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G・デル・トロが町山智浩とトーク、怪獣は「不完全な人々にとっての守護聖人」

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ギレルモ・デル・トロ

ギレルモ・デル・トロ

シェイプ・オブ・ウォーター」の監督を務めたギレルモ・デル・トロが来日。本日1月30日に東京・ユーロライブで、映画評論家の町山智浩とともにトークイベントに出席した。

「シェイプ・オブ・ウォーター」は、アメリカ政府の極秘研究所で清掃員として働く口の利けない女性イライザと不思議な水中生物の愛を描くファンタジーロマンス。第74回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門の金獅子賞を獲得したほか、第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞を含む最多13部門でノミネートされている。

フォックスサーチライトピクチャーズのファンミーティングとして開催された同イベント。本作についてデル・トロが「おとぎ話。フェアリーテイルと呼ぶのがもっともふさわしいと感じています。なぜならミュージカルもあれば、コメディ、スリラー、ドラマとあらゆる要素が詰まっているから」と語ると、町山は「おとぎ話である一方で、セックスとバイオレンスの描写が多いです」と指摘する。これを受けデル・トロは「“大人の”おとぎ話です。すべてのおとぎ話には、セックスやバイオレンスが含まれていると考えます。表面には出さず押さえ込んでいる場合が多いですが、幼い頃から物語の表面下にそういったものを感じていました」と説明した。

町山は本作を「声のない女性の話」とし、また舞台となる1962年の時代背景について「あの頃は黒人もメキシコ系も声を上げることができませんでした」と言及。そして2017年、セクハラ問題に対し多くの女性が声を上げたこととの関連性を尋ねると、デル・トロは「偶然の一致です。でも偶然でもない」と話し、「私もずっとマイノリティです。よく他者を『the others』の一言でくくりますが、それは人の本質を捉えていません。私はメキシコ人でもあり、男でもあり、父でもあり、息子でもあり、さまざまな一面を持っています。それを一言でくくろうとするから憎しみが生まれる。すべての人間にはそれぞれバラエティがあって、それでいい」と口にした。

続いて幼少の頃から怪獣にシンパシーを感じていたというデル・トロは、その理由を「昔から変わった子供でした。メキシコ人にしては静かですし色が白い(笑)。スポーツもやらないで本を読んだり、映画を観たり、絵を描いたり。怪獣を愛してきたのは、彼らには欠点が多いから。怪獣は不完全な人々にとっての守護聖人なんです」と明かした。またデル・トロが、第90回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた特殊メイクアーティスト・辻一弘について語る場面も。2004年に公開された自身の監督作「ヘルボーイ」に参加している辻を「彼の作るクリーチャーは目が美しい。透明感、キャラクターとしての奥行きを感じさせてくれます」と評す。さらに「シェイプ・オブ・ウォーター」における水中生物のスーツ作りには60人ほどが関わっていることも明かした。

イベントでは、デル・トロが観客からの質疑に答えるコーナーも実施。「演出したいキャラクター」を問われたデル・トロは、「惚れ込んでいるキャラクター、作品は1つだけありますが、明かすとネットに出るので言いません(笑)」と話し笑いを誘う。さらにハリウッドにおける映画製作の現状を「予算が大きければ大きいほど自由がなくなります。『クリムゾン・ピーク』はおよそ5000万ドル。スタジオは製作費を回収するため、ゴシックロマンスの話なのにホラーとして売りました。これはグッチのバックをトースターとして売るようなもの(笑)」とし、約1930万ドルで作られたという「シェイプ・オブ・ウォーター」については「予算が少ない映画は、作品の本質を捉えた宣伝をしてくれます」と語った。

映画制作における画作りで気を付けていることを問われると、デル・トロは「もっとも重要なのは、ビジュアルに関する言語を幅広く学ぶこと。例えば『ポップ』の一言ではイメージを何も伝えられない。写真、絵画、イラストなど世界中のあらゆるイメージを自分のものにしてください」とアドバイス。また映画におけるビジュアルについて「美しいだけでは駄目。イメージは物語、キャラクターの感情を伝えるためのもの。色、形、質感、動き、光はすべてストーリーをいかに語るかで選択しています。何を描くかではなく、どう描くかが大事なんです」と続けた。

「シェイプ・オブ・ウォーター」は、3月1日より全国ロードショー。

(c)2017 Twentieth Century Fox

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