交わされていたが、ほかのスタッフへの共有はなかった。

8月6日、市の担当者から口頭で「作品の出演者が上映差し止めを求めている作品を、決着が付かない段階で共催者として市の名前が出て上映することは厳しい」という懸念が事務局スタッフへ伝えられる。これを受けて、映画祭代表は「上映を巡る問い合わせに事務局が対応する余裕はない」「市との関係にはマイナスしか考えられない」という理由から「主戦場」の上映を見送るべきだと運営委員会に告知。プログラムメンバーとの会議後、市民スタッフへは8月17日の全体会でこれまでの経過が説明される。8月20日には改めて市側から「訴訟中の作品上映は不適切」と伝えられ、最終的に運営委員会は上映取り止めを決定した。

第25回KAWASAKIしんゆり映画祭2019にて、左から井浦新、是枝裕和。

第25回KAWASAKIしんゆり映画祭2019にて、左から井浦新、是枝裕和。[拡大]

10月27日の映画祭開幕当日、公式サイト上で「主戦場」上映見送りがアナウンスされると、若松プロダクションは上映予定作品のボイコットを表明し、是枝裕和と井浦新は「共催者側の懸念を真に受けて、主催者側が取り下げるのは『映画祭の死』を意味します」と映画祭の舞台挨拶で主張。相次ぐ抗議を受けて開催されたオープンマイクイベントでは、上映復活を求める多くの市民の声が集まった。そして、11月2日に映画祭は上映中止を撤回し、最終日の11月4日に「主戦場」の上映が実現した。

安岡は「しんゆり映画祭が首の皮一枚で生き残ったという印象でした。上映をしないままであったなら、映画に背を向けた映画祭は存在しきれないだろうと。最終日に上映が実現したことで立ち直るはずだという意識を持ちました」と当時の胸中を吐露。映画祭終了後には運営委員会の5名が辞任を表明し、2020年に入ると新体制について協議する準備委員会および、新組織である実行委員会が発足した。準備委員会の理事でもあった安岡は、「非常に熱心な議論がありました。委員は普段お仕事をお持ちであったり、決して映画を仕事にされている方々ではないですが、毎週長時間の議論を重ねながら『映画祭はこうあるべきだ』という思いを理念や規約に置き換えていただきました」と振り返る。

2019年10月29日に行われた若松プロダクションによる記者会見の様子。左から白石和彌、井上淳一。

2019年10月29日に行われた若松プロダクションによる記者会見の様子。左から白石和彌、井上淳一。[拡大]

昨年の事態を受けて、映画祭は「再生プロジェクト」としてオンライン講座「検証・『主戦場』上映取り止め問題とは何だったのか?」を開講することを決定。全6回にわたるこの講座では、白石和彌井上淳一森達也深田晃司といったゲストを招き、映画祭のあるべき姿を探っていく。視聴チケットは、Peatixで10月10日から30日にかけて販売。各回500円で10月24日から11月1日にかけて配信される。

この日の会見では、10月25日から開催される第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020のプログラムも発表。今村昌平大林宣彦を偲んで「神々の深き欲望」と「海辺の映画館―キネマの玉手箱」がスクリーンにかけられるほか、オリヴァー・チャンの「淪落の人」、元レイシストの男の更生を描く「SKIN/スキン」、ヤスミン・アフマドの「タレンタイム~優しい歌」などがラインナップに並んだ。また、一部の作品では副音声や日本語字幕付きのバリアフリー上映も実施。全プログラムは以下に掲載している。

第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020は、10月25日および10月30日から11月1日にかけて神奈川・川崎市アートセンターで開催。

第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020

2020年10月25日(日)、30日(金)~11月1日(日) 神奈川県 川崎市アートセンター
<上映プログラム>

映画って自由だ!~2人の巨匠に感謝をこめて~

「神々の深き欲望」※R18+指定作品
「海辺の映画館―キネマの玉手箱」

違いがあってもいいじゃない~共に生きよう!~

島にて」※UDCast対応作品
だってしょうがないじゃない」※バリアフリー日本語字幕付き上映
「淪落の人」
「SKIN/スキン」※R15+指定作品
「タレンタイム~優しい歌」※副音声イヤホンガイド付き上映

アニメーションの奥深き世界へようこそ!

劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX -
音楽

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

料金:前売り 1100円 / 一般、シニア 1400円 / 大学生、専門生、高校生以下、障害者、付添人 1100円
※「海辺の映画館―キネマの玉手箱」は前売り1500円、当日1800円

連続ONLINE公開講座「検証・『主戦場』上映取り止め問題とは何だったのか?」

第1回 経過検証1 その時、何が起こったのか?

10月24日(土)20:00~
<ゲスト>
金平茂紀 / 森達也

第2回 経過検証2 作り手の決意

10月26日(月)20:00~
<ゲスト>
白石和彌 / 井上淳一

第3回 経過検証3 論議を求めて

10月27日(火)20:00~
<ゲスト>
大澤一生 / 纐纈あや

第4回 映画を観客に届けるということ

10月28日(水)20:00~
<ゲスト>
渡辺祐一 / 小林三四郎

第5回 映画の危機 映画祭の危機

10月29日(木)20:00~
<ゲスト>
深田晃司 / 綿井健陽

第6回 映画祭が果たすべき役割

11月1日(日)20:00~
<ゲスト>
石坂健治 / 藤岡朝子 / 志尾睦子

料金:各回500円

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