「爛漫ドレスコードレス」鈴木拡樹がモダンな和装に挑戦!マンガと2.5次元舞台に見出した“伝統と自由の狭間”という共通点

「着物のルールに縛られすぎず、自由に楽しむ」をテーマに、和洋折衷のコーディネートや着物の魅力を鮮やかに描き出す、佐悠の「爛漫ドレスコードレス」。ピッコマやコミックシーモアほか、各電子書店にて配信中の同作は、着物初心者の山田やまだ撫子なでしこと、自由な和装を楽しむ警察官の鷹倉たかくらひびき、老舗呉服店の店長・犬養いぬかい誠次郎せいじろうらが織りなす新感覚の着物コメディだ。同作が電子書店でお得に読めるキャンペーンが、3月25日から4月7日まで実施されている。

コミックナタリーでは、電子書店キャンペーンに合わせて、舞台「刀剣乱舞」の三日月宗近役や舞台「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の鬼太郎の父役などで和装を着こなしてきた俳優・鈴木拡樹にインタビューを実施。米沢織の黒着物に和装用パーカーを合わせた和洋折衷のコーディネートに身を包んだ撮り下ろし写真をたっぷり掲載している。インタビューでは作品の魅力や、自身が身を置く2.5次元舞台の世界とも通ずる「伝統と自由」への思い、そして和装の奥深さについてたっぷりと語ってもらった。なお3ページ目には第1話の試し読みが掲載されているので、お見逃しなく。

取材・文 / 阿部裕華撮影 / 武田真和

「爛漫ドレスコードレス」

ある日かわいい帯を見つけ、初めて自力で浴衣を着ることに挑戦した和装初心者の山田撫子。撫子は浴衣で花火大会に出かけるも、慣れない和装で浴衣は着崩れ、下駄で靴擦れを起こしてしまう。そんな撫子に、浴衣を着こなす美女・鷹倉響が救いの手を差し伸べる。2人はこの出会いをきっかけに、一緒に和装して出かける仲になり……。自由に着物を楽しむ人々を描くハートフルコメディだ。

「爛漫ドレスコードレス」1巻

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体型を自然にカバーする和洋折衷スタイル

──本日は米沢織の黒い着物に和装用の赤いパーカーを合わせるという、モダンなコーディネートで撮影を行いました。実際に袖を通してみて、鏡でご自身の姿をご覧になった際の感想からお聞かせください。

とても素敵だと感じました。舞台の役柄でお着物を着る機会は比較的多いほうなのですが、今回の撮影のように日常的に街中で着て歩ける「ファッションとしての着物」をまとうのは、おしゃれですし、何より楽しかったです。

鈴木拡樹
鈴木拡樹

鈴木拡樹

──今回のコーディネートの中で、特にお気に入りのアイテムや着こなしのポイントはありましたか?

トータルですべて素敵だなと感じたのですが、まずは中に着たパーカーですね。僕は少し細身の体型なので、和物を着るときはお腹周りに肉布団(※体型を補正するための詰め物)を巻いて補正することが多いんです。でも、今回は中にパーカーを着るスタイルだったので、生地の厚みが自然と体型をカバーしてくれて、帯の位置もちょうどよく決まりました。

──パーカーをインすることで、実用的なメリットもあったのですね。

そうなんです。これなら細身の僕でも、街中を普通に歩いていて帯が上に上がってきたり、着崩れたりする心配がないなと。「僕がプライベートで街中を着物で歩くなら、こういうスタイルのほうが動きやすくていいかもしれない」という、新たな発見がありました。

──帯の結び方も素敵です。

帯の裏面の色を見せる返しもおしゃれでしたよね。最近は女性の着こなしで帯を折り返して見せるスタイルをよく見かけますが、男性の場合はまだ一般的ではないかもしれません。だからこそ、「こういうおしゃれな見せ方もあるよ」ということを1つ提示できたのはうれしかったです。

