吉田修一「国宝」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)映画化記念カバー

映画「国宝」歌舞伎通の感想は?観劇歴計100年超えの3人が語り合う

歌舞伎を観る醍醐味や初心者おすすめの演目も紹介

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映画「国宝」が8月17日までに観客動員数747万人、興行収入105億円を記録。実写の日本映画で100億の大台に乗るのは22年ぶりの快挙となる。歌舞伎そのものへの関心も高まる中、映画ナタリーでは歌舞伎を長年鑑賞してきた3名の識者による座談会を実施。「国宝」の感想はもちろん、歌舞伎を観る醍醐味や初心者におすすめの演目を語ってもらった。なお本記事には映画のネタバレを含むため、鑑賞前の人は注意してほしい。

司会・構成 / 白央篤司

※記事初出時からリードの内容を一部調整しました

「国宝」座談会 参加者プロフィール

千葉望(チバノゾミ)

ライター。日本の伝統文化、クラシック音楽、美術、文学をメインフィールドにルポタージュ、インタビュー記事を企画・執筆する。主な著書に「共に在りて 陸前高田・正徳寺、避難所となった我が家の140日」「旧暦で日本を楽しむ」(講談社)がある。歌舞伎観劇歴45年。

井嶋ナギ(イジマナギ)

文筆家。着物や歌舞伎、日本文学や古い日本映画をテーマに執筆。著書に「色っぽいキモノ」(河出書房新社)があり、日本舞踊花柳流の名取でもある。歌舞伎の観劇歴はブランクもありつつ30年、現在は毎月歌舞伎を鑑賞。

白央篤司(ハクオウアツシ)

フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」をテーマに執筆。映画や伝統芸能、クラシック音楽も愛好する。主な著書に「台所をひらく」(大和書房)、「はじめての胃もたれ」(太田出版)など。歌舞伎を観始めて30年。15年ほど日舞の稽古にも通った。

左から白央篤司、井嶋ナギ。千葉望はリモートで参加した

左から白央篤司、井嶋ナギ。千葉望はリモートで参加した

喜久雄に引っ張られていく面白さ

白央篤司 ぐんぐん伸びてますね、興行収入。7月27日の段階で75.9億円を突破、今年公開の実写映画ではトップです。この日までで公開から52日間でした(公式発表より)。

井嶋ナギ 実写で「みんなが観てる」って感じ、久しぶりですね。先日、日本舞踊の会に行ったんですけど、横にいる人も後ろにいる人も「国宝」の話してましたよ。大絶賛の人もいれば、批判的な人もいて。

白央 その賛否両論、というところに大ヒット感がありますね。多くの人が観れば観るほどそうなると思うから。

井嶋 実は私、最初に観たときは、歌舞伎や踊りのシーンなど細かいことが気になっちゃって、全然入り込めなかったんです。でもこの座談会の前に2回目観に行ったら、なるほど、歌舞伎を知らない人を含めた多くの人が夢中になるのは理解できるな、と思いました。

白央 というのは?

井嶋 原作は未読なのであくまでも映画の話ですが、これって「夢と狂気の歌舞伎愛」の話だな、と思って。主人公の喜久雄はただもう歌舞伎に魅入られてしまっていて、そこに理由の説明はない。他人にもあまり興味はなく、恋人にも大して関心ない。私はジブリの映画「風立ちぬ」が大好きなのですが、あの主人公の飛行機愛に似ているかも、と思いました。だから、濃厚な人間ドラマを期待して観ると、ちょっと肩透かしを食う。でもその分、歌舞伎という、存在は知っていたけどどんなものかよく知らなかった舞台芸術を、主人公と一体になって「きれいだねえ」と眺めつつ体感することができるような構造になっているんですよね。

千葉望 白央さん、どうご覧になった?

白央 この映画って、私はやっぱり吉沢亮さん演じる喜久雄に引っ張られていく面白さだと思っています。吉沢さん(=喜久雄)はもちろん歌舞伎役者じゃない。それが話の設定上、渡辺謙さん演じる歌舞伎役者に才能を見込まれて、いわば金の卵的な展開になっていく。ハラハラしつつ観てるうち、「おっ、だんだんうまくなってきた……!」と確実に観る者に感じさせてくる。吉沢さんが鍛錬したであろう時間の長さと、喜久雄が積み上げてきた稽古の歴史がダブルで迫ってくる力強さ。その熱量が、歌舞伎を観たことのない人にも如実に伝わるからこそのヒットなのだろうと。

