去る1月28日、コミックナタリーが主催する「コミナタ漫研~マンガ家に聞く、同業者の気になる仕事」の第4回が、有楽町のドコモスマートフォンラウンジにて開催された。このイベントでは現役のマンガ家が、いまもっとも注目している連載マンガを、プロの目線で紹介・分析していく。聞き手はコミックナタリー編集長の唐木元。第4回は
唐木元 2011年最初のコミナタ漫研、いつにも増してたくさんの方にお集まりいただきありがとうございます。第4回のゲストを迎えましょう。ご存知まゆたんこと、新條まゆ先生です。
新條まゆ よろしくお願いします!(会場拍手)
唐木 新條さんと初めてお会いしたとき、いちばん楽しみに読んでるマンガは?って聞いたら「孤高の人」だっておっしゃったので、意外すぎて腰抜かしたというか、これはもう漫研に呼んで理由を聞かなきゃならなんな、と。そもそもマンガはたくさん摂取するほうですか。
新條 いまどうしても忙しくて、正直、ほとんどマンガ読めてないんです。というのも私、マンガ読むのが異様に遅いみたいなんですよ。例えばこう、踏切の絵と「カンカン」って文字が描いてあるとしますよね。そうすると頭の中で「カンカン……」って音が鳴って、それをしばらく聞いてしまうんです。そんなことしてたら、そりゃ時間かかりますよね。要はのめり込んで読んじゃうというか。
唐木 作品世界にのめり込む体質なんですね。没入してしまうというか。非常に興味深いですね。というのも、今日紹介する「孤高の人」は、まさにそういう、臨場感、没入感みたいのがすごい作品だからです。ちなみにヤンジャン連載作ですが、どこで出会ったんですか。
ペットボトルがずらり並ぶ異様なシーンに目を奪われた
新條 ジャンプスクエアでの連載が決まったとき、とうとう憧れのジャンプに載るんだーってうれしくって、私の予告が掲載されてる雑誌を記念に買い漁ったんですよ。その買ってきた中にヤングジャンプもあって、どんなのが載ってるんだろう、ってパラパラめくってたら、ものすごい絵が目に留まって。
唐木 ものすごい絵って、どんなですか(笑)。
新條 ペットボトルがページいっぱいにずらっと並んでるんです。しかもほとんどセリフがなくて、絵だけで続いてくんですけど、もうページから放たれてる雰囲気が異様で、じっと見入ってしまったんです。
(スクリーン:主人公文太郎が30本のペットボトルに水を詰めているシーン)
唐木 第34話ですね。トレーニングのために、水を入れたペットボトルをリュックサックに詰め込んで、それを背負って家まで帰る回。
新條 もう絵がとにかく上手いし、異常なシーンだったんで、なんだこれ!? って気になって気になってしょうがなくて。それで名前を覚えて単行本を買ってみたら、表紙のカラーイラストも尋常じゃなくて。なんだこれ、カッコいい! って一気に引き込まれました。
唐木 表紙見てみましょうか。この素材を用意してるとき思ったんですけど、新條さんが描くカッコいい男の子を、ちょっと彷彿とさせるものがありませんか。
新條 本当ですか!? いや、それは……似ても似つかないと思うんですけど……恐縮です。でも、ありがとうございます。
唐木 主人公については、後でゆっくり話しましょう。この「孤高の人」という作品、ざっくり言えば登山マンガです。人間不信の主人公・森文太郎がロッククライミングに出会って、初めて没頭する対象を見つける。それが次第にクライミングから雪山にシフトして、世界一難しいと言われるヒマラヤK2の「東壁」踏破を目指すという。絵の魅力はあったにせよ、この登山とかヒマラヤという話に、新條さんがハマるというのも意外ですが。
新條 いやそれが、私、超がつくほどの高所恐怖症なくせに、もともと山、特にヒマラヤが大好きで。仕事場にもエベレストの写真が貼ってあるくらいなんですよ。ヒマラヤ水晶とかも集めてるんです。
唐木 あ、仕事場の写真で見たことありますよ、机の後ろにたくさんパワーストーンが並んでるの。あれ、みんなヒマラヤ産なんですか?
新條 7割方ヒマラヤですね。ひとことでヒマラヤって言っても山脈なので、産地によってぜんぜん違うんですよ。ガネーシュヒマールとかカンチェンジュンガとか、産出する山ごとに特徴があるんです。
唐木 おお、山の名前をすらすらと。となると、ヒマラヤ登山が題材の「孤高の人」とは、出会うべくして出会ったって感じなのかな、のめり込む素地はあったんですね。(つづく)
コミックナタリー @comic_natalie
第4回コミナタ漫研レポート(ゲスト:新條まゆ)【1/5】 http://natalie.mu/comic/news/46520