──足元の差し色も印象的でした。

ピンクの草履も気に入っています。普段、自分ではなかなか勇気を持ってピンクを選ぶことがないので、この撮影で履くことができてよかったです。掲載される時期が春に近いと伺っているので、季節感のあるカラーとしても素敵ですよね。

衣装のこだわりを魅せる工夫

──撮影時の所作がとても自然で美しかったのが印象的です。今回の衣装を魅せるために、意識されたことを教えてください、

今回は「ファッションとしての着物」だったので、硬くならないように意識しました。基本的には街中をラフに歩いているような自然な雰囲気を出しつつ、せっかくなので舞台で見得を切るような、肩幅を広く見せる動きも少しだけ取り入れてみました。でも、一番はラフに見えるほうがこの衣装のよさが伝わるだろうなと思いながら撮影に臨んでいましたね。

鈴木拡樹

鈴木拡樹

──役として着物を着て舞台に立つときと、今回のようにファッションとして着物をまとうときとでは、心持ちにも違いはありましたか?

いつも以上に「この着物のよさや、衣装スタッフさんのこだわりをどうやって皆さんに伝えようか」ということを考えていました。僕は本職のモデルさんではないのですが、今回は少しモデル視点に近い考え方が強かったかもしれません。でも実は、舞台に立つときも同じようなことを考えている瞬間があるんです。

──舞台に立つうえでも、衣装を意識する瞬間がある。

ええ。アニメやマンガを原作とした舞台では、衣装のスタッフさんが原作のディテールを再現するために、特別なこだわりを持って衣装を作ってくださっています。最近は舞台の映像化も多いので、「ここでこういう動きをすれば、カメラでアップされたときに衣装の印象的な部分が映えるかもしれない」と頭の中で考えることもあるんです。稽古や場当たりの段階で「ここは見せられるな」と気づけたら、見せ方を少し工夫することもあります。

──衣装スタッフさんの職人技を、お芝居の中でさりげなく見せているのですね。

一緒に作品を創り上げている身として、細かい部分に気づいてくださったお客様が、原作をさらに深く愛してくれたり、時間をかけて作ってくださった衣装スタッフさんの職人技術を知ってくれたりしたらうれしいですから。決して押し付けるわけではなく、さりげなく気づいてもらえたらいいなという思いは常に持っています。

──今回の撮影でも、「ここを見せたい」と意識してポージングされた箇所はあったのでしょうか?

最後にお願いをして、片方の袖を完全に抜かせていただき、中に着ている赤いパーカーの袖が見えるようにポージングをしました。最初は、別のお店の既製品のパーカーを中に合わせているのかなと思っていたのですが、よく見ると袖の形が着物専用に作られていて、着物の袂のようなデザインになっていたんです。その作り込みの深さが僕の中でとても斬新で、すごく素敵だなと感動しまして。これはどうしても写真で伝えたいと思いました。読者の皆さんにも、「袖がこんなふうになっているんだ!」という感動を味わっていただきたいですね。

鈴木拡樹

鈴木拡樹

2.5次元舞台と重なる「伝統と自由の狭間」

──ここからは「爛漫ドレスコードレス」について伺わせてください。作品を読まれてみて、全体の雰囲気や世界観にどのような魅力を感じられましたか?

最初に読み始めたときは、純粋に1人の読者として作品そのものを楽しむつもりだったんです。でも、実際に読んでみると感銘を受ける部分が多すぎて、思わぬ方向に引っ張られてしまって……自分でもびっくりしました。

──どのような部分に感銘を受けられたのでしょうか。

本作はお着物のお話ということで、呉服業界の裏側も少し知れるような作風です。伝統的な着物のルールや美学を重んじる一方で、スニーカーを合わせるような現代の自由な感覚も取り入れていく。その「伝統と現代のバランス」というテーマが、僕が長く関わらせていただいている2.5次元舞台の世界とすごく似ているなと感じました。