千葉 やっぱり私も吉沢さんと横浜流星さん、よくあそこまでがんばったなというのが真っ先にきます。横浜さんは歌舞伎のぼんぼんのかわいげのある感じがよく出ていて、よかったですねえ。2人並ぶときれいでした、本当に。

井嶋 踊りのシーン、2人ともきれいでしたね。もちろんプロではないので、正直、歌舞伎や踊りをずっと観ている者からすると、どうしても気になってしまうところはあるわけです。でも、撮り方を工夫しているし、とにかく彼らは美しかった。面白いなと思ったのは、この映画での見せ方として「藤娘」でも「二人道成寺」でも、踊りのシーンのハイライトが引き抜き*だったこと。確かに一瞬で衣装が変わるのは派手で映像として目を引きますが、ああ、そこが見どころになるのかとちょっと新鮮でした。

*衣装が一瞬で変わる歌舞伎舞踊の見せどころの1つ。

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白央 「3時間があっという間」という世評がとにかく多いけれど、踊りシーンの編集1つにしても飽きさせない工夫がなされてますよね。すごいなと思ったのは、撮影するパートだけでなく、しっかり「藤娘」を全部踊れるように仕込んだ、と舞踊指導の谷口裕和さんがプログラムに書いていて。あの人気俳優2人が映画1本の稽古にそこまで身を捧げるというその献身がまた熱い。そこまでやっておくと、パートごとに抜きで撮っても確かに説得力が生まれると思う。踊り手の腕とか自信みたいなものが映像から発せられるというか。

千葉 あとは歌舞伎座にいくら通っても絶対に観られない角度からの映像がたくさん出てくる。映画の撮影ならではのアングルばかりですよ。

白央井嶋 まさに……!

白央 数々のセットも豪華だったし、種田陽平さんの美術がまた素晴らしい。

井嶋 素晴らしかったですね。特に、劇場まわりの美術。初めて劇場に足を踏み入れた喜久雄が、楽屋や大道具などを見てワクワクして、袖から舞台をのぞいて「うわー!」ってなってしまうあの一連のシークエンス、私もわかるわかると思いながら観ました。芝居の国に迷い込んだアリスみたいに、観客も喜久雄と一緒になって、歌舞伎世界の華やかさを発見し魅了されていく。

白央 舞台裏までよく再現されていて驚きました。ホント、目立たないところまでお金が掛かっている。

千葉 だから私、観ながら「これコケたらどうするつもりだったのか……」なんてことも思ったの(笑)。

現実の歌舞伎役者と重なる「国宝」

井嶋 喜久雄と俊介の友情関係は、この映画の大きな柱ですよね。幼なじみでずっと一緒で、愛憎込みの特別な関係。大役に挑戦する初舞台の日、緊張で手が震えて化粧ができない喜久雄に、俊介が代わりに顔をしてあげる*ところなんかは、ボーイズラブ的に見える感じもちょっとあって。

*歌舞伎界ではメイクすることを「顔をする」と言う。

白央 お前の血が飲みたい、というセリフの強烈さ(どういう意味かはぜひ映画をご覧ください)。そう言った相手に対して紅を差すというのがすごい演出だなと。

井嶋 エロティックですよね。血の赤と、紅の赤と、肌襦袢の襟の赤と、赤を連想させていくシーン。

白央 そして俊ぼん、いいやつだなと。役が自分に来なくて悔しかった思いを乗り越えて、喜久雄を励ます。

井嶋 オーソドックスな友情物語でもありますよね。

映画「国宝」15秒映像(ストーリー編)

白央 あと、アンサンブルの脇役さんたちもいいんだなあ。歌舞伎の腰元連中みたいな、並びの役者さんたちからも歌舞伎っぽい匂いが漂っていた。

千葉 それでいうと、映画内では「三友(みつとも)」という会社でしたが、歌舞伎の興行会社の役の人たちがリアル。特に嶋田久作さんや三浦貴大さんのそばに並んでいる紺色スーツの人たち。「こういう人、実際にいるよなあ……」と思いましたよ(笑)。

白央 三浦貴大さんなんて実際に松竹*にいそうな感じでしたもん、あの成り切りはすごい。最初のほうで彼が喜久雄に喧嘩売るシーンがあるじゃないですか。

*映画会社としても知られる松竹だが、もともと演劇の興行会社として創業。いち古典芸能である歌舞伎は、現在、松竹がそのほとんどの製作・興行を担っている。

千葉 喜久雄は胸ぐらをつかんで殴ってしまう、根は極道なんだなと。そういう部分を溜めに溜めて生きてる人間なわけですよね。

井嶋 そうそう、喜久雄はスイッチが入ると暴力という手段に出るんですよね。ドサ回り中に客にからまれたときも、瞬時に暴力をふるってしまう。御曹司の俊介とは対照的。

千葉 映画内のキャラクターそれぞれが私にはやっぱり、現実の役者と重なって見えてくるわけです。門閥外*から来て脚光を浴びて国宝にまでなる喜久雄は、特にね。幸運もありつつ、大変な努力をして偉くなり、すさまじい孤独を抱えて、それを引き受けて生きるって話でもあるでしょう。

