あべんたさんによるクリストファー・ノーランのコスプレ。

〇〇の異常な愛情 Vol. 10 [バックナンバー]

あべんたの場合:IMAXに魅了された男は如何にしてクリストファー・ノーランのコスプレに興じるに至ったのか

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「広めなければ……!」と思い立ったのがきっかけ

──現在はSNSでIMAXの情報を発信されていますね。周囲からは“IMAXガチ勢”と呼ばれるまでになったとか。発信者として活動するようになったきっかけを教えてください。

2011年に初めて日本のIMAXデジタルで映画を観て「こんなに映画が楽しめるシアターがあるんだ! 3Dもケタ違い!」と感動したと同時に、なぜかIMAXの知名度が低かったので「広めなければ……!」と思い立ったのがきっかけです。最近は本当に複雑で僕も振り回されています(笑)。IMAXは2009年頃から“劇場体験を高めるプレミアムなシアター”の1つとして知られていますが、もともとは高さ18m級の“超大型映像シアター”として過去40年以上にわたり世界中の人々を魅了しました。近年はIMAXレーザー / GTテクノロジーとして国内に2館(※編集部注:東京・グランドシネマサンシャイン、大阪・109シネマズ 大阪エキスポシティ)オープンしました。IMAXレーザー / GTテクノロジーのスクリーン全体を投影するには、主にIMAXフィルム撮影が必要なため作品が限られていますが、2020年から一部の高性能デジタルカメラでいわゆる“IMAXフルサイズ撮影”も可能になるプログラムが発表されました。これによって「デジタル撮影やCGアニメでもフルサイズになる作品が今後もっと増えるかもしれない……!」と期待していましたが、4年ほど経ってもデジタル撮影によるIMAXフルサイズは3作品のみ。よってIMAXを最大限に体験できる機会が少なく、IMAXに興味を持つ人が少ないのが現状です。「それでも……!」と、SNSでなるべくわかりやすく情報をちまちま発信しています。

あべんたさん(左)

あべんたさん(左)

──どのように情報収集されているのですか?

海外の記事やIMAXの決算報告、あとは海外のIMAX掲示板です。ネットにあるほぼすべての情報を見たと思います。海外には僕以上のIMAXガチ勢がたくさんいるので、たまにレスすることもあります。

──Xの投稿を見ると、過去にIMAXで上映された作品のリバイバルを願うファンと映画界をつなぐ架け橋になっているようにも感じました。実現したケースはあるのでしょうか。

そんな大した者ではありませんよ! IMAXレーザー / GTテクノロジーで上映してほしい映画のアンケートを取ったり、Xでいろいろと発信しましたが明確な実現はないです。2020年のノーラン祭り(※編集部注:「TENET テネット」の公開を記念したIMAX上映企画。「ダークナイト」「ダンケルク」「インセプション」「インターステラー」がスクリーンにかけられた)もファンの声が届いた結果なのかと思っています。1度だけでもありがたいですが……もう2度とないかもしれません。それでもまたリバイバル上映が決まればなと、ファンの皆さんと待っています。

「ダンケルク」公開当時の写真。

「ダンケルク」公開当時の写真。

あのIMAX Sydneyの衝撃をまた体験したくて

──“IMAXガチ勢”として「発信してよかった!」と思えたことはありますか?

2015年、2016年にIMAX Sydneyでノーラン作品などのリバイバル上映があるたびにSNSで広め、それがきっかけで複数名がシドニーへ遠征しました。そして2017年に109シネマズ大阪エキスポシティで「ダンケルク」の公開初日・初回上映にその遠征勢と初対面して、熱く語り合えたことを今でも覚えています。IMAXやノーラン好きのフォロワーさんにも会えてうれしかったですね。

──それは思い出深いですね! 数あるノーラン作品の中でも、特にIMAXのよさが際立っていると思う1本はありますか?

