“もぎり俳優”片桐はいりがファンをお出迎え、常連劇場で映画館愛を語らう

「小野寺の弟・小野寺の姉」「繕い裁つ人」などに出演している片桐はいりが、8月23日、東京・キネカ大森にてトークショーを行った。

このイベントはキネマ旬報ムック「東京映画館 映画とコーヒーのある1日」の刊行を記念したもの。東京の大森生まれ、大森育ちの片桐は2014年に開館30周年を迎えたキネカ大森のオープン当初からの常連だという。またかつて東京・銀座文化劇場（現・シネスイッチ銀座）でもぎりのアルバイトをしていた片桐は、キネカ大森に映画を観に来てはチケットのもぎりを手伝うことがあり、本日も来場者のチケットを自らもぎって1人ひとりを出迎えた。

司会者から「世界初のもぎり俳優」と称えられた片桐は、客席へ向かって「“映画館”そのものに興味がある人っていますか？」と質問。「私はこういう空間が大好きで。子供の頃から、スクリーンの中で別の世界に行ける時間が好きでした。だから今も、どこかに出かけるとその町の映画館を訪れるんです」と語り、片桐が訪れた海外の映画館の話題へ。

“映画大国”のインドに旅行した際は仲良くなったタクシーの運転手と2人並んで映画を観て、上映前に流れる国歌や上映中の客の騒がしさに圧倒されたという思い出を披露。また仕事で訪れたハワイ島には、日系人たちが建てた映画館の廃墟がたくさん残っていたと振り返る。「日本を離れて遠い南国に住み着いた人たちの娯楽は、映画を観ることだったそうで。あんなに太陽の光があふれるところにいながら、楽しみは暗闇だったなんて胸が熱くなる。今でもハワイの音楽を聴くたびに、あの光景を思い出します」としみじみ語った。

ここで「そういえば、テーマは“東京映画館”でしたよね!?」と気付く片桐。銀座文化劇場で働いていた当時と、現在自分が俳優として映画に出演していることを照らしあわせながら「映画を作る作業は、とても時間がかかるし大変なこと。ようやく公開日を迎えて、最後にその“お皿”をお客様にお出しするのが映画館、もぎりの役目。だから映画にとって、もぎりは大事な仕事だと思う」と持論を述べる。またもぎり時代の仲間とトム・クルーズの映画を観る“トムの会”を結成しているという片桐は、先日「ミッション：インポッシブル／ローグ・ネイション」で初のMX4D鑑賞を果たしたことを報告。「（MX4Dは）面白かった！ でも、飛行機の強風のシーンはそよ風みたいで……」と消化不良気味の様子だったが、「どちらにせよ、映画館に来ないと味わえない気持ち。行ってよかった」と自身の新たな映画体験を喜んだ。

最後は客席で1人ずつマイクを回して、観客に映画館の思い出を語ってもらうコーナーへ。観客からは「映画のチラシ集めが好き」「父が映画の看板職人でした」という話が飛び出す一方、「満席の映画館で、（片桐）はいりさんが通路に座布団敷いて座っていた」など片桐の目撃談も。片桐は十人十色のエピソードに耳を傾け、時間の許す限り、ときには前のめりになってファンとの映画談義を楽しんだ。