「爛漫ドレスコードレス」第4巻より、響のコーディネート。現代的な着こなしと伝統的な着こなし、どちらも楽しんでいる様子が描かれる。
「爛漫ドレスコードレス」第4巻より、響のコーディネート。現代的な着こなしと伝統的な着こなし、どちらも楽しんでいる様子が描かれる。

「爛漫ドレスコードレス」第4巻より、響のコーディネート。現代的な着こなしと伝統的な着こなし、どちらも楽しんでいる様子が描かれる。

──2.5次元舞台の世界と着物の世界に、共通点を感じられたのですね。

2.5次元舞台は、演劇文化の確固たる伝統やルールや原作のフォーマットを大切に守りつつ、あえてルールに縛られなくていい2.5次元ならではの現代的な表現を取り入れていると思っています。その絶妙なバランスを考えながら作品を作っていくという点が、「爛漫ドレスコードレス」の作中で着物の新しい着こなしを模索するキャラクターたちの姿と完全に重なりました。だから、「楽しもう」と思って読んでいたはずが、「僕たちが戦っている世界と一緒だな」と深く考えさせられてしまいましたね。

──舞台をはじめ、日本にはさまざまな伝統文化が存在しますが、その中で着物を題材にしているという点についてはいかがでしたか?

純粋に、連載で「着物」を題材に選んでいるのはすごいことだと思います。少年マンガなどではキャラクターの服装が1パターンに固定されていることが多いですが、日ごとにキャラクターの服装が変わる作品も魅力的ですよね。とはいえ、衣装を何着も考えるなんてただでさえ大変な作業なのに、着物は柄や帯の組み合わせが無限大にありますから。

──作者の佐悠先生はメインキャラの着物の柄をご自身で制作されているそうです。

すごいですよね……! 和装を題材にするということは、それだけお着物を描く大変な部分があるはずなので、本当に頭が下がる思いです。

鈴木拡樹
鈴木拡樹

鈴木拡樹

ファンの優しさを感じる“着物観劇マナー”

──「爛漫ドレスコードレス」の中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?

一番印象に残っているのは、主人公の撫子ちゃんが、2.5次元舞台の観劇に着物で出かける第2巻のエピソードです。自分自身がいる界隈の話というのもありますが、着物の帯を背中で大きく結んでしまうと、背もたれに寄りかかれず体が浮いてしまい、後ろの席のお客様の視界を遮ってしまうことがあるという“観劇マナー”について丁寧に描いてくださっていたのがうれしくて。マンガを通して観劇マナーを知っていただく機会になっているのが、素晴らしいなと思いました。

──実際の舞台でも、そういったマナーに対して意識の高いファンの方がとても多い印象を受けます。

和物の舞台に出演していると、お着物で観劇に来てくださるお客様もいらっしゃいますが、皆さんしっかりとマナーを認識して気を遣ってくださっていますね。出演者側からすると、それって決して当たり前のことではないんですよ。こちらが「絶対にそうしてください」と押し付けているわけではないのに、周りのお客様のことまで考えて、みんなでいい観劇環境を作ろうと気遣ってくださる。その心遣いに、いつも「優しさが溢れているな」とうれしく思います。

──「爛漫ドレスコードレス」の作中でも、誰かに強制されるのではなく、撫子が自分でマナーに気づいて帯を前側に回す描写がありましたね。

「爛漫ドレスコードレス」第2巻より。撫子の帯を見て心配する客と、後ろの客を気遣い自ら結び目を前に回す撫子。
「爛漫ドレスコードレス」第2巻より。撫子の帯を見て心配する客と、後ろの客を気遣い自ら結び目を前に回す撫子。

「爛漫ドレスコードレス」第2巻より。撫子の帯を見て心配する客と、後ろの客を気遣い自ら結び目を前に回す撫子。

そうなんです! 誰かに注意されて傷つくのではなく、自分で気づいて直すという描き方が本当に素敵ですよね。2.5次元舞台にも、初めて観劇に来られるお客様がたくさんいらっしゃいます。ルールを知らなかった方を責めるのではなく、こうして作品を通して知ってもらい、みんなで一緒に舞台の空間を作っていく。僕たちはお客様の心遣いに守られて公演ができているのだと、作品を通して改めて実感しました。

誠次郎と一緒に男性着物文化を切り拓きたい

──作中にはさまざまなコーディネートが登場しますが、「自分もやってみたい」と思われた発見や、印象に残った着こなしはありましたか?

