アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」監督・下田正美インタビュー|「100人超えのキャラが躍動 “人を心から信じる優しい世界”の舞台裏を語り尽くす」

下田正美監督

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」(以下「らぶらぶ作戦」)第2幕が、1月30日より全国劇場で上映される。弐尉マルコが2013年より月刊コミックアライブ(KADOKAWA)で連載中の「ガールズ&パンツァー」(以下「ガルパン」)の公式スピンオフマンガをもとに、本編のキャラクターたちが日常を送る姿をコミカルに描く同作。全4幕構成、各幕にてさまざまな物語が楽しめるオムニバス形式で展開される。またこれまでアニメ「ガルパン」シリーズでは、監督を水島努、制作をアクタスが手がけてきたが、「らぶらぶ作戦」では監督を下田正美が務め、制作をP.A.WORKSとアクタスがタッグを組み担当している。

コミックナタリーでは「らぶらぶ作戦」のアニメ化を記念し、下田監督にインタビューを行った。「水島監督の箱庭のすみっこで遊ばせていただく感覚」と語る下田監督が、100人超えのキャラクターが躍動する作品の舞台裏を語り尽くす。スピンオフと侮ることなかれ。「ガルパン」本編に匹敵する情熱と労力が注がれた「らぶらぶ作戦」の魅力が、今、紐解かれる。

取材 / はるのおと文 / カニミソ撮影 / 小川遼

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」
第2幕PV

「そのネタ、そこから拾ってきてるんですか」という気づきが多かった

──まずは、弐尉マルコ先生のコミックスを読まれていかがでしたか。

いやもうなんでしょうね。弐尉先生が「ガルパン」の世界観を多岐にわたって熟知、研究されている「ガルパン」オタクなので、純粋にすごいマンガだなと思いました。パロディを含めても、いちいちその元ネタについて先生に聞かないとわからない部分もあったりして。「そのネタ、そこから拾ってきてるんですか」という気づきがすごく多かったですね。長年の「ガルパン」ファンだったらもしかしたら知っていることなのかもしれませんが、そうしたファンでさえも「あっ、そこか」という発見があるはずです。

──弐尉先生の知識量がとんでもなかったと。

弐尉先生はほとんどの関連作品……公式ファンブックの「月刊戦車道」はもちろんのこと、映像媒体も全部目を通しているんじゃないかなと。「自分はガルパンの一番のファンである」という自負のもと、それは全然驕りではなく、むしろ「ガルパン」のファンであるからこそ、恥ずかしいことはできないという気持ちで真摯に作品を作っていらっしゃるんですよ。その情熱で10年以上も連載を続けているのはもう、素直に感服します。

「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」1巻

「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」1巻

──本当にすごいですよね。ちなみに下田監督のフィルモグラフィでいうと、「ゼーガペイン」シリーズや近年では「アサティール 未来の昔ばなし」が監督作ですが、こういったコメディ作品の監督をされるのはけっこう意外だなと感じたんです。

完全なコメディは「らぶらぶ作戦」が初めてだと思います。いつもは日常芝居だったり、ロボットだったりすることが多いですからね。ただ川澄綾子さんがヒロイン役だった「藍より青し」などなぜか女性視点の作品が中心で、「ガルパン」も言ってしまえば女性主人公……というか女性しかほぼ出てこない作品なので、そういう点では戸惑いは特になかったですね。マンガもしっかりしていますし。僕は「ガルパン」本編ではTVシリーズと「最終章」のオープニングアニメーションを担当させていただいたこともあり、「らぶらぶ作戦」はその延長上というか。登場キャラクターたちの日常を描くスピンオフということで、水島(努)監督が作られた大きな箱庭のすみっこで遊ばせていただく感覚でしたね。

──完全なコメディ作品は初とのことで、今回「らぶらぶ作戦」の監督としてコメディを思いっきり手がけられた楽しさもあったのでしょうか。

そうですね。自分自身もそうなんですけど、スタッフみんなで「私ならこうする、僕ならこうする」と言って話し合いながら、わちゃわちゃ作った感じなんですよ。そこは作中のみほたちのわちゃわちゃ具合と似ているなと。現場が楽しいほうが絶対フィルムの出来はよくなるはずだと思って作っているので、スタッフにも僕からトップダウンというよりは、みんなで話し合っていろんな意見をもらって進めていきました。

下田正美監督

下田正美監督

「序破急」と3幕構成的な並べ方をしてリズムを作った

──今回P.A.WORKSさんとアクタスさんが組んで制作されているのも、大きなトピックかと思います。P.A.WORKSさんのスタッフのテンション感はいかがでしたか?

楽しそうでしたね。ぶっちゃけこちら側からリテイクを出していないのに、自分からリテイクを出して直してくれるところがけっこう多くて。「このくらい描けていれば「ガルパン」としてはOKかな」と思ったものも、納得せずに粘って直しておられました。

──具体的にどういった場面か覚えてらっしゃいますか?

いや細かいところですね。「そのキャラクターに見えないのは許せない」という感じで、表情もそうですけど、芝居を含めてこだわっていらっしゃいました。アクタスさんからは、副監督の臼井(貴彦)さんはもちろん、TVシリーズからそれこそ作画や美術設定で八面六臂の活躍をなさった吉本(雅一)さんにも一部話数の演出で入っていただいて。本当にみんなで協力し合って作った感じです。

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」第1幕第2話より。

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」第1幕第2話より。

──水島監督など、「ガルパン」本編のスタッフともお話をする機会はあったのでしょうか。

水島監督には「最終章」に抵触しそうなエピソードが出たときに相談しましたね。「らぶらぶ作戦」の現場に入った当初、水島監督からは「全部下田に任せる、監修もしない」と言われていたんです。でも、今後の「最終章」で描かれる可能性のあるシークエンスにぶつかりそうなエピソードがあり、どうしたものかと相談したところ、「そんなこと気にしないで自由にやってください。すべて任せたんだからそんなこと気にしたら何も作れませんよ。ただわからないことあったら何でも聞いてください」という温かい言葉をかけてくださって。そこに甘えつつも、「最終章」に影響が出ないよう配慮しながら作り上げていきました。

──脚本についてもお伺いしたいのですが、マンガからどのようにエピソードを取捨選択し、どのように全体の構成を決めていかれたのでしょうか?

最初の本読みに入る前に、脚本の木村(暢)さんやプロデューサー陣と、「このエピソードがいいんじゃないか、あのエピソードがいいんじゃないか」と話し合いながら選びました。すべての登場人物が愛おしく、まんべんなくスポットが当たるようにしたいという思いがあったので、それを踏まえて木村さんにエピソードの順番を並べていただいた感じです。その段階では「これだけバラエティに富んでいれば面白そうだ」とはなったものの、いざ脚本にまとめる段階になって、尺的に全部入らないということがわかって。そのため、1話につき何本かエピソードを外したりはしていますね。

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」第1幕第3話より。

アニメ「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」第1幕第3話より。

──なるほど、全部盛り込もうとすると大変なことになったと。構成ではどのようなところを工夫しましたか?

今回は全4幕の上映ということで、1幕ごとに「序破急」……導入・展開・結末と、3部構成的な並べ方をしてリズムを作ったつもりです。

──第1幕の「急」の部分、特に家元のエピソード(「ポートレートです!」)はアニメーションにすごく力が入っていて、面白かったです。

そうそう、アイドリングから始まって、ややアップテンポになって、最後に弾けるっていう。そういうリズムを第2~4幕でも考慮して作っています。