イラスト / 徳永明子

映画と働く 第12回 [バックナンバー]

予告編ディレクター:今井あき(後編)「予告編で満足させたくない」

「もっと観たいな」って思わせたい! 予告編ディレクターとして働くやりがいとは

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「君の名は。」以降、明朝系のテロップが増えた気がします

──新海誠監督の「君の名は。」以降、音楽を効果的に使用した予告編が増えた印象があります。業界内で予告編のトレンドのようなものはあるのでしょうか?

テロップの話で言うと、アニメ作品を担当したときにゴシックではなく「君の名は。」っぽいテロップにしたいと言われたことがありました! 個人的な意見ですが、「君の名は。」以降、アニメ作品は明朝系のテロップが増えた気がします。あと最近だと、文字をパズルのように散らかしたレイアウトや半透明のものが流行っているなと感じています。ヒットした映画の予告編を軸にして、テイストを寄せて作ってほしいという依頼はけっこうありますね。

「グッバイ・クルエル・ワールド」予告編制作の様子。

「グッバイ・クルエル・ワールド」予告編制作の様子。

──なるほど。

音楽が効果的に使われているのは、言われてみると最近増えたのかもしれないですね。「キングダム」の予告編も冒頭からONE OK ROCKさんの曲が流れますし。やはり予告編って音楽がすごく大事になってくるので、それが画とマッチしていたら気持ちいいですよね。

“Lemon Soda” meets “Diamond”はすごくうれしかった!

──今井さんが担当した作品の中で好評だった予告編について教えてください。

あなたの番です 劇場版」の予告編はすごく反響がありました! いろんな人から「面白そうだね」「気になる!」と言われたり。反響と言えば「事故物件 怖い間取り」は予告編やCMが怖すぎて友達からクレームが入ったり……(笑)。「ハニーレモンソーダ」のときは、原作者の村田真優さんが単行本のあとがきに「予告編のテロップがかわいい」「“Lemon Soda” meets “Diamond”」って書いてくださって。私が考えた文言だったのでとってもうれしかったです!

──制作時に大変だった作品もお伺いしたいです。

大変というか挑戦的だったのは、最近だとSnow Manさん主演の「映画 おそ松さん」でした! 予告編を作るタイミングで本編撮影中だったので、最初は縦型の特報をフルCGで作りました。最初から縦型で作る予告は初めてで、原作の雰囲気を味方にして面白い映像を作りたいねって宣伝部さんと考えて。予告編なのにインタビュー映像が入っていたり、ナレーションでキャストにツッコミを入れたり、新しいアプローチ方法をトライしたのが挑戦的でした。インタビューパートは本編の撮影中に予告編用に撮ったので、本編には入っていないのですが。凝り出したら止まらなくなるので、テロップとか要素もたくさん入れて大変でしたけど、作るのがすごく楽しかったです!

この表情、最後に使いたい!

──予告編ディレクターならではの“職業病あるある”はありますか?

普段テレビCMやWEB広告、電車の広告などを見て「テロップワークすごいな」と思ったり、いいナレーションが入っていたら「この声の人誰だろう」と気になって今後の作品で起用したいと思いますね。アニメを観てても「この声、こういう作品のナレーションに合うな」って。

──いろんな広告からインスピレーションを得ているんですね。

ほかにもドラマや映画を観ていて、めっちゃいいシーンやセリフがあったら「ここ絶対に予告で使う!」「この表情、最後に使いたい!」って勝手に思ってます(笑)。

──ナレーションという言葉が出てきましたが、やはり声優さんを起用されることが多いのでしょうか?

「グッバイ・クルエル・ワールド」予告編制作の様子。

「グッバイ・クルエル・ワールド」予告編制作の様子。

ちょっと前までは山寺宏一さんをはじめレジェンド声優の方を起用することが多かったのですが、最近は幅広く声優さんを起用するパターンが多くなってきたと思います。アニメを観て「いい声だな」と思った方にオファーしたり、あとは映画館で被りたくないなって思いもあるので新しい方を探したり。「ALIVEHOON アライブフーン」を担当したときは、「頭文字D」の主人公の声を演じられていた三木眞一郎さんにお願いしました。特報を解禁したときに、三木さんがTwitterで「面白そう」とコメントされていて。作品に合う方で、車好きな声優さんに読んでもらいたいなと思っていたので、初めてオファーさせていただきました。ご本人もすごく喜んでくださって、そういうつながりでナレーターさんを選んだこともあります。

予告編は映画を観に来てもらうための1つの作品

── SNSやブログなどの発言からきっかけが生まれることもあるんですね。予告編ディレクターになるためには何か映像を作るスキルが必要なのでしょうか?

映像制作のソフトウェアは使っていくうちに慣れていくと思うので、それよりもストーリーを組み立てる構成のほうが大事かなと思いました。予告編って2時間ある映画を1分にするので、短い尺の中でお客さんを引き込むストーリーを作るスキルが必要になってきます。私もまだまだ苦手で勉強中なのですが、例えば感動作を1分半にして、うまく引き込めるようになりたいなと思っています。ソフトウェアのことは会社に入ってから学ぶこともできますし、たくさん予告編を観て、どういうふうに物語を構成しているんだろうと勉強することが大切かなと思います。

──最後に、予告編ディレクターとして働くやりがいについてお聞かせください。

映画館で自分が作った予告編がかかるのを観たり、テレビで流れたりすると素直にうれしいです! それを観たお客さんがSNSで「この映画、面白そう!」というリアクションをしてくれる機会が多くなり、そういうのを目にするとうれしい気持ちになります。予告編は映画を観に来てもらうための1つの作品なので、それがちゃんと誰かに届いているとうれしいし、担当した作品はやっぱり多くの人に観てもらいたいので少しでもヒットに貢献できればなと思っています。そういうリアクションを見ると次もがんばろうって思えて、映画と働くことが毎日できて楽しいです!

今井あき(イマイアキ)

今井あき

今井あき

予告編ディレクター。ガル・エンタープライズ所属。テロップワークを得意としている。これまで制作した主な作品は「鳩の撃退法」「あなたの番です 劇場版」「エル プラネタ」、2022年9月9日公開の「グッバイ・クルエル・ワールド」など。

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ガル・エンタープライズ @gal_enterprise

映画ナタリー様のコラム、後編がアップされました!

弊社今井Dが、自分の武器・好きな予告などについて語っています!
読み応えたっぷりなのでぜひご一読ください✨ https://t.co/UV1CW04Sr7

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