「インターステラー」だと思います。感動するヒューマンドラマとIMAX撮影、完璧なまでの映像を両立した最高の作品です! 世界中でも頻繁に再上映されていて、世界最大級のIMAX Melbourneではもう20回くらいやっています。イギリス最大級のBFI IMAXでもほぼ毎年上映されているそうです。

──コスプレで使用されているIMAXフィルムカメラが大きいように、実物もかなりのサイズと重量なんだろうと想像できます。それを巧みに扱うノーランですが、あべんたさんならではのカメラワークの考察があるとお聞きしました。

いろんな作品をいろんなIMAXで観た結果、飲み込まれるような映像体験はIMAXカメラやスクリーンの大きさのほかに、カメラワークや構図も重要なんだと思いました。IMAXフィルムカメラは大きくて重たくて、とにかくお金が掛かります。だからこそ激しすぎないカメラワーク、カット割りも少なめで比較的長回しで撮っていることが多いんです。そうして撮影された映像だと、映画の世界観に入り込みやすいんじゃないかと思います。SNSではほかにもいろいろな考察を発信しています。「この人はなんでここまで考えるんだろう」と思われているかもしれませんが(笑)、結局のところ、あのIMAX Sydneyの衝撃をまた体験したくてどこかにないかずっと探しているんです。

あべんたさん自作のIMAXカメラ。

あべんたさん自作のIMAXカメラ。

IMAXフィルムの可能性はまだ始まったばかり

──すごい熱意ですね。今後、IMAX上映される作品の中で楽しみにしている1本はありますか?

3月15日公開の「デューン 砂の惑星PART2」です。世界観が好きで、物語もこれから!ってところなので気になっています。技術的な面で話すと、先ほどのデジタル撮影によるIMAXフルサイズの3作目がこの作品です。予告編を見たところ、1つ言えるのはノーランとは違うスタイルで制作していることです。IMAX(1.43:1)のシーンは横長のシネスコ等をなるべく意図しつつ、上下が広いIMAXシアターで観ることで映画の中に入ったような感覚を与える。ですが、人物を被写体にして映像撮影をする際に各比率でショットサイズが変わってしまうことをデメリットに思う制作者もいます。IMAXシアターで視界いっぱいの映像を観るならさほどショットサイズの違いは問題ないと思いますが、人によっては最後列からフレームを含めて観たいという鑑賞スタイルもあるので、それを考慮してなのか左右をクロップして1.43:1にしたシーンもあります。結果的にどう映るか気になりますが、毎回こんなことを考えていると疲れてしまうので(笑)、ただただ大スクリーンで観れることを楽しみにしています。

映画作品情報

映画「デューン 砂の惑星PART2」スペシャル予告

──3月29日公開の「オッペンハイマー」に期待していることは?

会話劇と顔の表情、あとは音楽です。IMAXフィルムカメラは被写界深度が浅いため、被写体がより引き立つ画になります。セリフだけで判断するのではなく、表情や目から登場人物が何を感じているかを読み取ること、自分なりに解釈することがより肝になるのかなと期待しています。ノーランはまだ実験的にIMAX撮影をしているように感じていて、「インターステラー」では手持ち撮影、「ダンケルク」ではGoProのようにカメラを扱い、「TENET テネット」ではフィルムを逆回転させていました。「オッペンハイマー」では距離15cmほどの接写とマクロ撮影、史上初のIMAX白黒フィルムにチャレンジしています。IMAXフィルムの可能性はまだ始まったばかり。「オッペンハイマー」がどんな映像になっているのか楽しみです。

映画作品情報

──ちなみにノーラン本人にはまだ会ったことはないのでしょうか。もし会えたら伝えたいことはありますか?

まだお会いしたことはありません。いつか東京か大阪のコミコンにゲストとして来日されて、お会いできたとしても「あ……あ……」で終わる自信しかありません(笑)。「いつまでも元気でいてください」って伝えたいですね。

あべんたさん

あべんたさん

──最後に、まだIMAXを体験したことがない人々へ向けてメッセージをお願いします。

ここまで根気強く読んでいただきありがとうございます。IMAXが気になったら、まずはお近くのIMAXシアターへ行ってみてください。なかなか行ける機会がない場合は、旅行のついでに行ってみるとかもお勧めです。1度体験すると不思議なことに、通常上映では物足りなくなります。もっとIMAXを知りたくなったら僕にDMしてOKです!

あべんた

情熱を持ってIMAXを布教する男性。クリストファー・ノーランのコスプレイヤー。「COSPLAY CHAMPIONSHIP in 東京コミコン2023」にチームで出場し、映画「ダークナイト」をイメージしたパフォーマンスでグランプリに輝く。Xのアカウント「IMAXまとめ速報&情報【映画】」ではIMAXに関する情報を発信している。

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アメコミ映画最新情報 杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか) @supisupisupi

わ! #東京コミコン でも大人気のノーランさんだ^_^ https://t.co/jwyVfJfsUs

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