「あなた、その川を渡らないで」監督が「夢と狂気の王国」の砂田麻美と対談

ドキュメンタリー映画「あなた、その川を渡らないで」のトークイベントが6月2日、東京・アキバシアターにて行われ、本作の監督チン・モヨン、同じくドキュメンタリー監督の砂田麻美が登壇した。

韓国の小さな村で暮らす98歳の夫と89歳の妻の穏やかな日常を記録した本作。どこへ出かけるにもおそろいの洋服を身にまとい、手をつないで歩く2人の姿が人々に感動を与え、韓国でドキュメンタリー映画史上最多の観客動員数を記録した。

公開に先駆け来日したチン・モヨンは「この2人のストーリーは、幸せなお姫様と王子様の童話です。でもこの映画はお姫様と王子様が、その後にどうなったかを描いています」と作品を説明。「若い頃に愛し合うことは簡単だけれど、老いてからや病にかかったとき夫婦はどうなるのか、それを描きたかった」と制作の動機を述べる。

一方、砂田は「日常に埋もれてしまうようなささやかな話を映画にするのは、すごく難しい。このご夫婦の物語を映画にされた監督には尊敬の念を抱きました」とコメント。また自身の父を被写体にした「エンディングノート」、スタジオジブリの高畑勲、宮崎駿、鈴木敏夫にスポットを当てた「夢と狂気の王国」など自身の監督作について触れ、撮影現場では「いかに自分の気配を消すか」に腐心していることを明かした。

チン・モヨンは「夫婦にはいつも通りの生活をしてほしいと頼んだ。長い時間を一緒に過ごすことによって、ご夫婦と濃密な関係を築くことができました。結果、今まで誰にも話さなかった2人の心の中に秘められていたような話をしてくれました。おばあさんは『歳をとっても若くても心は同じなのよ。どんなに歳をとっても愛する人とずっと長くいたいし死ぬのは怖いわ』と打ち明けてくれた」と撮影の秘話を披露。最後に「この映画には、大切な人を愛する鍵がたくさんちりばめられている。劇場にカップルで観に来た人は帰りに手をつないで、1人で観に来た人は帰ってから愛する人に優しくしてほしい」と観客にメッセージを送った。

「あなた、その川を渡らないで」は7月30日より東京・シネスイッチ銀座ほか全国にて順次ロードショー。