冒頭から登場する撫子ちゃんが一目ぼれした「チンアナゴの帯」ですね。最初に自分の好きなアイテムに出会い、そこから全体のコーディネートを組み立てていくというストーリーが素敵だなと思いました。普段の洋服を選ぶときも、お気に入りのシャツを1着見つけてから「じゃあ周りをどうしていこう」と考えることってありますよね。そういう身近な視点でのお話だったのが面白かったですし、第3巻では同じ帯を身につけた女性の着こなしを見て気づきを得るという描き方も素敵でした。

「爛漫ドレスコードレス」第3巻より。撫子が和装に挑戦するきっかけとなった帯と同じものを着こなす女性に出会うシーン。
「爛漫ドレスコードレス」第3巻より。撫子が和装に挑戦するきっかけとなった帯と同じものを着こなす女性に出会うシーン。

「爛漫ドレスコードレス」第3巻より。撫子が和装に挑戦するきっかけとなった帯と同じものを着こなす女性に出会うシーン。

──そうした自由な発想という点では、作中に登場するようなパーカーやスニーカーを合わせる和洋折衷のスタイルについて、鈴木さんご自身はどう思われますか……?

僕、こういうスタイルが好きなんです。舞台のお稽古場などでは、着物をきっちり着るのではなく、割とラフに着崩したりすることもあります。パーカーに着物を羽織るスタイルは自分でもやりますし、着物にストールを巻いたスタイルなども好きですね。

──和洋折衷スタイルがお好きだという鈴木さん的に、もし「爛漫ドレスコードレス」のキャラクターと着物について語り合えるとしたら、誰と話してみたいかお聞きしたいです。

着物に対する姿勢で言うと、呉服店の店長である誠次郎さんですね。「男性の着物はパターン数が少ないよね」という悩みを共有できると思いますし。何より、伝統と自由の狭間で迷っている彼の姿にすごく共感するので、ただ話を聞くだけでなく、一緒に新しい道を見つけていきたいなと思わせられる魅力があります。また、単純に「かっこいいな」と思ったのは、警察官の響さんです。彼女の着物に対する価値観が素敵で。“着物警察(着物のルールに厳しく、他人の着こなしに指摘してしまう人)”のお話も面白かったです。「着物を取り締まる警察」という意味ではなく、「着物好きの警察官」という意味での言葉遊びの展開が、確かに間違ってはいないなと思いました(笑)。

「爛漫ドレスコードレス」第1巻より、犬養誠次郎。実家が営む呉服屋の店長で、伝統と自由な着こなしの間で揺れ動く。

「爛漫ドレスコードレス」第1巻より、犬養誠次郎。実家が営む呉服屋の店長で、伝統と自由な着こなしの間で揺れ動く。

「爛漫ドレスコードレス」第1巻より、鷹倉響。撫子が「着物好きの警察官」という意味で彼女を「着物警察」と呼んでしまい、誤解した響がショックを受けるシーン。
「爛漫ドレスコードレス」第1巻より、鷹倉響。撫子が「着物好きの警察官」という意味で彼女を「着物警察」と呼んでしまい、誤解した響がショックを受けるシーン。

「爛漫ドレスコードレス」第1巻より、鷹倉響。撫子が「着物好きの警察官」という意味で彼女を「着物警察」と呼んでしまい、誤解した響がショックを受けるシーン。