2026年4月、月刊コミックフラッパー(KADOKAWA)が、大幅にリニューアル。増刊だったコミックアルナから人気作「魔法少女ノ魔女裁判」などが移籍し、誌面もさらにパワーアップする。
コミックナタリーではこのタイミングで、「魔法少女ノ魔女裁判」のコミカライズを手がけるマンガ家・時任せつなと、原作ゲームで桜羽エマ役を務めた声優・三木谷奈々にインタビュー。作品の魅力や制作の舞台裏、キャラクターへの愛情、マンガならではの表現についてたっぷり語ってもらった。
※本インタビューには物語序盤に関する軽微なネタバレが含まれます。
取材・文 / 鈴木俊介撮影 / ヨシダヤスシ
月刊コミックフラッパーがリニューアル!
異世界ファンタジーの人気作「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」「盾の勇者の成り上がり」を筆頭に、「千年狐 ~干宝『捜神記』より~」「このヒーラー、めんどくさい」などのユーモラスな作品、「穢れた聖地巡礼について」「百鬼調書 怪異調査はこちらまで」といったホラー・怪異もの、「イズミと竜の図鑑」「竜人の隣人」といったオリジナルのファンタジー作品まで、幅広いジャンルのマンガが連載されている月刊コミックフラッパー(KADOKAWA)。「僕の妻は感情がない」のTVアニメ化も記憶に新しいが、2026年は「対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~」「FX戦士くるみちゃん」がTVアニメ化を控えている。
そんな月刊コミックフラッパーが、2026年4月3日発売の5月号で大きくリニューアル。増刊だったコミックアルナから、「魔法少女ノ魔女裁判」「日常ロック」「懐胎」などの人気作が合流し、さらに誌面がパワーアップした。リニューアル号では、「アイドルマスターシンデレラガールズU149」で知られる廾之(きょうの)のオリジナル新連載「午前5時のレコード」が始動。付録として「魔法少女ノ魔女裁判」のクリアファイルも用意された。
「魔法少女ノ魔女裁判」とは
世界に害をなす“魔女”の候補として、牢屋敷に監禁された13人の少女たち。魔女とはなんなのか、運営の目的とは──。謎に包まれた魔女裁判が開廷する。
原作はAcaciaによる同名の“魔法議論ミステリゲーム”。2025年7月18日に発売されたSteam版は、2026年2月に販売本数50万本を突破した。Nintendo Switch版も2026年7月9日に発売予定。
フリフリの衣装もノリノリで描いています
──「魔法少女ノ魔女裁判」(以下「まのさば」)は、魔女候補として牢屋敷に集められた少女たちが、共同生活を送りながら牢屋敷の謎を解いたり、殺人事件の犯人を処刑するため“魔女裁判”に挑んだりするダークファンタジー風味の作品です。時任さんは、コミカライズを手がけられるにあたって、資料に目を通されたり、実際に原作ゲームをプレイされたりしたと思うのですが、最初の印象はどんなものでしたか。
時任せつな 残酷な描写とか、目を逸らしたくなるシーンもあるにはあるんですが、全体的な雰囲気はどこか童話チック。女の子たちはかわいいけど、ダークな部分も味わえる作品で、私はそういう作品が好きだったので、「どストライクだ!」と思って、ワクワクしながらプレイしました。ゲームをプレイしたのは発売とほぼ同じくらいだったと思います。その前からコミカライズ担当として携わらせていただいていたので、シナリオなどは先にいただいて、原稿に取り組んでいました。
──マンガの連載開始は、ゲームの発売とほぼ同時でしたから、準備期間を考えるとそうですよね。
時任 でも「まのさば」のことは、コミカライズ担当としてお声がけいただく前から、いちファンとして追っていたんです。Xでたまたま公式アカウントの投稿を目にして、見てみたらめちゃめちゃ好きな雰囲気の作品で。イラストもすごく好みだったので、すぐにフォローして……。そんな中でコミカライズのご依頼をいただいたので、「え……『魔法少女ノ魔女裁判』って……これで合ってるよね?」「同じ名前の別の作品ってことないよね?」と二度見三度見しました(笑)。
三木谷奈々 (笑)。私も原作チームの一員として、コミカライズをどなたにお願いするかという話に参加していたのですが、せつなさんの描かれる女の子はかわいいだけじゃなくキラキラしているのが印象的で。この方にぜひエマちゃんを描いてほしいと思っていたので、実現してうれしいです。
時任 やったー(笑)。本当にうれしいです。ゴシックメルヘンだとか、フリフリの衣装だとか、そういうのがすごく好きで、イラストレーターとして活動しているときもそういう作品をよく描いていたので、自分にぴったりだという感覚もあり……。原稿もノリノリで、楽しく描かせていただいております。
──描いていて楽しい?
時任 そうですね。自分が楽しめていないと、筆の進み具合が変わってくるんです。だから、筆がノッているということは自分がのめり込めているってことだなと、客観的に見ても実感しています。
──作業の中で、最も筆がノるタイミングってどこでしょう?
