マンガ大賞2026 ノミネート10作品をマンガ系ライター4人が勝手に大予想

マンガ大賞2026 ノミネート10作品をマンガ系ライター4人が勝手に大予想

「本なら売るほど」「「壇蜜」」「邪神の弁当屋さん」……1年間の話題作を振り返り

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小林聖のノミネート予想作品は……

「マンガ大賞」のノミネート作品についてあれこれ予想を巡らすようになると、いよいよお正月も終わったのを実感しますね。

さて、「マンガ大賞」の個人的な傾向分析は去年の予想で書いており、今年も基本は変わりません。幅広い人に薦めやすくポジティブな作品、勢いのある作品、レギュレーションラストイヤーの作品、ヒットのきっかけがほしい作品という点を踏まえて予想しています。加えるなら「社会への眼差しみたいなものが意識に入ることも多い」という点でしょうか。

今年真っ先に頭に浮かんだのは「本なら売るほど」。ド派手にバズるような作品ではないですが、刊行当初から話題になっており、実際「このマンガがすごい!2026」のオトコ編1位をはじめ、「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2025」のコミックランキング1位、ブクログの「年間ランキング2025」マンガ部門1位など、各種アワードで名前が挙がっています。年齢問わず楽しめて、心が温まるヒューマンドラマは「マンガ大賞」の傾向にもドンピシャ。勢い・内容両面から、ノミネートはまず確実でしょう。

次も「このマン」戴冠タイトルになってしまいますが、「半分姉弟」もすぐ浮かんだタイトルです。「マンガ大賞」でもここ数年対話やコミュニケーション、多様性のような視点の入った作品が目立つように、社会への眼差しというのも重要な要素。いわゆる「ハーフ」と呼ばれる人たちの日常と葛藤を描いた本作はやはり本命の1つです。

社会や生き方というところでいうと、雁須磨子先生の「起承転転」も注目作。2020年には40代独身女性を主人公にした「あした死ぬには、」が入っていますが、本作は50代独身女性を描いた作品。妻や母といった役割から外れたまま年を重ねるという、まだロールモデルが確立されていない生き方にスポットを当てているこの作品も、名前が挙がりそう。

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寂しさや居場所のなさのようなものを描いた作品という点では根が近い「東京最低最悪最高!」も今回は予想に入れておきます。鋭すぎて地獄みたいなえぐり方をする作品はやや「マンガ大賞」では票が逃げる印象はありますが、それをひっくり返すだけの作品パワーを感じます。

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同じくちょっと重めではあるけれど入れたいのが「ミハルの戦場」。戦場になった日本で狙撃手として生きる少女と、元狙撃手のバディものですが、戦争アクション的な要素に加えて、子供を育てるようなヒューマンな部分も印象的です。

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話題性抜群のタイトルとしては「「壇蜜」」を。清野とおる先生が、結婚経緯を含めて妻・壇蜜さんを描く実録エッセイというつかみがまず強いんですが、中身が予想以上に特濃。読むほどに壇蜜さんがわからなくなり、それでもどんどん知りたくなる、呪術めいた力があります。また、話題という点で言えば、3球しか全力投球できないピッチャーを主人公にした「サンキューピッチ」も。主人公たちそっちのけで監督の阿川先生をやたらとネットで見かけましたが、作品としてもキャラクターの強さに息をつかせぬ展開など現代エンタメマンガとしてのパワーが強烈です。

ヒットのきっかけがほしいと思わせる作品としては、人間にされた神様がお弁当屋さんとして暮らす「邪神のお弁当屋さん」に注目。わかりやすいドラマチックさがあるわけではないですが、温かい読後感のある作品で、こういう賞をきっかけに広がってほしいと思う人は多そう。

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近いところでは、宇宙からやってきた三角形の物体が人間として暮らしはじめる、優しくちょっと切ない「三角兄弟」も。上下巻完結で、このタイミングで入らなければチャンスがないので、挙げておきたい人がいることを予想して候補に入れます。同じくこれが最初で最後のチャンスとなる単巻タイトル「友達だった人 絹田みや作品集」も挙げておきたいです。言葉にできない寂しさや悲しさに寄り添って包んでくれるような掌編が集まっています。刊行レーベルの熱帯は良作がたくさんあるので、レーベルごと注目してほしいですね。

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小林聖(コバヤシアキラ)

1981年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。インタビューやレビューなどマンガを専門に執筆。長年Twitter上で年間マンガアワード「俺マン」運営なども行っていた。

