キネマ旬報創刊から100年、研究員が語る「映画雑誌の秘かな愉しみ」の魅力

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展覧会「映画雑誌の秘かな愉しみ」のプレス向け説明会が本日9月10日に東京・国立映画アーカイブで開催。企画を担当した特定研究員・濱田尚孝がその魅力と楽しみ方を語った。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦後の映画雑誌」コーナーの様子。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦後の映画雑誌」コーナーの様子。

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「映画雑誌の秘かな愉しみ」チラシビジュアル

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実際の雑誌や資料など約400点を紹介しながら、100年以上にわたって役割やスタイルを変えてきた日本の映画雑誌の歴史に触れることができる本展。2015年に開催された映画の書物を巡る展覧会「シネマブックの秘かな愉しみ」に続く企画であり、濱田は「雑誌はその時々の最新情報を伝えるのが大きな使命の1つ。当時の映画とそれを取り巻く環境の雑多な情報を伝えてくれる」と定期刊行物としての雑誌の特性に触れる。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」の企画を担当した特定研究員・濱田尚孝。

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展示は「日本の映画雑誌の誕生」「『キネマ旬報』の100年」「戦前の映画雑誌」「戦後の映画雑誌」という映画雑誌の歴史に関するコーナーと「映画雑誌と映画史研究」という映画雑誌と映画史研究の関わりを紹介する計5つのコーナーで構成された。「映画ファンであれば、それぞれが親しんできた映画雑誌があると思いますが、ここでは自分とはあまりなじみのない、今まで知らなかった映画雑誌に触れてもらえる機会になるはず」と濱田は言う。

日本初の映画雑誌・活動写真界の展示風景。

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2019年は日本初の映画雑誌・活動写真界の創刊から110年、現在も続くキネマ旬報の創刊から100年となる節目の年だ。濱田は「明治から現在に至るまで110年の間に積み重ねられてきた映画雑誌の歴史自体が、今日の視点から見るととても貴重な資料になっています」と本展の意義についてコメント。「日本の映画雑誌の誕生」では、1909年6月に創刊された活動写真界が展示された。同誌は日本最古の映画会社の1つ、吉澤商店の機関紙として誕生し、1911年2月の第26号まで発行されたと言われている。

「キネマ旬報」1919年7月11日創刊号

「キネマ旬報」1919年7月11日創刊号[拡大]

「『キネマ旬報』の100年」では日本を代表する映画雑誌・キネマ旬報の歴史を紹介。濱田曰く「本展の目玉」というのが、500部しか刷られなかった1919年7月刊行の創刊号だ。当時は2つ折りの4ページという短い冊子であり、5銭で発売された。東京高等工業学校に在学していた10代の田中三郎と田村幸彦が中心となった同人雑誌であり、創刊の辞の書き出しは「私共は活動写真が並はずれて好きなのであります」というもの。濱田は「若々しさがみなぎっている創刊号ですね」とコメントしながら、表紙に掲載された女優2人の写真キャプションの記載が反対になっているという誤りも指摘していた。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦前の映画雑誌」コーナーの様子。

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「戦前の映画雑誌」では、特定の映画会社を応援する雑誌、もしくは映画会社が自社ファンのために創刊した機関紙などを“スタジオ雑誌”というくくりで紹介。その嚆矢となったのが、松竹蒲田の作品を愛する橘弘一郎が1922年に創刊した蒲田だ。そのほか向島、日活、東寶(東宝)といった雑誌が並ぶ。蒲田がオール松竹と改題したことに触れながら濱田は「雑誌としてレイアウトや写真、紙面の構成が非常に洗練されています」とコメント。そのほか阪東妻三郎といった人気俳優の名を冠した“スターファン誌”、大判の写真をふんだんに使用した“グラフ誌”、大学の映画研究会や左翼系の運動とともに生まれた雑誌群なども見ることができる。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦後の映画雑誌」コーナーの様子。

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「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦後の映画雑誌」コーナーの様子。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」より「戦後の映画雑誌」コーナーの様子。[拡大]

続く「戦後の映画雑誌」では、戦後の映画産業の盛り上がりとともに続々と誕生した映画雑誌を展示。サンフランシスコ平和条約の発行により日本が主権を回復した1952年頃の映画雑誌について、濱田は「紙質もよく、表紙も華やかで、雑誌自体も厚くなっています。映画産業が戦後復興と一緒に盛り上がっていたことが紙面からもうかがえます」と語る。そして「宇宙戦艦ヤマト」の放映で盛り上がったアニメブームから誕生したアニメ専門誌、ピンク映画を紹介する成人向けの映画雑誌、言論活動の場としてさまざまな論争が繰り広げられた評論誌など、さまざまなジャンルの雑誌が誕生。このコーナーでは、長きにわたって映画ファンに親しまれた雑誌ロードショーやぴあの創刊号と最終号、「スター・ウォーズ」の日本公開にあわせて創刊された「スターログ 日本版」も展示された。

「映画雑誌と映画史研究」では、一般的な映画雑誌では顧みられることが少なくなった映画史研究という分野に着目。映画評論家の佐藤忠男が発行した「映画史研究」をはじめ、個人がその研究成果を報告し、記録に残してきた功績に触れることができる。また本展のように映画雑誌そのものを取り上げた人々の活動も。

「映画雑誌の秘かな愉しみ」は12月1日まで開催。期間中は「映画雑誌小講座」と題し、それぞれテーマを設定した3回のトークイベントが実施される。詳細は国立映画アーカイブの公式サイトで確認を。

映画雑誌の秘かな愉しみ

開催中~12月1日(日)東京都 国立映画アーカイブ
開室時間 11:00~18:30(入室は18時まで)
※毎週月曜日、9月23日(月・祝)~30日(月)は休室
料金:一般250円 / 大学生130円 / シニア、高校生以下および18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料

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