「2015年 第89回キネマ旬報ベスト・テン」にて、「
同作でダブル受賞を果たした橋口は、「キネマ旬報ベスト・テンでの受賞というのは、映画人であったら一生に1回は獲りたいと願ってやまないもの。この知らせを聞いたときに、あまり喜びが表れない人間な僕は『あ、本当?』と言ってしまった。でも、新人男優賞に篠原篤が選ばれたと聞いたときは本当にうれしかった」と回想する。本作のキャストはワークショップ参加者の中からオーディションで選ばれた新人が8割を占めており、橋口は「企画中にプロデューサーと『この映画は作品賞を獲るようなものにはならない』と話していて、『そのかわり、篠原篤に新人賞を獲らせます』と約束した。この映画から世に出て行く俳優を1人でも輩出する、というのが目標だった」と明かす。
2008年の「ぐるりのこと。」を撮って以降、橋口は精神的に“どん底”の状況に陥ったとのことで、「プロデューサーが毎日お弁当を持って私のところに通って、『橋口さん、映画作りましょう』と言い続けてくれた」と感謝を述べる。「“どん底”の頃は、映画業界はくそばっかりだと思っていたんですが、くそじゃない人もいたんです。この映画のスタッフも、雀の涙のようなギャラでやってくれた。“日本映画に献身する”という表現が本当に正しいと思う。これならまだ映画界で仕事ができると思った」と目を輝かせる橋口。また自身が受賞した脚本賞については「この脚本の中には、ワークショップに参加した無名の俳優たちのリアルな言葉が盛り込まれています。この賞はみんなで獲った賞だと思います」と説明した。
そして新人男優賞に輝いた篠原は、受賞にあたって「新人賞をいただいたのですが、先日33歳になりまして……」と申し訳なさそうに口を開く。「お芝居の才能が何ひとつないなと思いながら必死に20代を過ごし、30歳まではやれることをがんばろうと思いましたがなかなかチャンスがなく、俳優をやめる才能すらなかった」と自分の俳優人生を振り返り、「このアツシという役を演じることを、僕以上に信じてくださった橋口監督。たくさんの力を与えてくださり、ありがとうございました」と心からのお礼を述べる。
篠原いわく、クライマックスシーンの撮影には前日からセットに寝泊まりして挑んだという。しかしなかなかうまく行かず、あきらめかけた最後のテイクでOKが出たときには、橋口が泣きながら彼を抱きしめたというエピソードが披露された。ここで後方からスピーチを見守っていた橋口が再び前へ進み出て、そのシーンを「リハーサルの段階から何度やってもできなくて。うまくやろうとしなくていい、観た人が『主演の無名俳優が下手くそだったけど、最後泣いちゃったよね』って言ってくれればこの映画は成功なんだ、と言い聞かせた。彼に求めたのはただ泣いて、ただ怒るという感情だけ」と振り返る。そして篠原の受賞を改めて「おめでとう!」と祝福した。
また橋口は、今年度「母と暮せば」で主演男優賞を受賞した二宮和也と篠原が同じステージ上にいることに関して「かたやジャニーズの“ニノ”、かたや無所属の“シノ”だよ! こんな瞬間が来るんなんて、想像したことあった!?」と笑いを誘う。「初めて会った頃は、30歳手前でどうなるかわからない感じで、マンガで言ったら(真っ青になって)顔に縦線が入ってる状態だったよね。こんな日が来るなんて思ってなかったけど、ここがスタートですから。本当にがんばってほしい」と期待を懸ける。その後、司会者から提案で二宮と篠原が固い握手を交わし、会場を沸かせた。
なお映画ナタリーでは、表彰式全体のレポートを後ほどお届けする。
※二宮和也&深津絵理登壇!「2015年 第89回キネマ旬報ベスト・テン」主演賞表彰式の記事はこちらから
※広瀬すず、本木雅弘ら登壇「2015年 第89回キネマ旬報ベスト・テン」表彰式の記事はこちらから
関連記事
橋口亮輔の映画作品
リンク
- 2015年 第89回キネマ旬報ベスト・テン
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
a r a s h i_p e o p l e @arashi_info
「恋人たち」橋口亮輔、キネ旬新人賞に輝いた篠原篤を激賞「こんな日が来るなんて」 - 映画ナタリー https://t.co/cqB42CFUN9 ▽司会者から提案で二宮と篠原が固い握手を交わし、会場を沸かせた。