時任 フリルを描くのが好きなので、アンアンちゃんを描くときとか。読者の方からは「作画が大変だろう」と言われるんですけど、個人的には「うおおおお……!」とハイになって描いていて(笑)、全然苦じゃないですね。
三木谷 私も衣装が大変なんじゃないかと思ってました。毎コマ毎コマ、すごく緻密に描かれているので、作画はさぞかし……と思っていたんですけど。
時任 腕的には負荷がかかってるんですけど、気持ち的にはノリノリです。処刑のシーンとかもそうですね。自分でも、「はあ……今からこの子を処刑しないといけないのか……」という気持ちにはなりますが(笑)、「極力美しく描いてあげよう」みたいに思っているので、筆に感情がこもります。
三木谷 うれしい……。マンガを描いてくださっている方が、そうやって作品を好きになってくださって、楽しんで描いてくださっているということが聞けてうれしいです。
マンガならではの「みんながそこにいる」感じ
──三木谷さんは、マンガ版の「まのさば」を読まれてどうでしたか。
三木谷 原作はノベルゲームなので、表現に制約がある中でやっていたので、マンガだとその空間にみんながいる様子が描写されていて、それがまず新鮮でした。みんなそこにいるんだと実感できて、うれしかったですね。
──ゲームの立ち絵だと、同時に表示されるのは多くても3人程度だったでしょうか。
三木谷 そうですね。だからマンガだと、食堂に集まっているときにちゃんと背景に複数人いたりとか、そういうのが読んでいてすごく楽しかったです。
──キャラクターを複数描くときに意識していることはありますか?
時任 そうですね……。なるべくキャラクターの性格を尊重するというか、この子はたぶんこの子と一緒に行動しているんだろうなとか、この子はたぶん気を使ってこの子に話しかけにいっているんだろうなっていうのは、あくまで自分の中の見解ですけど、意識しています。例えば、シェリーちゃんは距離感がバグっているキャラクターなので(笑)、ほかのキャラクターよりもちょっと近くにいるだろうとか、この子は人付き合いが苦手だから離れ気味なんじゃないかなとか、そういう部分ですね。
三木谷 私、エマちゃんがシェリーちゃんと一緒に牢屋敷を探索するシーンがすごく好きで。せつなさんが今おっしゃった通り、シェリーちゃんの距離が近いんですけど(笑)、その引っ付いてきてくれている感じが楽しいですし、いろんな部屋を回って、いろんな子と交流して……。ほとんど全員が生きている場面というのも、この作品では貴重じゃないですか(笑)。シェリーちゃんの明るさにも助けられるし、ここが閉塞的な環境であることを一瞬忘れて、純粋にワクワクしちゃいました。
時任 そこは狙ってやっている部分もあって……。やっぱりこの2人を好きになってもらわないと、のちのち欠けたときの衝撃がないじゃないですか。読者を突き落とすためにも、2人の友情をちゃんと描いておきたいなと思って。なんなら過剰なくらいに仲良くなってもらわなきゃ、みたいな。
三木谷 じゃあ、まんまと(笑)。
時任 読んだ人の印象に残るといいなと考えていたので、今のお話を聞いていて「やった!」と思いました(笑)。
大事なシーンだけを描いてもダメだと思う
──ノベルゲームをマンガに落とし込む難しさもあると思うのですが、そのあたりはいかがですか。
時任 一番大変なのは、テキストをどこまで削るか、圧縮するか。それはいつも考えていて……。やっぱりプレイヤー1人ひとり、思い入れのあるシーンってバラバラですよね。なるべく汲み取ってあげたいけれど、日常シーンで5話も6話もやってしまうと、マンガとしては飽きが来てしまう。なので、反響が多そうなところや、後々伏線になるところを残しつつ、がんばってギュッとしています。
──1巻には第1回魔女裁判の開廷までが収められていますが、物語の導入パート、舞台である牢屋敷の探索パート、そして事件の発生と、要素が盛りだくさんですよね。
時任 3話までには誰か死んでもらわないと……。
三木谷 (笑)。
時任 よくアニメで“3話切り”みたいなことを聞くじゃないですか。やっぱり3話までには事件が起きなくちゃ、みたいな感覚が自分の中にもあって。人物紹介とか、世界観の説明とか、そこまでもけっこう長い。先々のことを考えると削れないセリフも多くて、すごくがんばりました(笑)。原作を知っている読者さんの中には、物足りないという方もきっといらっしゃると思うんですけど、マンガ的なアプローチとしては、何話までにこういう展開があったほうがいいというのがあって。マンガならではの表現として割り切っています。物足りなさを感じたらぜひ原作ゲームをプレイしてください!という思いです。
三木谷 構成はせつなさんがおひとりで考えていらっしゃるんですか?
時任 そうですね。ネームを切って、それを担当さん、原作のAcaciaさんにチェックしていただいて。
三木谷 そうなんですね……! キレイにまとめられているので、複数人で構成を練られているんじゃないかと思っていたんです。だから今、すごくびっくりしています(笑)。おっしゃる通り、ゲームで印象的だったセリフはしっかり残っていて。例えばココちゃんが配信を始めたとき、シェリーちゃんが辛辣なことを言ってエマちゃんがツッコむみたいなやり取りがあるんですが、そういう一見なんでもないシーンもしっかり描かれていますよね。
時任 大事なシーンだけ描いてもダメだと思うんです。キャラクターに感情移入してもらわないと、その子がいなくなったときの喪失感が薄くなってしまうので、なるべく和気あいあいとしたところは残さないといけないとも思っていて。だからギャグシーンは意識的に多く入れているかもしれません。
──制限のある中で、いかにキャラクターに愛着を持ってもらうか、工夫されていらっしゃるんですね。
時任 愛着を持たせてからの突き落としが、「まのさば」のいいところですから(笑)。
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マンガのエマは「人の顔を見てしゃべれる子」


