月刊おもしろ映画宣伝2024年7月号

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2024年7月号 [バックナンバー]

映画宣伝ウォッチャーとして願うこと

“おもしろ”だけではない宣伝が増えるといいな

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映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。

2024年7月、ビニールタッキーが気になったのは「モアナと伝説の海2」「ツイスターズ」「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「インサイド・ヘッド2」「デッドプール&ウルヴァリン」「ポライト・ソサエティ」 に関する宣伝。記事末ではMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)も発表している。

/ ビニールタッキー

「月刊おもしろ映画宣伝」7月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!

「モアナと伝説の海2」

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このニュースは個人的にうれしかったですね。タレントさんの吹替が続編でもちゃんと継続されるというのはシリーズファンとしてとてもうれしいことなんですよね。1作目のお二人の吹替が見事だったのでますます楽しみになりました。

「ツイスターズ」

イベントレポート
洋画の吹替は、2018年公開の「くるみ割り人形と秘密の王国」以来2度目となる小芝。アフレコでは苦戦する場面もあったようで「特にこの作品は吐息が漏れたり、息が荒かったりするシーンも多いので、わりと何回も酸欠になりながら、アフレコしましたね。デイジーさんのお芝居を観ながら『ここで息を吸ってるな』とか、ずっと意識して、耳で聞いて、がんばりました」と振り返る。そんな小芝の芝居を、津田は「小細工一切なしの体当たり。自分の持てる力をすべて画面に焼き付ける感じが気持ちよかったですね。とにかく気持ちとエネルギーが伝わってきた。ケイトのキャラクターにもぴったりだったと思います」とたたえた。
仲間とともに竜巻を追いかける“竜巻チェイサー”という役どころのタイラー。そのテンションの高さに、津田は当初は戸惑いもあったそうで「僕自身、あんまりウェーイ!みたいなキャラクターはやらない(笑)。こいつらイカレてると思いましたね。最初に1人で映像をチェックしてるとき、みんながウェーイ!イェー!って言うから、どれがタイラーの声なの?みたいな(笑)。探すのにすごく時間かかりました。アッパーだし、“竜巻チェイサー”って何?と思いましたね」と笑い混じりに明かした。

アフレコの思い出を語るお二人のお話を聞いているとなんとなくストーリーの流れみたいなものが見えてきてとてもいいと思いました。パッションのみで映画の概要を説明するツダケンさんには笑ってしまいました。

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映画「ツイスターズ」より、4種類の竜巻モンスターを捉えた“キャラクター”ポスターが到着。あわせて、日本語吹替版キャストの小芝風花がそれぞれの特徴を紹介する特別映像もYouTubeで解禁された。

映画の登場人物1人ひとりを捉えたキャラクターポスターというのはよくあります。実際この「ツイスターズ」にもデイジー・エドガー=ジョーンズやグレン・パウエルが演じるキャラクターのポスターがあります。しかし竜巻のキャラクターポスターが出てくるとは予想していませんでした。火柱竜巻、ふたご竜巻など個性豊かな竜巻たちを捉えています。その発想はなかった。小芝風花さんが竜巻たちを紹介する動画もぜひご覧ください。

映画「ツイスターズ」小芝風花による竜巻紹介映像

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」

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数量限定となる第2弾ムビチケカードの特典は、装着した指を振るとヴェノムの触手が揺れる指人形“ダンシングヴェノム”に決定。全2種がランダムで配布される。またYouTubeでは、同シリーズの日本語吹替版でエディの声を担当している諏訪部順一のタイトルコールが入った日本版予告が解禁された。

いやー素晴らしい。子供向け映画の特典グッズという感じでかわいさMAXです。暴れん坊で人を食べたりするのに妙にかわいくて愛されているヴェノムならではのグッズですね。送り手側が「ヴェノム」という映画がファンにどのように受容されているかよく把握していることがわかります。

「インサイド・ヘッド2」

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サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」をきっかけに結成されたINI。“人生の転機”であるオーディション中にさまざまな感情を乗り越え、活躍している彼らは、「インサイド・ヘッド2」の「どんな感情も、あなたの宝物になる」というメッセージを体現しているとして、応援サポーターに選出された。メンバーの池崎理人は、幼い頃からピクサー作品の大ファン。彼は「いつかピクサーに入って働きたいと思っていたぐらいなので、応援サポーターになれたのは嬉しいです。自分の夢だったことに関わらせていただけるので、感動しています」と言葉を紡ぐ。

映画のPR大使や応援サポーターにタレントさんが選出される場合、作品とのつながりが説明されることがありますが、「“人生の転機”であるオーディション中にさまざまな感情を乗り越え、活躍している」という部分が「インサイド・ヘッド2」のメッセージを体現しているという説明にはなるほど考えたな……と唸りました。ピクサー公認イラストの仕事の丁寧さにも驚きました。

「デッドプール&ウルヴァリン」

ここからは怒涛の「デッドプール&ウルヴァリン」宣伝です! 今月は強かった!

