さいとう・たかを賞の授賞式に濱田轟天&瀬下猛 「平和の国の島崎へ」は“読者への手紙”

7

45

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 12 31
  • 2 シェア

第8回さいとう・たかを賞の授賞式が、本日1月14日に東京・三笠会館で開催。「平和の国の島崎へ」を手がける濱田轟天、瀬下猛が登壇した。

左から小松悠真氏、瀬下猛、原裕司氏、濱田轟天、田渕浩司氏。

左から小松悠真氏、瀬下猛、原裕司氏、濱田轟天、田渕浩司氏。

大きなサイズで見る(全19件)

濱田轟天

濱田轟天[拡大]

さいとう・たかを賞は、「ゴルゴ13」連載開始50周年を記念して一般財団法人さいとう・たかを劇画文化財団が創設したマンガ賞。シナリオと作画の分業により制作された優れたコミック作品を顕彰する。第8回は2021年9月1日から2024年8月31日の期間中に単行本第1巻が刊行された作品を対象としており、最終選考委員には小山ゆう、佐藤優、長崎尚志、やまさき十三が名を連ねた。

瀬下猛

瀬下猛[拡大]

まずは原作者の濱田が壇上へあがり「島崎の物語は、徹底的に傷ついた人間が回復するまでの過程を描くところからスタートしました」と「平和の国の島崎へ」を振り返り、「読者への手紙のつもりで作っている」と作品に込めた思いを語る。「(原作は)山の奥に湧き出る水に過ぎず、それを周りの人たちが見つけて、読者まで川として届けてくださった」と、自分1人の力では作品は作れなかったと述べる。そして「プロセスに関わってくださる方々の仕事を褒めていただけたのがうれしい」と、受賞に対する感謝を述べた。続いて漫画担当の瀬下は「毎週、原作の濱田さんからネームをいただいて、一生懸命描いている。濱田さんの思いが詰まった作品なので、最大限に力を尽くしてこれからも描いていきたいと思います」とコメントした。

原裕司氏

原裕司氏[拡大]

また3人の担当編集を代表し、モーニング編集部の原裕司氏も登壇。担当編集中で一番若手だという原氏は「最初にマンガ編集として携わった作品の1つが『島崎』でした。そのとき、マンガ編集という仕事が、作家さんの人生とキャラクターの運命と並走していく仕事だと感じたのを覚えています」と、初めて「平和の国の島崎へ」を読んだ当時を振り返る。さらに濱田について「キャラや物語、人間というものに優しさと愛情を持って描いている方。それと同時に、社会を見る鋭い目線ゆえに容赦ない厳しさも持っている。その二面性が現れたキャラが島崎であると思ってます」と語る。続いて、瀬下について「その複雑な島崎という男を、静謐な筆致とカッコいいアクションで描く瀬下さん。瀬下さんの描く優しい目、鋭い目が大好きです」と述べ、「おふたりでしか描けないのが『平和の国の島崎へ』だと思ってます」と、そんな作品に携われることへの感謝を伝えた。

佐藤優

佐藤優[拡大]

さらに選考委員を代表して佐藤からの講評も。佐藤は8回にわたる選考の中でも特に印象に残る回になったと述べ、「平和の国の島崎へ」は「原作と作画と編集が三位一体の構成をなしている作品」と絶賛する。また現代にも合っている作品だと述べ、「正義が勝つとは言えない形で戦争が終わる。すなわち強いものが悪くても勝つ、食うか食われるか、食われないためには力をつけないといけない。まさに島崎の置かれている状況じゃないでしょうか」と、社会情勢を交えながら説明する。

原作に対して、「濱田さんの企画力、取材力、構成力、分析力、頭が下がります」と感嘆し、「すごく取材をしてるんだけど、逆にその情報に飲み込まれてストーリーがうまく流れていかない作品もある。でもこの作品はストーリーもよくできている」と称える。また作画に関しては、「原作を身体化している。まず格闘シーンがすごい。よく静止画でこれだけの動きを示せるなと感銘しました」と絶賛。「迫力があるんだけど、残虐で見ていられないとなるのではなく、ワクワクして先を読んでいきたいという形にする力がある」と、原作を充分に理解して読者に伝えていると称賛する。さらに編集部との関係性や仕事にも言及し、「素晴らしい編集者を育成していくことも、分業体制のもとでは重要。さいとう・たかを先生も、原作者と作画者だけではなく、編集者も同時に表彰していきたいとおっしゃっていたのを思い出しました」と、さいとう・たかを賞にふさわしい作品だと述べた。

左から瀬下猛、濱田轟天、原裕司氏。

左から瀬下猛、濱田轟天、原裕司氏。[拡大]

その後の質疑応答で、濱田は分業制のメリットについて「時間を有効に使えるということ。原作者は原作を考える時間、作画家は執筆の時間を十分持てるためクオリティが担保できる」と考えを明かす。また心理的な負担も少ないと言い、「僕の場合、すべて自分で描くとなると筆が鈍ることがあるのですが、作画さんにお任せできるのは大きい」と続けた。一方の瀬下は「自分が今まで描いてこなかったような、新しいことにチャンレンジできること」と述べ、引き出しが増えていくことが作画担当のメリットだと語った。

「平和の国の島崎へ」は日常と戦場の狭間で生きる男のアクション譚。主人公・島崎慎吾は幼少期に国際テロ組織に拉致され、戦闘工作員となった。30年の時を経て故郷の日本に帰ってきた島崎は、新天地で平和な日常を送ろうとするが……。モーニング(講談社)で連載中で、単行本は7巻まで発売されている。

この記事の画像(全19件)

読者の反応

  • 7

齋藤あきこ @akiko_saito

【イベントレポート】さいとう・たかを賞の授賞式に濱田轟天&瀬下猛 「平和の国の島崎へ」は“読者への手紙”(コメントあり) https://t.co/si3X1TUeBz

コメントを読む(7件)

関連記事

瀬下猛のほかの記事

リンク

関連商品

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのコミックナタリー編集部が作成・配信しています。 瀬下猛 の最新情報はリンク先をご覧ください。

コミックナタリーでは国内のマンガ・アニメに関する最新ニュースを毎日更新!毎日発売される単行本のリストや新刊情報、売上ランキング、マンガ家・声優・アニメ監督の話題まで、幅広い情報をお届けします。