ちゃんめいのノミネート予想作品は……

今年もこの季節がやってきました。書店員を中心に、各界のマンガ好きな選考員たちが「今いちばん面白い、人に勧めたいマンガ」を選び、表彰する「マンガ大賞」。近年は、マンガプラットフォームの多様化やジャンルの細分化に伴い、マンガ賞そのものが増えすぎて、「結局どれを参考にすればいいのかわからない」という声も耳にします。

そんな中、本賞は今年で19回目。個人的には、着実に歴史を重ねてきた堅実な賞であると同時に、マンガ業界にとって欠かせない存在だと感じています。例えば、今でこそ当たり前になったマンガ原作のメディアミックスも、振り返ってみれば、「マンガ大賞」受賞作が次々と映像化へと展開されていった流れがありました。素晴らしい作品がより多くの読者へ届き、さらに広がりを見せていく。その起点の1つとして、本賞が担ってきた役割は大きかったように思います。

さて、実は昨年もコミックナタリーさんの本企画「マンガ大賞 ノミネート10作品をマンガ系ライター4人が勝手に大予想」に参加させていただいたのですが。果たしてその結果は……1位「ありす、宇宙までも」(売野機子)、2位「路傍のフジイ」(鍋倉夫)はしっかり的中していたので(やったー!)今回は、昨年と同じ軸をベースにしつつ、一方で昨年の選考員コメントから読み取れた変化や気づきも加えながら、予想していきたいと思います。

まず、1つ目の予想ポイント。それは昨年も挙げた、社会の中で透明化され続けてきた存在に光を当てる物語、あるいは世界や社会の歪みに真正面から切り込む作品群です。雑に括ってしまい恐縮ですが、いわゆる“社会派”と呼ばれる作品たち。社会の出来事は結局、読者である私たち自身と地続きなのだから、こうした作品が賞を通してさらに読者を広げていくことには、大きな意義があると感じています。この観点で言えば、“ハーフ”と呼ばれる人たちが直面するリアルや本音を描いた「半分姉弟」、そして台湾と沖縄の歴史的共通項を紐解きながら“今”を思考する「隙間」は、かなり高い確率でランクインするのではないでしょうか。というかしてほしい!

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2つ目に挙げたいのが、社会派と隣り合うテーマでもある「わかりあえなさ」を真摯に描いた作品たち。近年はこのテーマの作品が特に豊作で、とんでもなく精鋭揃いな印象があります。実写ドラマ化で社会現象を巻き起こした「じゃあ、あんたが作ってみろよ!」、そして「林檎の国のジョナ」「ルリドラゴン」。なかでも「ルリドラゴン」は、京都アニメーション制作によるアニメ化が決定しており、京アニが初めて手がける週刊少年ジャンプ作品のアニメ化という点でも、大きな話題を集めています。

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3つ目は、昨年の選考員コメントを踏まえたうえでの予想になりますが、読んでいて感じたのは「ニューヒーロー・ヒロイン、そして新しいドラマ」への強い欲求です。昨年で言えば、劇薬のような存在感を放った「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」の望月さんもいれば、「路傍のフジイ」のフジイさんのように、生きづらい世の中でそっと心を軽くしてくれる、バファリン的な人物像も高く評価されていました。

そう考えると、50代、何者にもなれなかった女性の人生が転がるように動き出す「起承転転」。そして、ファッションヘルスで働く女性たちの日常を、軽やかさと生活感で描き出す「バルバロ!」は、いずれもランクインするのでは?と予想。また、清野とおる先生が妻・壇蜜氏への“潜入記録”として描いた「「壇蜜」」も外せない1作。

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そして最後に、新しいドラマという観点で忘れてはならないのが「怪獣を解剖する」「本なら売るほど」。「怪獣を解剖する」は、超巨大怪獣という厄災を巡る物語。エンターテインメントとしての強度を備えつつ、主人公が挑む解剖調査という現場からは、災害大国に生きる私たちだからこそ受け取れる気づきがあるはずです。「本なら売るほど」は、新刊ではなく「古書」を介して紡がれるヒューマンドラマで、作中に登場する本は実在のもの。さらに装丁も文庫本を思わせるデザインが施され、リアルな手触りとしても“本”とマンガが邂逅する感触を与えてくれます。

ちゃんめい

マンガライター。マンガを中心に書評・コラムの執筆のほか作家への取材を行う。宝島社「このマンガがすごい!2024、2025、2026」にてアンケート参加、その他トークイベント、雑誌のマンガ特集にも出演。

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