*歌舞伎の家系出身ではない役者のこと。

白央 孤独を覚悟して生きる。

千葉 この映画を観て、「実際の歌舞伎を観てみたい」と思う人も増えているようです。のめり込んでいく人は演目だけでなく、そういう役者の人生のほうにもきっと、興味を持たれると思います。

白央 歌舞伎役者さんそれぞれに人生のドラマあり、ですからね。

千葉 「国宝」にも出てくる親の死とか、そういうことも含めてね……。中村吉右衛門*さんが、祖父で養父でもあった先代が亡くなったとき本当にもう周囲から手の平を返されたとか、そういう話はいろいろあるわけで。役者としての境遇は人格形成にも影響しますから。

*歌舞伎界を代表する立役(男役)として活躍した人間国宝。「鬼平犯科帳」などテレビ時代劇でも人気を博した。2021年11月に77歳で死去。

白央 私は亡くなった先代の中村雀右衛門さんのファンだったんですが、彼も早くに父を亡くして苦労されて。坂東玉三郎さんも養父の守田勘彌(かんや)さんを早くに亡くされた。チャンスが激減する中、「でも歌舞伎が好きだ、歌舞伎をやりたい」という……執念、不屈の努力であそこまでいったわけですよね。喜久雄にもそういう気持ちがあったんだろうな、と。

井嶋 喜久雄は芸にはとことん真面目で稽古しまくっていて、異様な努力をしてるだけでもすごいことですから。ただね、悪魔と取引したと言ったからには、もっとあくどいのかと思ってました。芸妓さんとの婚外子がいたり、役を得ようと有力者の娘に手を出したりはありましたが、もっともっと出世のためならなんでもやってやるレベルのことをしでかして「喜久雄、大丈夫なの!?」ってハラハラしたかったかも。って、期待しすぎですね(笑)。

白央 さて、ここらで印象的な「国宝」の脇役についても語っていきましょう。

ファンタジーでアナーキーな魅力

井嶋 真女形(まおやま)*であろう役の田中泯さんが、異様な存在感で評判ですよね。公開前に発表された写真だけで、「あ、六代目歌右衛門**がモデル?」って歌舞伎ファンは皆思いました(笑)。

*1 女性の役のみを演じる女形のこと *2 昭和・平成期に活躍した人間国宝の歌舞伎役者・六代目中村歌右衛門のこと。歌舞伎界の至宝といわれた名女形で、熱狂的な信奉者を多く生んだ。

千葉 歌右衛門さんは、なんとも言えない、こってり感のある女形さんでしたね。田中泯さんが演じた小野川万菊って、ほかに誰が演れるか思いつかないですが、歌右衛門さんにはやっぱり、すごいものがあったとは言っておきたいです。

白央 私は喜久雄と俊ぼんの少年時代を演じた2人に助演賞をあげたい(黒川想矢越山敬達)。厳しい稽古の毎日でも「歌舞伎が好きで、好きで」やっているというのがさわやかに表現されているから、後半が生きてくるというか。あの青春が映画の軸になっている。

イベントレポート

井嶋 2人の少年時代のお稽古シーン、かなり長く尺をとっていますよね。しかも今の感覚からしたら、厳しすぎるぐらいの内容。でも市川團十郎さんはあのシーンについて「僕たちのときはもっと厳しかった」とコメントしていらして、あの世代はそうかと。私もほぼ同世代なので想像つきます。

白央 中村勘九郎さんと弟の七之助さん、幼い頃からテレビのドキュメンタリー番組に何度も登場してるけど、お父さん(十八代目中村勘三郎)の稽古がおっかないんですよねえ……。子供だからって容赦ない。でも彼らはめげないし、逃げない。歌舞伎に出たいという強い思いがあればこそ。喜久雄たちを見ていたら、そんなことも思い出しましたよ。

千葉 あと、やっぱり、寺島しのぶさんはうまく演じていたと思いますね。彼女が心の中にずっと、ふつふつと湧き立たせていたものも見えてくるし。この映画、女性が描けていないという評もあるようですが、お二人はいかがでしたか。原作ではしっかり描かれているんだけどね。私は映画にまとめる以上、カットされたのはしょうがないかなと。