イベントレポート
これは映画「デッドプール&ウルヴァリン」の公開を記念したアドトラック。大阪、愛知、静岡、東京を中心に約1カ月かけて各地を走る。同日に行われた出発式には「天王寺区住みます芸人」として“てんしば”にもなじみのあるM-1王者ミルクボーイ、同期で同じくM-1王者のトレンディエンジェルが登壇した。

デッドプールのアドトラックと言えば前作のPRでも使われましたが、今回はさらに巨大化ということで気合いが入っています。昨今映画だけでなくアドトラックはよく見かけるようになりましたが、やはりデッドプールのものは質感や細部のこだわりも含め素晴らしい出来栄えですね。

斎藤が「これでちゃんと強いですからね! 日本人になじみのある日本刀で(敵を)バッサバッサと斬って、しかも不死身なんですよ! アクションも最高で! それに適当だけど締めるところは締める。見習いたいところです」とデッドプールの魅力を語ると、たかしは「いえいえ! ウルヴァリンはなんといてもアウトローですから!」とウルヴァリンの存在をアピールする。内海は「斎藤さんはウルヴァリンヘアでしょ。私はコロッサスヘアで来ましたよ、角刈りだから!」と笑いを誘い、「ウルヴァリンとデッドプールが混ざるっていうのがすごいですよね! 映画でどうなるのかが本当に楽しみですね」と期待を込めた。

トレエン斎藤さんの髪型いじりを絡めつつ自身の角刈りをコロッサスヘアと呼ぶミルクボーイ内海さんのネタには唸りました。ちゃんと映画の内容を踏まえてる!

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本作は破天荒なマーベルヒーロー、デッドプールとウルヴァリンの活躍を描くアクションエンタテインメント。動画では“俺ちゃん”ことデッドプールと、世界を救うためにタッグを組むウルヴァリンの関係性が絵本のように描かれている。デッドプールの体が「ちゅどーんっ!!」と爆発しバラバラになるさまや、ウルヴァリンのことを「あのクソつめやろう」「キレたらようしゃなくひとをブチのめす」と表現する場面が確認できる。ナレーションは「情熱大陸」などで知られる窪田等が担当した。

続編映画などではこれまでのあらすじを解説するような動画が作られることがよくありますが、絵本風動画でかつデッドプール映画の世界を体現したような解説動画が作られるとは思っていませんでした。しかもこれが異様にかわいくてクオリティが高い。しかもナレーションが「情熱大陸」などでおなじみの窪田等さんという豪華&アンビバレントっぷり。もはや窪田等さんの落ち着いた声でひどいセリフを読ませたいがためにオファーしたのでは?と疑ってしまいます。(しかし声が明らかにノリノリなのでヨシ!)

「デッドプール&ウルヴァリン」特別動画(子供は見ちゃダメ)

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まさかの「デッドプール&ウルヴァリン」と「ザ・ファブル」がコラボ。これまでMCUはさまざまな映画やアニメとコラボしてきましたが、やはりひと味違うコラボとなりました。素っ裸で予告編を観るという映像もデッドプールだからこそ許される所業だと思いました。意外と「ザ・ファブル」と共通点があったりして観ているこちらも笑ってしまいました。

「デッドプール&ウルヴァリン」「ザ・ファブル」特別映像

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「デッドプール」公開当時は12歳、「デッドプール2」公開当時は14歳と、R15+指定作品である「デッドプール」シリーズを今まで映画館で観ることが叶わなかったという鈴木。6月17日に20歳の誕生日を迎えた彼は、これまで同様R15+指定となった「デッドプール&ウルヴァリン」をついに劇場で観ることができる。特別動画にはその喜びを噛みしめる鈴木の姿が収められた。

「デッドプール&ウルヴァリン」特別動画(大人になったら観れるんだ!)

