2001年の第54回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品された「
「ハッシュ!」は付き合って間もない同性カップルの直也と勝裕、人工授精で子供を出産したい朝子の3人が、新しい家族の可能性を探っていく物語。田辺が勝裕、
橋口が監督した「ゼンタイ」のイベント以来、約12年ぶりに再会した2人は、2001年に参加したカンヌ国際映画祭の思い出を振り返っていく。橋口が「田辺くんはすごく忙しかったので、僕たちとは別の便に乗って夜の12時くらいにカンヌに着いたんです。シャンパンを持ってホテルの前で待ち受けて、『いらっしゃい!』と迎えて乾杯しました」と述べると、田辺も「映画祭の時期はホテルが全然空いていないから、端っこのほうの民家みたいな場所でしたよね」と記憶を手繰り寄せる。
上映時は観客が1000人ほどいたそうで、橋口は「終わったら皆さん立ち上がって、映画でも流れるヨーヨー・マとボビー・マクファーリンの曲を歌いながら拍手をしてくれました。この間掃除をしていたら、現地の様子を撮ったVHSが出てきました」と明かし、「『ハッシュ!』は本当に評判がよかったんです。2001年は今村昌平監督の『赤い橋の下のぬるい水』や是枝(裕和)くんの『DISTANCE』など、日本映画がカンヌに11本も出品されていて、『日本映画のルネッサンスが来た!』と話題になっていました」と当時の熱狂を伝える。田辺は「カンヌの居酒屋に行ったら、『DISTANCE』に出演している伊勢谷(友介)くんと(井浦)新くんがいました。自分へのご褒美を買おうと思ってルイ・ヴィトンにも行きましたね」と思いを馳せた。
橋口は「ハッシュ!」がカンヌで上映されることになった経緯も説明。「パリのシネマテーク・フランセーズでディレクターを務めていた方と面識があって、その方がのちにカンヌ監督週間のディレクターになったんです。映画を観ることもなく、橋口の新作ということで招待してくださりました。なので、なんの裏工作も賄賂もありません(笑)。現地で再会したときは『私のことを覚えてる?』と聞かれて、『もちろん』と言ってハグをしました」と語った。
続いてキャスティングの話へ。共通の知人を介して田辺と食事をしたという橋口は「話してみたら、すごく頭がよくて面白い人だったので(出演を)お願いしました。ゲイの役と考えないで、田辺くんのままでいいよって。『演技をするときに自分を出したことはありません』と言うから、だまされたと思ってやってみてと伝えました。川原のシーンを最後に撮ったんですが、そのあとホテルでごはんを食べているときに『自分を出してみてどうだった?』と聞いたら、『自分を使って演技をするのがこんなに楽しいなんて思いませんでした』と言ってくれて、よかったなと」と回想し、田辺は「そこから自分を演技で出すようになりました」とうなずく。「ハッシュ!」の撮影と、蜷川幸雄が演出した舞台「グリークス」への出演時期がかぶっており、大忙しだったという田辺が「舞台がまだ残っているとき、(映画の)撮影のために髪の毛を切りたいと蜷川さんに伝えて。それ以降舞台はかつらを着けて出演したんですが、映画ではちょっとトニー・レオンを意識しました。初めて直也と会って振り向くシーンは完全に意識してますね」と打ち明けると、橋口は「え!? 全然知らなかった!」と目を丸くさせる。
撮影について田辺は「博品館というおもちゃ専門店やボーリング場で撮っていて、あの2人(高橋和也と片岡礼子)とわちゃわちゃしてるのが楽しかったです」と述懐。劇中には、土木研究所で働いている勝裕がそつなくボートを漕ぐシーンがあるが、ボート部に所属していた田辺の経験が生かされているそうで「(ボート部だったことが演技で)役に立ったのは一度きりです」と笑った。
最後に田辺は「約25年ぶりに観ていただけて本当にうれしいです」と観客に感謝の気持ちを伝える。今後、橋口の監督作に出演しないのかと聞かれると「『ハッシュ!』の続編でも」と乗り気で一言。橋口の「やる?」という言葉に対しても「全然やりますよ!」と口角を上げた。
「ハッシュ!」作品情報
監督・脚本:橋口亮輔
出演:田辺誠一 / 高橋和也 / 片岡礼子 / 秋野暢子 / 冨士眞奈美 / 光石研 / つぐみ / 沢木哲 / 斉藤洋介 / 深浦加奈子 / 岩松了 / 寺田農 / 加瀬亮ほか
製作:2001年
配給:シグロ
上映時間:135分
「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」開催概要
開催日時・会場
2025年12月12日(金)~25日(木)東京都 ヒューマントラストシネマ渋谷
上映作品
- ザ・プレジデンツ・ケーキ(The President’s Cake)監督:ハサン・ハディ
- 見はらし世代(Brand New Landscape)監督:団塚唯我
- ハー・ウィル・ビー・ダン(Her Will Be Done)監督:ジュリア・コワルスキー
- 国宝(Kokuho)監督:李相日
- ミラーズ No.3(Mirrors No.3)監督:クリスチャン・ペッツォルト
- ピーク・エヴリシング(Peak Everything)監督:アンヌ・エモン
- ザ・ガール・イン・ザ・スノウ(The Girl in the Snow)監督:ルイーズ・エモン
- パーティーズ・オーヴァー!(The Party's Over!)監督:アントニー・コルディエ
- ワイルド・フォクシーズ(Wild Foxes)監督:ヴァレリー・カルノワ
- イエス(Yes)監督:ナダヴ・ラピド
- ソーリー、ベイビー(Sorry, Baby)監督:エヴァ・ヴィクター
- かぐや姫の物語(The Tale of The Princess Kaguya)監督:高畑勲 ※特別上映作品
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