白央 寺島しのぶさん演じる半二郎夫人をあそこまで描いているから、それで充分にも感じますけどね。歌舞伎界に生きる女性のドラマも入れたら、少なくとも6時間になるのでは(笑)。

井嶋 確かに、喜久雄の周りの女性たちは淡雪のようにふっと湧いてふっと消える、みたいな印象でした。でもそれがかえって、「歌舞伎以外、興味がない」という喜久雄の虚無が浮き彫りになっていく効果があるようにも私は感じたんです。

千葉 名女形である半二郎役に渡辺謙さんを当てたのは、役柄的には不自然ではあるけれど、この作品を海外に持っていくとき「ケン・ワタナベが出ている!」という映画人や映画ファンの反響が期待できるのでは、という製作陣のお考えがあったんだろうと思いますね。

白央 不自然というのはやっぱり……。

千葉  上方歌舞伎の女形役者には見えないもの。「勧進帳」の弁慶*をやるならわかるけど。

*歌舞伎演目における代表的なキャラクターの1人で勇猛果敢な僧兵。

白央 「国宝」の重要すぎる展開部分、「曽根崎心中」で半二郎演じるお初の代役、ってくだり、聞いてて一瞬ぼうぜんとしてしまって。「えっ……女形だったの?」と。

千葉 上方の女形さんなら、ねっとり濃厚な感じが欲しい。例えば若い頃の林与一*さんなんかだったらよかったろうな、と想像しました。林さんは成駒屋という上方歌舞伎の家から出て映画の道に進んだ方で、舞踊の家元でもありますし。ねっとりした味わいのある美貌の役者さんですからね。

*大阪出身の俳優・舞踊家。歌舞伎役者の初代中村鴈治郎を曽祖父に持つ。

白央 この映画、絶賛の一方で「上方歌舞伎の匂いが薄い」なんて感想も一部から聞こえたのですが、どうでしょう。

井嶋 私は関東者なのであまり気にしていませんでした(笑)。

千葉 そこはもう、しょうがないでしょう。誰が上方歌舞伎の匂いを現代において表現できるの、という話にもなってしまいませんか。まさかニザ様*に出ていただくわけにもいかないし。

*人間国宝の歌舞伎役者・十五代目片岡仁左衛門の愛称。彼は大阪出身。

編集部 渡辺謙さんが寺島しのぶさんと話しながらお茶漬けを食べるところ、あそこは少し上方の匂いがしませんか。

井嶋 お茶漬けでしたか! そこまで気付きませんでした。自宅で食事しながら、「喜久雄と俊介をコンビにしたらいいんじゃない?」と夫婦で話すシーンですね。

白央 細かいこと言い出すとね、歌舞伎役者の妻が本舞台を観るとき、あんな前の席座るかなとか、俊介が観るなら舞台袖か幹事室だろうとか(笑)。でもそんなこと思うたび、監督の「それじゃ俺の撮りたい画にならないんだ!」という声が聞こえてくるかのようで。作品の持つパワーというか、映画的推進力の強さで次第に気にならなくなって。歌舞伎を軸にしたファンタジーであり、パラレルな世界のアナーキーな面白さに酔いました。

井嶋 そう、あくまでもファンタジーですよね。でも私がこの映画について1つだけ言うとしたら、「曽根崎心中」の舞台で白粉(おしろい)が涙と汗でハゲハゲになってしまうところだけは、個人的に納得がいってなくて(笑)。映画のパンフレットにも、あえてあのシーンは撮影現場でのリアルを優先してそうしたと書いてあったので、映画表現としてはいいのだろうと思うのですが、歌舞伎としては絶対あり得ない、とは言っておきたいなと。むしろ、そういう意味での「人間のリアルさ」を真っ先に捨てて様式美を優先するのが、古典芸能の要であり肝だと思うので。

白央 「古典芸能は人間のリアルさを真っ先に捨てる」、名言ですな。つらいとか苦しいような状況であればあるほど、汗ひとつかかない涼しい顔で見せる、みたいなね。

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“リアル喜久雄”が活躍する歌舞伎界
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

読者の反応

白央篤司 @hakuo416

映画『国宝』にちょっとハマってしまい、座談会なんか企画してしまいました。映画のことを前半で、歌舞伎に興味持った人に読んでほしい後半の2構成。古典芸能を見続けるライターの千葉望さん @cnozomi 日舞名取でもある井嶋ナギさん @nagi_ijima との鼎談です!
https://t.co/3crq3tzzrl

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