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「東京暮色」有馬稲子、小津安二郎の演出や笠智衆らキャストへの思いに言及

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左から有馬稲子、樋口尚文。

左から有馬稲子、樋口尚文。

小津安二郎の監督作「東京暮色」4Kデジタル修復版の舞台挨拶が、本日6月24日に東京・角川シネマ新宿で行われ、キャストの有馬稲子が登壇した。

デジタル修復版を昨日鑑賞したという有馬は「この有馬さんはいいですね」と自身のことに触れ、会場を沸かせる。「演技をしていないし、あの当時だからこその清純さや純潔さが自然と出ていた」と考察し、「光の陰影に深みが出て、濃淡がはっきりとし、とってもきれいでした。小津さんにも観せたら喜ぶね」と修復版の感想を話した。

「小津さんのキャスティングのうまさにつくづく感心します」という有馬は、「脇を固める人たちも含めて役者がみんないい。笠智衆さんのことは大好きで、あんなお父さんがいたらなとずっと思っているくらい。高橋貞二ちゃんはのらくら、でたらめさのある芝居が本当にうまかった。いい加減な男をやらせるとピカイチであんな人が実際にいたんです」と話す。大好きだという原節子を「こんなにきれいな人は見たことがないと思うくらい素敵」と語り、「4Kだとなおさら美しかったです」と感動した様子を見せる。「杉村春子さんのおばちゃん役もとってもいい。おっちょこちょいなあの感じが本当にうまいんですね。山田五十鈴さんは、特にラストシーンの目がとても印象的。あのシーンはノーメイクで臨み、傷んだ肌も出した。その役者根性が本当にすごい」と称賛した。

有馬は「小津さんの作る家族という名の建造物が大好きなんです」と語る。「テーブルの上に並べられた小道具の位置を全部完璧に直し切ってから撮影に入る。小津さんの映画はとても絵画的に作っていたんです」と小津の演出について説明。さらに「撮影現場で、17時頃になると小津さんは時計をちらちら見出すんです。早くお酒を飲みたいんですね。そうすると『すき焼き食べる?』なんて誘ってもらってよくごちそうになりました」と当時を振り返る。続けて有馬は「小津監督はいつもチャコールグレーのスーツを着ているので『この服しか持っていないのかな』と思っていたら、家に遊びに行ったとき、押入れが空いていたから覗くとチャコールグレーのスーツがバーッと10着くらい並んでいたんです」と明かし、客席を笑いに包んだ。

「映画は白黒が好き、モノクロ映画特有の陰影や濃淡がいいんです。そう考えると小津さんというのはやっぱり大監督ですね」と感心する有馬。「小津作品には2本しか出ていないので、もうちょっと松竹に在籍していたらほかにも小津作品に出られたかもしれない。本当にいい人、いい監督でした!」と笑顔で述べ、イベントの幕を引いた。

本作を含む、小津作品7本の4K修復版をスクリーンにかける特集上映「小津4K 巨匠が見つめた7つの家族」は角川シネマ新宿で開催中。「東京暮色」「東京物語」「晩春」「麦秋」「お茶漬の味」「早春」「浮草」がラインナップされた。

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