このたび到着したインタビューの中で、鈴木は、これまで同シリーズを映画館で観られなかったことについて「当時『デッドプール』がすごく面白いって話題になっていたし、劇場で観てなかったので……。今20歳で観られるということで、大人になったのをすごく感じますね」とコメント。さらに「ヒーローらしからぬ姿を常に見せてくれているのはすごく面白いですし、感動的なシーンに見せかけて笑いがあったり、その笑いの中にも大迫力のアクションがあったり。暴言や下ネタであったり、15歳未満は聞かない方がいいことをたくさん言っているのが、マーベルヒーローに入るとは思えないような唯一無二の存在」とデッドプールならではの魅力を説いた。

その視点は抜けていた! でもめちゃくちゃ重要だ! 確かに子供も観れるヒーロー映画が多い中で「デッドプール」シリーズだけはR15+指定でした。ヒーロー映画が好きな小学生~中学生もこれだけは観れないというのがネックでした。そのピンポイントの需要を拾い上げ、鈴木福くんと同じくらいの世代層に「ついに映画館で観れるよ!」とアピールするという発想に感服しました。

そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今回はこちらです!

ポライト・ソサエティ

イベントレポート
プレミアには姉妹のシスターフッドの物語にちなんで、藤岡弘、の長女で女優の天翔愛、次女で女優の天翔天音が登壇。幼少時から武道を仕込まれたという2人は、カラフルなインドの伝統衣装をまとった。
映画の感想を聞かれた愛は「アクションが本当に素晴らしい。アクションとダンスが融合していて今までにない新感覚のエンタテインメントでした。自分1人でも生き抜いていけるような強い女性像をアクションや主人公を通して体現されていて。同じ姉妹として共感しながら拝見しました。まさに『私たち』だなって」とコメント。続いて天音も「リアが力強くてエネルギッシュ。何も恐れずに1人で挑んでいく。逃げない、負けない、屈しない、あきらめない、そんな強い意志が見える憧れの女性でした。姉妹からしか感じられないような友情や、お互いに助け合う場面もあって、共鳴する瞬間がたくさんありました」と絶賛した。

スタントウーマンの主人公が姉を救うために戦う青春バトルアクション映画「ポライト・ソサエティ」。そのプレミアイベントに藤岡弘、の娘の天翔愛・天翔天音姉妹が登場というまさに正解!と叫びたくなるような素晴らしい人選! 実際にアクションを得意とする俳優姉妹が見た「ポライト・ソサエティ」の感想はまさに当事者視点で説得力がすごいと感じました。

愛が「この作品、父も一緒に観たんです」と打ち明け、天音が「『リアのような女性になりなさい』と言われました」と話すと、カンサラは爆笑。さらに愛は『一歩を踏み出す勇気を与えてくれるパワフルでエネルギーにあふれた作品だね』と。一緒に観ながら感動してました」と父親の感想を伝えた。

なんと藤岡弘、さんと親子で鑑賞……! 感想も素晴らしく、これほどの褒め言葉もなかなかないと思います!

最後にプリヤ・カンサラさんのメッセージが本当に素晴らしいので引用させてください。

最後にカンサラは、自分をはじめ映画を作った関係者にとって本作が持つ大きな意味に言及。「この映画を世界の方々にお届けできることがとても光栄です。実は個人的に、こういう映画が私が幼い頃に存在していたらと思う気持ちがあります。私が生まれ育った国のテレビの画面では、私のような見た目の人を観ることができなかった。もし、自分がこういう映画に若い頃に出会えていたら、もっと若いうちから自信を持てたり、違うことは違うと言える女性になれていたと思います。そういうインスピレーションを与える作品を作れたことがとても誇りです。皆さんには、ぜひインスピレーションを受けていただき、笑っていただいて、ちょっとだけ現実逃避のように楽しんでいただければ。この作品の喜びを一緒に分かち合えることが本当にうれしいです」と話し、イベントを締めくくった。

私がいつもウォッチしているおもしろ映画宣伝の中には、多くの人の注目を集めるために奇をてらいすぎたり、作品のメッセージを曲解してしまっていたり、PRの人選が的確ではないと感じたりする宣伝もあります。しかし今回ここで紹介した宣伝たちのようにおもしろさもありつつ的確でお見事!と称賛したくなる宣伝もたくさんあります。作品世界を理解し、魅力を最大限に引き出し、おもしろさ と真摯なメッセージを伝えた結果、さまざまな人たちの目に届き、その映画に出会うべき人のもとにも届くような、そんな宣伝が増えるといいな、と映画宣伝ウォッチャーとして願うばかりです。

以上、月刊おもしろ映画宣伝2024年7月号でした。次回もお楽しみに!

ビニールタッキー

ビニールタッキー

ビニールタッキー

映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

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ビニールタッキー @vinyl_tackey

映画ナタリーさんの月一連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」2024年7月号を書きました!今回はMVPに注目してほしいです!そしてウォッチャーとして感じたことを書きました。

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