「新聞記者」イベントに伊藤詩織がサプライズ登壇、プロデューサーは韓国公開を発表

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新聞記者」のトークイベントが昨日8月8日に東京・丸の内ピカデリーで行われた。

「新聞記者」トークイベントの様子。左から河村光庸、前川喜平、石田純一、高橋純子。

「新聞記者」トークイベントの様子。左から河村光庸、前川喜平、石田純一、高橋純子。

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「新聞記者」ポスタービジュアル

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望月衣塑子の著書を原案とする「新聞記者」は、国家権力の闇に迫ろうとする新聞記者・吉岡の奮闘と、現政権に不都合なニュースのコントロールを任されたエリート官僚・杉原の葛藤を描いた政治サスペンス。シム・ウンギョンが吉岡、松坂桃李が杉原を演じた。8日時点で動員40万人、興行収入約5億円を記録している。

河村光庸

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イベントには俳優の石田純一、元文部科学事務次官であり現代教育行政研究会代表の前川喜平、プロデューサーの河村光庸が出席。朝日新聞の論説委員・高橋純子も進行役として参加した。まず河村は「私はよく映画祭に参加していたのですが、世界各国の方々はほとんど日本の政治について知らないんです。それは長い間日本で政治に関する映画が作られていなかったから」と説明する。「新聞記者」製作の発端を「伊藤詩織さんの事件です。国家権力が逮捕状を出しておいてそれを取り下げるなんてことがあっていいのかと。そこまで来ちゃったのかと。大変な危機感を持って、なんとしてでもこの映画を作らなければと思いました」と明かした。

伊藤詩織

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「今日、実はサプライズゲストが来ています」と河村が話すと、ステージに伊藤詩織が登場。河村が「裁判中でいろいろ問題があるかもしれないけど来てくれました」と続けると、観客から伊藤に大きな拍手が送られた。伊藤は「自分がここに立っていることにちょっと驚いています」と心境を吐露し、現在はイギリス・ロンドンに住んでおり裁判のため一時的に日本に来ていると説明。7月8日に行われた尋問を振り返りながら「ずっと取材をしてくださっている望月記者が尋問にも来ていて。尋問のあとに『お疲れさま』と声をかけてくれて、『新聞記者』のチケットをくださった。『観てきてください』と。実は、観る勇気がなかったんです。悪夢が描かれていて、フラッシュバックしてしまうんではないかと思って。ただ当事者であるし、ジャーナリズムとしても観たいと思って尋問のあとにすぐ観に行きました」と話す。映画には伊藤をモデルとするキャラクター・後藤さゆりが登場しており、「満席だったんですが、いったいここにいる何人が後藤さゆりさんが体験したことについて知っていて、ノンフィクションだと思って観ているのかなと思って。観終わったあと、動けずにぼーっとしていたんです」と回想。「そうしたら出るときに『詩織さんですか?』と声をかけてくれた方がいて、『私たちのために声を上げてくださってありがとう』と言ってくださったんです。そこで緊張などいろいろなものがほぐれて涙が出ました。性暴力だったり、体験したことを日本のメディアではなかなか話すことができなくて、それが映画というフィクションで描かれていることにいろいろ思うことはあったんです。でも観た人に伝わっていたのがうれしかった」としみじみ述べた。

伊藤詩織

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会場には伊藤を担当している弁護士2人の姿もあった。伊藤は「逮捕状がなくなったというとき、どうしていいかわからなくていろいろな弁護士の先生に聞いたんです。警視庁に行って逮捕状がどこにあるか聞きたいって言ったんですけど『そんなことはできない』という方がほとんどだった。藁にもすがる思いでホットラインに電話したときに出てくれたのがそこにいらっしゃる先生で。お隣にいる先生も含め3人で警視庁に行きました」と当時を振り返る。「なんの対価も払っていない時点で、2人はおかしいと感じて一緒に立ち上がってくださった。私はそこから一歩一歩進めました」と感謝をにじませた。続けて「逮捕状を止めた中村氏のことも追いかけたんですよね。自分が警察官を追いかけるなんて夢にも思わなかった」と笑顔を見せ、「でもそれくらい答えが欲しかったし、今も欲しいです。そして、これからも私と同じようなことが起こってしまうかもしれない。そういったことを考えながら1人ひとり行動して、疑問に思っていかなければならないのかなと思います」と胸の内を伝える。

現在伊藤はアフリカのシエラレオネで、女性器切除の習慣に関するドキュメンタリーを撮っているという。「宗教とかは関係なく、社会的な圧力から切らなきゃいけないという背景があって。体の一部を切られる行為ではないけれど、日本にも女性だったらこうでなければいけないという問題はあるのではないかと思って制作しております」と語った。

石田純一

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石田は自身の番組「石田純一のシネマに乾杯~Cheers! Looking at you,kid.~」に関するエピソードを披露。番組がなくなっても仕方がないという覚悟で「新聞記者」を紹介したと言い、「すごくいい反響をいただきまして。芸能人だからってことではなくて1人の人間としてものを言おうと」と話す。またTBCのCM撮影で沖縄を訪れたローラに触れ「人魚の役の彼女は、辺野古ということを強く言ったわけじゃないですけど、沖縄の海を守ろうとかきれいなままにしてと言った。そうしたら『モデルごときが何を言うんだ』『何も知らないタレントのくせに』という声があった」と述懐。「同じことを天文学者でもあるクイーンのブライアン・メイがもっとはっきり言ったんですけど、それに対しては誰も言わないんですよね。そういうのはいかがなものかと。多様性を大事に、メディアが矜持を持ってやっていってほしいなと思います」と主張した。

前川喜平

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前川は教育をテーマにトークを展開。1979年に文部省に入った前川は「1980、90年代はいい方向に教育が変わろうとしていたと思います。ゆとり教育という言葉は誤解されてバッシングされたんですけど、1人ひとりの個性や主体性を大事にしようという教育だったんですよね。ところが2000年代に入ってから歯車が逆に回り始めて。『教育勅語を復活させましょう』みたいなことを本気で言っている人がうじゃうじゃ出てきてしまった」と時代の趨勢に言及する。政治教育に関しては「政治的な見解を持っていない教師が生徒に対して『君たちは自分の見解を持ちなさい』と言えるはずがない。政治的中立性と言って、自分の意見を言うなというのはもともと無理な話。教師は自分の意見を言ってよくて、逆の意見もあるということを伝えればいい。そして生徒に考えさせることが大事。あいちトリエンナーレを巡って大村(秀章)知事と吉村(洋文)知事が対立しているけど、こういうのを全国の高等学校で教材化したらいいと思う」と持論を語った。

イベントの最後に河村は、いいニュースが2つあると伝え「ある大手芸能プロダクションの社長から『よくぞこの映画を作ってくれたと』と電話がありました」と報告。そして「新聞記者」が韓国で公開されることも発表し、「これは日本人と韓国人の文化交流。詳しくはまた別のところでお伝えします」と本日のイベントを締めくくった。

「新聞記者」は全国で上映中。

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(c)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

※動画は現在非公開です。

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Martin Fackler @martfack

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